#11 マキシマ
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桜霜学園の職員室。
音楽教師の柴田に充てがわれたデスクに着いた槙島は、小型イヤホンから流れてくる音声に耳を澄ましていた。
どうやら一連の事件の犯人が璃華子であると発覚してしまったらしい。
更に桜霜学園に縁があり、槙島にとっても懐かしい名前が耳に入ってきた。
『狡噛……あの二件は藤間幸三郎の犯行ではないと、お前は最初から見抜いていたのか?』
『今回の事件は――』
盗聴しているのは公安局の刑事達の会話だ。
まさかここで彼の…藤間幸三郎の名が聞けるとは思わなかった。
それにこの「狡噛」という男。執行官だろうか。とても興味深い。
「柴田先生」
ふいに声をかけられ、槙島は穏やかな笑みを貼り付けたままで顔を上げた。
立っていたのは幸子。彼女もまた、槙島にとって興味をそそる対象だ。
「ああ、木梨先生」
「音楽を聴いていらっしゃるんですか? それとも教材?」
「…両方ですね」
槙島の言葉に幸子は首を傾げた。
「両方? 授業で新しく使う音楽の教材を選んでる…とか?」
「そんな所です。これは興味深い"教材"になりそうですよ」
「あっ、じゃあ本決まりになったら私にも聴かせて下さいね」
屈託なく笑う幸子の表情をじっくりと観察しながら、槙島は口を開いた。
「木梨先生には少し刺激が強いかもしれません」
「えっ…!?」
「大変です!!」
幸子が槙島の言葉を聞き返した直後、血相を変えた男性警備員が駆け込んできた。
「学園内から生徒の死体が出ました!」
途端にざわつく職員室。
むろん幸子も例外ではなかった。とうとう起きてしまった……。
教頭以下動揺した教師達が大慌てで職員室を飛び出していく。幸子は槙島を振り返った。
「柴田先生、私達も行きましょう!」
「先に行っていて下さい」
「?……わ、分かりました!」
戸惑いながらも頷いた幸子を槙島が呼び止める。
「木梨幸子」
「?!!」
いつもと違う呼び方に驚き、足を止めて同僚を振り返った。椅子に座ったままで状態をこちらに向けた槙島は ただただ幸子を見つめるばかりで。
奇妙な静寂のあと、槙島は笑みを浮かべて言った。
「いずれ、また」
「?……え、ええ」
曖昧に頷き、幸子は職員室を出ていった。
残された槙島はデスクに向き直ると イヤホンを耳から引き抜き 口許に手を充て自嘲気味に笑う。
(僕は何を期待しているんだ)
今ここで幸子に全てを明かしたい衝動に駆られていた。
彼女とこの世界(システム)の終焉を見るのも悪くない…そんな思考がよぎる。
(きっと彼女なら――)
僕を理解し受け入れてくれるだろう…。
音楽教師の柴田に充てがわれたデスクに着いた槙島は、小型イヤホンから流れてくる音声に耳を澄ましていた。
どうやら一連の事件の犯人が璃華子であると発覚してしまったらしい。
更に桜霜学園に縁があり、槙島にとっても懐かしい名前が耳に入ってきた。
『狡噛……あの二件は藤間幸三郎の犯行ではないと、お前は最初から見抜いていたのか?』
『今回の事件は――』
盗聴しているのは公安局の刑事達の会話だ。
まさかここで彼の…藤間幸三郎の名が聞けるとは思わなかった。
それにこの「狡噛」という男。執行官だろうか。とても興味深い。
「柴田先生」
ふいに声をかけられ、槙島は穏やかな笑みを貼り付けたままで顔を上げた。
立っていたのは幸子。彼女もまた、槙島にとって興味をそそる対象だ。
「ああ、木梨先生」
「音楽を聴いていらっしゃるんですか? それとも教材?」
「…両方ですね」
槙島の言葉に幸子は首を傾げた。
「両方? 授業で新しく使う音楽の教材を選んでる…とか?」
「そんな所です。これは興味深い"教材"になりそうですよ」
「あっ、じゃあ本決まりになったら私にも聴かせて下さいね」
屈託なく笑う幸子の表情をじっくりと観察しながら、槙島は口を開いた。
「木梨先生には少し刺激が強いかもしれません」
「えっ…!?」
「大変です!!」
幸子が槙島の言葉を聞き返した直後、血相を変えた男性警備員が駆け込んできた。
「学園内から生徒の死体が出ました!」
途端にざわつく職員室。
むろん幸子も例外ではなかった。とうとう起きてしまった……。
教頭以下動揺した教師達が大慌てで職員室を飛び出していく。幸子は槙島を振り返った。
「柴田先生、私達も行きましょう!」
「先に行っていて下さい」
「?……わ、分かりました!」
戸惑いながらも頷いた幸子を槙島が呼び止める。
「木梨幸子」
「?!!」
いつもと違う呼び方に驚き、足を止めて同僚を振り返った。椅子に座ったままで状態をこちらに向けた槙島は ただただ幸子を見つめるばかりで。
奇妙な静寂のあと、槙島は笑みを浮かべて言った。
「いずれ、また」
「?……え、ええ」
曖昧に頷き、幸子は職員室を出ていった。
残された槙島はデスクに向き直ると イヤホンを耳から引き抜き 口許に手を充て自嘲気味に笑う。
(僕は何を期待しているんだ)
今ここで幸子に全てを明かしたい衝動に駆られていた。
彼女とこの世界(システム)の終焉を見るのも悪くない…そんな思考がよぎる。
(きっと彼女なら――)
僕を理解し受け入れてくれるだろう…。