#11 マキシマ
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美術室は公安局によって封鎖された。
突如として何者かのクラッキングにより破壊された監視カメラの録画データ。
六合塚の機転によりなんとか無事だったファイルは 映像のない雑音混じりの音声ひとつだった。その音声に残されていた決定的な名前。
『辱しめを受けた命から解放されて、ラヴィニアは幸せだったと思うかい?』
聞き慣れない男の質問に答える王陵璃華子の音声。
『「娘が辱しめを受けた後も生き長らえ、その姿を晒して悲しみを日々新たにさせてはなるまい」……でしたっけ? 槙島先生』
マキシマ――‥
それは狡噛や宜野座、それに幸子が決して忘れる事のできない名前。
「この部屋に……『マキシマ』が、いた」
呟いた狡噛が 窓の外を眺めたまま ぎゅっと拳を握りしめた。音声の再生を終えた携帯情報端末から顔を上げ、常守は険しい表情で狡噛の背中に喋る。
「あと一歩でしたね。王陵璃華子は既に指名手配されています。時間の問題です」
「消えるな」
「えっ!?」
小さく驚きの声をあげた常守の疑問は、宜野座の登場で打ち切られた。
「ちょっと来い、話がある」
肩を軽く小突いて告げた宜野座と連れ立ち、狡噛は美術室を出ていった。
入れ違いに幸子が部屋へと入って来る。
「あの2人どうしたの?」
「2人だけで話があるみたい」
「?……へえ、珍しい」
2人の背を見送り、教室のドアを閉ながら幸子が肩を竦めた。
宜野座は狡噛を階段の踊り場まで誘導し、立ち止まった。そのまま無言で外を眺めている。
階段の途中。手摺に背中を預けながら狡噛は はぁー…と長い溜め息を吐いた。
「なんだよ。文句があるならはっきり言え」
「すまなかった」
「!……」
頭ごなしに怒鳴りつけられるのだと思った狡噛は、宜野座の突然の謝罪に目を丸くして言葉をなくした。
「感情的になっていたのは俺の方だった。ヤツは……『マキシマ』は、お前の妄想じゃなかった」
「…気にするな。執行官の言う事を全て真に受けてたら監視官は勤まらない。そういうもんだろ?」
「だが……!」
と振り返った宜野座の背後に、いつの間にか階段を降りてきていて距離を詰めた狡噛が立っている。
「木梨は『マキシマ』と接触しているだろうか?」
「さあな。奴が教師に成りすまし堂々と潜伏していたとは考えにくい。…あるとすれば……偽名偽造、か」
「そういえば」
宜野座が思い出したように呟いた。
「博識で面白い教師がいると木梨が言っていたな」
「博識で面白い教師…?」
それが『マキシマ』であるとは到底思えない。しかし――‥
狡噛の笑みが肉食獣のようなそれに変わっていく。気分が高揚していた。
「俺はいま、久しぶりにとてもいい気分だよ、ギノ」
突如として何者かのクラッキングにより破壊された監視カメラの録画データ。
六合塚の機転によりなんとか無事だったファイルは 映像のない雑音混じりの音声ひとつだった。その音声に残されていた決定的な名前。
『辱しめを受けた命から解放されて、ラヴィニアは幸せだったと思うかい?』
聞き慣れない男の質問に答える王陵璃華子の音声。
『「娘が辱しめを受けた後も生き長らえ、その姿を晒して悲しみを日々新たにさせてはなるまい」……でしたっけ? 槙島先生』
マキシマ――‥
それは狡噛や宜野座、それに幸子が決して忘れる事のできない名前。
「この部屋に……『マキシマ』が、いた」
呟いた狡噛が 窓の外を眺めたまま ぎゅっと拳を握りしめた。音声の再生を終えた携帯情報端末から顔を上げ、常守は険しい表情で狡噛の背中に喋る。
「あと一歩でしたね。王陵璃華子は既に指名手配されています。時間の問題です」
「消えるな」
「えっ!?」
小さく驚きの声をあげた常守の疑問は、宜野座の登場で打ち切られた。
「ちょっと来い、話がある」
肩を軽く小突いて告げた宜野座と連れ立ち、狡噛は美術室を出ていった。
入れ違いに幸子が部屋へと入って来る。
「あの2人どうしたの?」
「2人だけで話があるみたい」
「?……へえ、珍しい」
2人の背を見送り、教室のドアを閉ながら幸子が肩を竦めた。
宜野座は狡噛を階段の踊り場まで誘導し、立ち止まった。そのまま無言で外を眺めている。
階段の途中。手摺に背中を預けながら狡噛は はぁー…と長い溜め息を吐いた。
「なんだよ。文句があるならはっきり言え」
「すまなかった」
「!……」
頭ごなしに怒鳴りつけられるのだと思った狡噛は、宜野座の突然の謝罪に目を丸くして言葉をなくした。
「感情的になっていたのは俺の方だった。ヤツは……『マキシマ』は、お前の妄想じゃなかった」
「…気にするな。執行官の言う事を全て真に受けてたら監視官は勤まらない。そういうもんだろ?」
「だが……!」
と振り返った宜野座の背後に、いつの間にか階段を降りてきていて距離を詰めた狡噛が立っている。
「木梨は『マキシマ』と接触しているだろうか?」
「さあな。奴が教師に成りすまし堂々と潜伏していたとは考えにくい。…あるとすれば……偽名偽造、か」
「そういえば」
宜野座が思い出したように呟いた。
「博識で面白い教師がいると木梨が言っていたな」
「博識で面白い教師…?」
それが『マキシマ』であるとは到底思えない。しかし――‥
狡噛の笑みが肉食獣のようなそれに変わっていく。気分が高揚していた。
「俺はいま、久しぶりにとてもいい気分だよ、ギノ」