梟の止まり木
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他に誰も乗り合わせていないエレベーターは殊更静寂に包まれている。
「ねえ、京治。何か怒ってる?」
このままでいる訳にもいかない。
勇気を出して尋ねれば、赤葦は表示灯から目を放してようやく幸子を直視した。
やっと目を合わせてくれた――そんな喜びも束の間。赤葦のまなざしは何処か冷たさを孕んでいて。
「別に怒ってませんよ、木梨先輩」
普段部活では互いを苗字で呼ぶ事はある。
だが2人きりの時に呼ばれるそれは他人行儀で冷たく、抉るように幸子の胸に突き刺さった。
「やだ…。なんでそんなよそよそしい呼び方するの?」
「アンタが誰にでも馴れ馴れしく接してるからでしょう」
赤葦は何を言っているのだろう?
「何の話…?」
「自覚ないんですか?」
「自覚…?」
「そんなんだから木兎さんに付け入る隙を与えるんです」
「木兎…?」
なぜ今ここで木兎が出てくるのだ。
幸子は頭をフル回転させる。
赤葦の様子がおかしいと感じたのは学校に戻ってから。
……いや、本当にそうだろうか。
落花高校からの帰路。バスに乗り込んだ時にはもう、赤葦の様子はおかしかったように感じる。
そして飛び出した木兎の名前…。
「バスで隣に座った事?」
「呑気に肩も貸してたでしょう。どれだけお人好しなんですか、アンタは」
「だ、だって木兎止める間もなくすぐ寝ちゃったし。それに…木兎は弟みたいなもので――」
「弟みたいな木兎さんになら何されてもいいんスすか?」
「そんな事言ってな…っ、んッ!」
応える前に強く壁に押し付けられて唇を塞がれた。
普段冷静で物静かな赤葦からは想像つかないような荒々しい動作。求めてくる唇は熱い。
「気安く触れさせるな」
銀の糸を繋いで唇を離した赤葦が低く言った。
よく知っているはずの普段の恋人とのギャップに小さく身を震わすが、同時に心を鷲掴みにされたような感覚に陥る。
「京、治……っ」
「アンタは俺のものだ。――幸子」
全て奪われるかのような口づけは、エレベーターのドアが開くまで続いた。
「ねえ、京治。何か怒ってる?」
このままでいる訳にもいかない。
勇気を出して尋ねれば、赤葦は表示灯から目を放してようやく幸子を直視した。
やっと目を合わせてくれた――そんな喜びも束の間。赤葦のまなざしは何処か冷たさを孕んでいて。
「別に怒ってませんよ、木梨先輩」
普段部活では互いを苗字で呼ぶ事はある。
だが2人きりの時に呼ばれるそれは他人行儀で冷たく、抉るように幸子の胸に突き刺さった。
「やだ…。なんでそんなよそよそしい呼び方するの?」
「アンタが誰にでも馴れ馴れしく接してるからでしょう」
赤葦は何を言っているのだろう?
「何の話…?」
「自覚ないんですか?」
「自覚…?」
「そんなんだから木兎さんに付け入る隙を与えるんです」
「木兎…?」
なぜ今ここで木兎が出てくるのだ。
幸子は頭をフル回転させる。
赤葦の様子がおかしいと感じたのは学校に戻ってから。
……いや、本当にそうだろうか。
落花高校からの帰路。バスに乗り込んだ時にはもう、赤葦の様子はおかしかったように感じる。
そして飛び出した木兎の名前…。
「バスで隣に座った事?」
「呑気に肩も貸してたでしょう。どれだけお人好しなんですか、アンタは」
「だ、だって木兎止める間もなくすぐ寝ちゃったし。それに…木兎は弟みたいなもので――」
「弟みたいな木兎さんになら何されてもいいんスすか?」
「そんな事言ってな…っ、んッ!」
応える前に強く壁に押し付けられて唇を塞がれた。
普段冷静で物静かな赤葦からは想像つかないような荒々しい動作。求めてくる唇は熱い。
「気安く触れさせるな」
銀の糸を繋いで唇を離した赤葦が低く言った。
よく知っているはずの普段の恋人とのギャップに小さく身を震わすが、同時に心を鷲掴みにされたような感覚に陥る。
「京、治……っ」
「アンタは俺のものだ。――幸子」
全て奪われるかのような口づけは、エレベーターのドアが開くまで続いた。