#10 桜霜学園
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幸子は唇を震わせた。酷く混乱している。
「幸子、顔色悪い」
顔を覗き込みながら六合塚は、幸子を支えるように腰に手を添える。普段無表情に振る舞う彼女だが、その声音には幸子を気遣うものが伺えた。
「…ごめん、弥生ちゃん。大丈夫だよ」
「大丈夫なようには見えない」
直ぐに言い返す六合塚。誰が見ても幸子が強い責任感から自分の無力さを痛感しているのは一目瞭然だった。
「お前さんが一人で責任感じるこたぁねえよ」
「そーそー。言っとくけどそれ、幸子ちゃんの悪い癖だからね」
征陸が幸子の肩をポンと叩いた。頭の後ろで両腕を組んだ縢もいつものノリでニヤリと笑う。同僚達の励ましが嬉しい反面、弱い自分が情けなく恐縮する。
ちなみに…いくら気心が知れているとはいえ、職人気質の多い一係執行官。決してただの仲良しクラブではない。
つまり彼らが今 幸子の精神面をフォローしているのは、彼らが個人的にしたいと感じているから自発的にそうしているのであり。
おそらくは幸子の人柄の成せる技…といった所か。
「木梨…」
類に洩れず宜野座も、小さく名を呼び、彼女の肩を叩こうと僅かに左手をあげる素振りを見せたが……すぐに下ろした。
さっきと同じだ。何を言うべきか、何を言いたいか、ちゃんと分かってる。なのにそれを口に出す事を迷う自分がいて。
「まだ事件は解決してないんだ。責任を感じているなら今後の行動で挽回しろ」
代わりに飛び出した言葉と本心のギャップが、宜野座の心に鈍い痛みを与えた。
「うん、そうだよね…」
幸子が宜野座を見た。まだ少し青ざめてはいるが、そのまなざしは凛とした光を取り戻しつつある。
「少しの間だけでも私はここの教師だった。…だからこれは、生徒達の弔い合戦でもあるの」
「木梨」
「必ず犯人を見つけ出してみせる」
幸子の瞳に刑事特有の正義を宿す輝きが戻った。仕切り直しだ。
「しかし妙な話だな。校舎も学生寮も、軍事施設並みの厳戒態勢じゃねえか。ここから犠牲者を連れ出す方法なんてあるのか?」
忙しく動き回る鑑識ドローンを見つめながら征陸は苦い顔をした。
「そもそも、藤間幸三郎が三年ぶりに戻ったのだとしても、なぜ今になって桜霜学園の生徒ばかりを標的にする?」
宜野座の言う通りだ。ここは藤間の古巣。これではあまりにも、
「露骨、すぎるよね」
顎に手を充てた幸子が思考を巡らせながら言った。その隣から六合塚。
「藤間は警備の穴になる抜け道を知っていたのかも」
「抜け道…!?」
「有り得ますよねー。この学園、創設200年でしたっけ?敷地の中は増減築の繰り返しでメッチャクチャですから。見取り図とか酷いモンですよ」
縢の言った事は正しい。
幸子もここに来てすぐに学園内を把握しようと見取り図を手にした。
だが それを元にしても目的地に着かない事や、見取り図にない場所を発見する事が多々あった。
「ギノ、今回は内部犯で ほぼ間違いないよ」
「どうした、急に?」
「うん。もしかしたら殺人現場も犯人の隠れ家も……全部学園の中にあるのかと思って。そうすると内部犯で辻褄があうんだ」
あまり…考えたくない事実だが。
「幸子、顔色悪い」
顔を覗き込みながら六合塚は、幸子を支えるように腰に手を添える。普段無表情に振る舞う彼女だが、その声音には幸子を気遣うものが伺えた。
「…ごめん、弥生ちゃん。大丈夫だよ」
「大丈夫なようには見えない」
直ぐに言い返す六合塚。誰が見ても幸子が強い責任感から自分の無力さを痛感しているのは一目瞭然だった。
「お前さんが一人で責任感じるこたぁねえよ」
「そーそー。言っとくけどそれ、幸子ちゃんの悪い癖だからね」
征陸が幸子の肩をポンと叩いた。頭の後ろで両腕を組んだ縢もいつものノリでニヤリと笑う。同僚達の励ましが嬉しい反面、弱い自分が情けなく恐縮する。
ちなみに…いくら気心が知れているとはいえ、職人気質の多い一係執行官。決してただの仲良しクラブではない。
つまり彼らが今 幸子の精神面をフォローしているのは、彼らが個人的にしたいと感じているから自発的にそうしているのであり。
おそらくは幸子の人柄の成せる技…といった所か。
「木梨…」
類に洩れず宜野座も、小さく名を呼び、彼女の肩を叩こうと僅かに左手をあげる素振りを見せたが……すぐに下ろした。
さっきと同じだ。何を言うべきか、何を言いたいか、ちゃんと分かってる。なのにそれを口に出す事を迷う自分がいて。
「まだ事件は解決してないんだ。責任を感じているなら今後の行動で挽回しろ」
代わりに飛び出した言葉と本心のギャップが、宜野座の心に鈍い痛みを与えた。
「うん、そうだよね…」
幸子が宜野座を見た。まだ少し青ざめてはいるが、そのまなざしは凛とした光を取り戻しつつある。
「少しの間だけでも私はここの教師だった。…だからこれは、生徒達の弔い合戦でもあるの」
「木梨」
「必ず犯人を見つけ出してみせる」
幸子の瞳に刑事特有の正義を宿す輝きが戻った。仕切り直しだ。
「しかし妙な話だな。校舎も学生寮も、軍事施設並みの厳戒態勢じゃねえか。ここから犠牲者を連れ出す方法なんてあるのか?」
忙しく動き回る鑑識ドローンを見つめながら征陸は苦い顔をした。
「そもそも、藤間幸三郎が三年ぶりに戻ったのだとしても、なぜ今になって桜霜学園の生徒ばかりを標的にする?」
宜野座の言う通りだ。ここは藤間の古巣。これではあまりにも、
「露骨、すぎるよね」
顎に手を充てた幸子が思考を巡らせながら言った。その隣から六合塚。
「藤間は警備の穴になる抜け道を知っていたのかも」
「抜け道…!?」
「有り得ますよねー。この学園、創設200年でしたっけ?敷地の中は増減築の繰り返しでメッチャクチャですから。見取り図とか酷いモンですよ」
縢の言った事は正しい。
幸子もここに来てすぐに学園内を把握しようと見取り図を手にした。
だが それを元にしても目的地に着かない事や、見取り図にない場所を発見する事が多々あった。
「ギノ、今回は内部犯で ほぼ間違いないよ」
「どうした、急に?」
「うん。もしかしたら殺人現場も犯人の隠れ家も……全部学園の中にあるのかと思って。そうすると内部犯で辻褄があうんだ」
あまり…考えたくない事実だが。