#11 マキシマ
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踊り場での会話は続く。
「クラッキングから生き残った音声データは聞いたか?」
明るい陽射しの射し込む大きな窓硝子の前に並んで立ち、横目で幸子を見ながら狡噛が尋ねた。
「ううん、まだ。教師としての後処理が残ってたから…」
「『マキシマ』があの美術室にいた」
「えっ…!?」
ハッと幸子が狡噛を見た。あの『マキシマ』が!!?
ドクリ、と心臓が瞬間的に大きく脈打ち、次いで早鐘のように鳴り出した。
忘れもしない。忘れることのない。その名前。
感情を抑えるかのように、何処か辛そうに見えた狡噛の表情が、徐々に獰猛なそれへと変化していく。
「慎也…」
「獲物の尻尾が鼻先をかすめたみたいな感じだ」
真正面から幸子を捕えた狡噛に 先程までの穏やかさは皆無だった。
どんっと窓に押し付けられて ぶつけるように唇を重ねられた。
「んんッ…!」
背中に鈍い痛みを感じている暇もなく 狡噛の舌は幸子の口内に侵入し、好き勝手に犯した。飲み込みきれなかった唾液が ツ…と口の端を伝う。
執行官に降格されてから、狡噛は時折こういった激しさを見せるようになった。それは監視官時代には見ることのなかったもう一人の彼であり。
だが、それも狡噛の一面なんだと思うと 当たり前のように受け入れてしまう自分がいた。
幸子が退室した後、残された監視官2人は今後の方針を話し合っていた。
「検視結果を待って…」
説明をする宜野座を見つめながら、常守は全く別の事を考えていた。
かつては狡噛、幸子の両監視官に背中を預けていた彼ならば、自分の知りたい真実を知っているのだろうか…。
「宜野座さん」
「なんだ?」
「……特別執行官て、何ですか?」
「――っ!!?」
分かり易い動揺を見せた宜野座は、落ち着くように眼鏡をクイッとあげる仕草をした。
「…何処で何を聞いた?」
「何処からも。自分の目と耳で確認しました」
「!?……ドミネーターを木梨に向けたのか!?」
宜野座の声は小さいが非難するようなトゲを含んでいる。
「偶然でした。狡噛さんの落としたドミネーターを拾い上げた先に幸子さんがいて…それで……」
「木梨の役職と犯罪係数を知った」
「……はい」
常守から目を逸らした宜野座は部屋の隅に置かれたカンバスを眺めた。美しい花の絵が描かれたそれを少しの時間見つめ、大きく息を吐いた。その瞳には悲しみとも怒りともつかない複雑な色が浮かんでいる。
「君の見た通りだ」
「えっ?」
「……木梨は潜在犯じゃない」
僅かな沈黙の後。宜野座が静かに告げた。
「クラッキングから生き残った音声データは聞いたか?」
明るい陽射しの射し込む大きな窓硝子の前に並んで立ち、横目で幸子を見ながら狡噛が尋ねた。
「ううん、まだ。教師としての後処理が残ってたから…」
「『マキシマ』があの美術室にいた」
「えっ…!?」
ハッと幸子が狡噛を見た。あの『マキシマ』が!!?
ドクリ、と心臓が瞬間的に大きく脈打ち、次いで早鐘のように鳴り出した。
忘れもしない。忘れることのない。その名前。
感情を抑えるかのように、何処か辛そうに見えた狡噛の表情が、徐々に獰猛なそれへと変化していく。
「慎也…」
「獲物の尻尾が鼻先をかすめたみたいな感じだ」
真正面から幸子を捕えた狡噛に 先程までの穏やかさは皆無だった。
どんっと窓に押し付けられて ぶつけるように唇を重ねられた。
「んんッ…!」
背中に鈍い痛みを感じている暇もなく 狡噛の舌は幸子の口内に侵入し、好き勝手に犯した。飲み込みきれなかった唾液が ツ…と口の端を伝う。
執行官に降格されてから、狡噛は時折こういった激しさを見せるようになった。それは監視官時代には見ることのなかったもう一人の彼であり。
だが、それも狡噛の一面なんだと思うと 当たり前のように受け入れてしまう自分がいた。
幸子が退室した後、残された監視官2人は今後の方針を話し合っていた。
「検視結果を待って…」
説明をする宜野座を見つめながら、常守は全く別の事を考えていた。
かつては狡噛、幸子の両監視官に背中を預けていた彼ならば、自分の知りたい真実を知っているのだろうか…。
「宜野座さん」
「なんだ?」
「……特別執行官て、何ですか?」
「――っ!!?」
分かり易い動揺を見せた宜野座は、落ち着くように眼鏡をクイッとあげる仕草をした。
「…何処で何を聞いた?」
「何処からも。自分の目と耳で確認しました」
「!?……ドミネーターを木梨に向けたのか!?」
宜野座の声は小さいが非難するようなトゲを含んでいる。
「偶然でした。狡噛さんの落としたドミネーターを拾い上げた先に幸子さんがいて…それで……」
「木梨の役職と犯罪係数を知った」
「……はい」
常守から目を逸らした宜野座は部屋の隅に置かれたカンバスを眺めた。美しい花の絵が描かれたそれを少しの時間見つめ、大きく息を吐いた。その瞳には悲しみとも怒りともつかない複雑な色が浮かんでいる。
「君の見た通りだ」
「えっ?」
「……木梨は潜在犯じゃない」
僅かな沈黙の後。宜野座が静かに告げた。