猫の牽制
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「不思議な再会だよね。なんか感動しちゃった」
自分の感情を隠すことなく話す幸子は清廉潔白で他意はないのだろう。それでも意地悪してしまうのは惚れているが故。
「なんだよ、幸子。お前やっぱり主将君のいる烏野に行きたかったんじゃねえの?」
「まさか!そんな訳ないでしょ」
幸子は少し傷ついたような顔をした。
「私は鉄朗と音駒に行きたかったんだから…」
「悪ィ。からかいすぎたな。ちゃんと分かってる」
「鉄朗の意地悪…!!」
ぎゅっと甘えるように抱きついてきた幸子を、あやすように両手で包み込んでやる。
顔を上げた幸子はまだ不安そうな表情を覗かせていた。
「…もしかして澤村くんとの仲を疑ってるの?」
「疑ってねえよ。俺が好きで堪らないってちゃんと顔に書いてあるからな」
「っ、もう…っ」
トン、と胸を叩いてきた幸子にニヒヒと笑い「図星だろ」と一言。すると頬染めた幸子も同じような悪戯っぽい笑みを返してきた。
「帰ったら可愛がってやっから覚悟しとけよ」
「鉄朗の方こそ覚悟しておいてよねっ」
「言ったな」
そうして2人弾かれたように笑い合った。
「好き。鉄朗が好き」
「知ってる」
黒尾を求めるように目を閉じた幸子の唇を、望み通り塞いでやる。
激しさよりも優しく交わすキス。角度を変えて何度も。
「ん、ぅ……」
唇が離れる度、幸子の口からは甘い吐息が洩れる。
口づけを交わしながら黒尾はちらりと壁にかかる時計を見た。
時刻は6時38分。――そろそろか。
(ぜってー見せてやんねえけど)
扉に背を向けている長身の黒尾により幸子の姿は隠れてしまい、扉からはほぼ見えない。
例えば突然誰かに覗かれたとしても幸子の表情を見るのは難しいだろう。…2人が何をしているのかは判ってしまうとしても。
そして――黒尾との口づけに夢中になっていた幸子の耳には恐らく聞こえていない。少し開いていた扉がパタンと微かな音を立てて閉まった事を。
――‥それでいい。
(くっそ。余裕ねぇな、俺)
宮城遠征の帰りの新幹線で呟いた言葉を今度は心の中で呟き、黒尾は自分自身を嘲笑した。
自分の感情を隠すことなく話す幸子は清廉潔白で他意はないのだろう。それでも意地悪してしまうのは惚れているが故。
「なんだよ、幸子。お前やっぱり主将君のいる烏野に行きたかったんじゃねえの?」
「まさか!そんな訳ないでしょ」
幸子は少し傷ついたような顔をした。
「私は鉄朗と音駒に行きたかったんだから…」
「悪ィ。からかいすぎたな。ちゃんと分かってる」
「鉄朗の意地悪…!!」
ぎゅっと甘えるように抱きついてきた幸子を、あやすように両手で包み込んでやる。
顔を上げた幸子はまだ不安そうな表情を覗かせていた。
「…もしかして澤村くんとの仲を疑ってるの?」
「疑ってねえよ。俺が好きで堪らないってちゃんと顔に書いてあるからな」
「っ、もう…っ」
トン、と胸を叩いてきた幸子にニヒヒと笑い「図星だろ」と一言。すると頬染めた幸子も同じような悪戯っぽい笑みを返してきた。
「帰ったら可愛がってやっから覚悟しとけよ」
「鉄朗の方こそ覚悟しておいてよねっ」
「言ったな」
そうして2人弾かれたように笑い合った。
「好き。鉄朗が好き」
「知ってる」
黒尾を求めるように目を閉じた幸子の唇を、望み通り塞いでやる。
激しさよりも優しく交わすキス。角度を変えて何度も。
「ん、ぅ……」
唇が離れる度、幸子の口からは甘い吐息が洩れる。
口づけを交わしながら黒尾はちらりと壁にかかる時計を見た。
時刻は6時38分。――そろそろか。
(ぜってー見せてやんねえけど)
扉に背を向けている長身の黒尾により幸子の姿は隠れてしまい、扉からはほぼ見えない。
例えば突然誰かに覗かれたとしても幸子の表情を見るのは難しいだろう。…2人が何をしているのかは判ってしまうとしても。
そして――黒尾との口づけに夢中になっていた幸子の耳には恐らく聞こえていない。少し開いていた扉がパタンと微かな音を立てて閉まった事を。
――‥それでいい。
(くっそ。余裕ねぇな、俺)
宮城遠征の帰りの新幹線で呟いた言葉を今度は心の中で呟き、黒尾は自分自身を嘲笑した。