抱擁力
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間もなく電車が到着した。ドアが開く。
降りる人を待ってから電車に乗り込んだ。
「わっ…!!」
途端に後続に押され、あっという間に黒尾と引き離されてしまった。
「てつろ…っ、きゃっ!」
そのままぎゅうぎゅうと挟まれる。…苦しい!
周囲の人も同じ状況であるのは承知だが苦しいものは苦しいのだ。
背の低い幸子にとって満員電車は苦痛以外の何物でもなく。背の高い男性に囲まれたりすれば尚更だ。
(鉄朗、どこ?!!)
黒尾が傍にいない事実が不安になりキョロキョロするも四方を壁のように囲まれて視界など全く開けない。
(この先鉄朗に会えなかったらどうしよう…)
後から振り返れば笑い飛ばしてしまう思考だが、今の幸子は久々の満員電車と黒尾の姿が見えない心細さとで軽いパニックを起こしていた。
また運悪く幸子の周りは一見会社員と判るスーツの中高年男性ばかりで、更にパニックに拍車をかけていた。
「あっ…」
その時 立ちはだかる壁の向こうから大きな手が伸びてきて、そのままグイと腕を引かれた。
引き寄せられた先は黒尾の許。
長身の黒尾は周囲より頭ひとつ分抜きん出ている事もあり、幸子を見つけられる程度に視界が開けているらしい。
「おい、幸子。大丈夫か?」
「っ、鉄朗……っ」
「お前乗車してすぐに流されてたぞ」
ニヤニヤと面白そうに笑った黒尾だったが、幸子が泣きそうな顔をしてるのに気づき目を丸くした。
「お前…こんなトコでそんな顔見せんな」
「っ、だって鉄朗がいなくて不安だったんだもん」
「たかが満員電車だろ。不安要素なんて何処にもねえよ」
からかうような言葉だが、その声音は優しい。
「ホラ、これでどうだ?」
片手で一番高い位置にある手摺に掴まった黒尾は、幸子の腕を掴んでいた手を彼女の肩に回し抱き寄せる。
「て、つろ…っ?!」
「これなら何処にも流されねーだろ?」
「……っ」
確かに何処にも流されないが恥ずかしい。でも、
(…すごく安心する)
密着している黒尾のベストに ぎゅっと顔を押しつける。回されている腕と温もり、それに黒尾の匂いが幸子を安心させた。
降りる人を待ってから電車に乗り込んだ。
「わっ…!!」
途端に後続に押され、あっという間に黒尾と引き離されてしまった。
「てつろ…っ、きゃっ!」
そのままぎゅうぎゅうと挟まれる。…苦しい!
周囲の人も同じ状況であるのは承知だが苦しいものは苦しいのだ。
背の低い幸子にとって満員電車は苦痛以外の何物でもなく。背の高い男性に囲まれたりすれば尚更だ。
(鉄朗、どこ?!!)
黒尾が傍にいない事実が不安になりキョロキョロするも四方を壁のように囲まれて視界など全く開けない。
(この先鉄朗に会えなかったらどうしよう…)
後から振り返れば笑い飛ばしてしまう思考だが、今の幸子は久々の満員電車と黒尾の姿が見えない心細さとで軽いパニックを起こしていた。
また運悪く幸子の周りは一見会社員と判るスーツの中高年男性ばかりで、更にパニックに拍車をかけていた。
「あっ…」
その時 立ちはだかる壁の向こうから大きな手が伸びてきて、そのままグイと腕を引かれた。
引き寄せられた先は黒尾の許。
長身の黒尾は周囲より頭ひとつ分抜きん出ている事もあり、幸子を見つけられる程度に視界が開けているらしい。
「おい、幸子。大丈夫か?」
「っ、鉄朗……っ」
「お前乗車してすぐに流されてたぞ」
ニヤニヤと面白そうに笑った黒尾だったが、幸子が泣きそうな顔をしてるのに気づき目を丸くした。
「お前…こんなトコでそんな顔見せんな」
「っ、だって鉄朗がいなくて不安だったんだもん」
「たかが満員電車だろ。不安要素なんて何処にもねえよ」
からかうような言葉だが、その声音は優しい。
「ホラ、これでどうだ?」
片手で一番高い位置にある手摺に掴まった黒尾は、幸子の腕を掴んでいた手を彼女の肩に回し抱き寄せる。
「て、つろ…っ?!」
「これなら何処にも流されねーだろ?」
「……っ」
確かに何処にも流されないが恥ずかしい。でも、
(…すごく安心する)
密着している黒尾のベストに ぎゅっと顔を押しつける。回されている腕と温もり、それに黒尾の匂いが幸子を安心させた。