#10 桜霜学園
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『何か変わった事はあったか?』
教職員宿舎の一室。宛がわれた簡素な部屋のベッドに座り、幸子は左手首に巻いたリング…携帯情報端末で宜野座と通話していた。
ちなみに生徒を刺激したくないという学園の意向もあり、普段は携帯情報端末をブラウスの下につけて きっちりと隠している。
「こっちは何もないよ。至って平和な教職ライフを満喫してます」
『……木梨執行官、公安局を離れている間に随分と縢に似たようだな』
「ち、違うって。本当に異常はないの!」
慌てて弁明すれば、宜野座はフンと鼻を鳴らした。幸子は少しだけ態度を改め口を開く。
「…本当に、人が殺されたなんて嘘みたいに普通の日常が展開されてるの」
『……そうか。俺の検討違いかも知れないな』
「そう決めつけるのは早い気もするな。あっ、ギノ」
幸子は思い出したように宜野座を呼んだ。
『なんだ?』
「事件とは関係ないだろうけど、面白い先生が一人いたよ。すっごい博識で」
『……事件とは関係ないんだろう?』
「うん、多分」
頷けば宜野座は息だけで笑ったようだ。
『なら聞く必要はないな』
「ギノの意地悪ーっ!!」
憤慨すると、宜野座は端末の向こうで笑っているようだ。こんなやりとりをしていると、あの頃と変わらないような錯覚を覚える。
なんで昔のままでいられなかったんだろう。
慎也が潜在犯になって執行官に降格したから?
その後を追うように私が執行官になったから?
慎也と私が……今は監視官であるあなたの部下だから?
(私達が、伸元を"失望"させたから?)
『――? おい、木梨。どうした?応答しろ』
「!!?」
端末から聞こえてきた宜野座の声に、幸子はハッと我に返った。
「えっ、あ……なに?」
『もう暫く潜入捜査を頼むと言っているんだ』
「あ、う…うん。了解」
応えながら幸子は聞かずにいられない事を尋ねる。
「ねえ、ギノ。……慎也はどうしてる?」
『……待機中だ。捜査からは外れてもらった』
その理由は藤間幸三郎と関係あるの? ――聞こうとして口をつぐんだ。宜野座も何か察したように話を切り上げる。
『また何かあったら連絡する』
「ん?」
『……っ…』
「ギノ?」
『無理は……するなよ』
ボソリと呟くように言って一方的に切れた端末。端末を眺めながら幸子は思った。
変わったように見えて、実は全く変わってないのかもしれない。
慎也も。私も。…伸元も。
昼間の柴田の言葉が脳裏をよぎった。
『押しつけられたルールに沿った、自分の立場。それが自分自身に嘘をつかせる』
――そうかもしれない。
教職員宿舎の一室。宛がわれた簡素な部屋のベッドに座り、幸子は左手首に巻いたリング…携帯情報端末で宜野座と通話していた。
ちなみに生徒を刺激したくないという学園の意向もあり、普段は携帯情報端末をブラウスの下につけて きっちりと隠している。
「こっちは何もないよ。至って平和な教職ライフを満喫してます」
『……木梨執行官、公安局を離れている間に随分と縢に似たようだな』
「ち、違うって。本当に異常はないの!」
慌てて弁明すれば、宜野座はフンと鼻を鳴らした。幸子は少しだけ態度を改め口を開く。
「…本当に、人が殺されたなんて嘘みたいに普通の日常が展開されてるの」
『……そうか。俺の検討違いかも知れないな』
「そう決めつけるのは早い気もするな。あっ、ギノ」
幸子は思い出したように宜野座を呼んだ。
『なんだ?』
「事件とは関係ないだろうけど、面白い先生が一人いたよ。すっごい博識で」
『……事件とは関係ないんだろう?』
「うん、多分」
頷けば宜野座は息だけで笑ったようだ。
『なら聞く必要はないな』
「ギノの意地悪ーっ!!」
憤慨すると、宜野座は端末の向こうで笑っているようだ。こんなやりとりをしていると、あの頃と変わらないような錯覚を覚える。
なんで昔のままでいられなかったんだろう。
慎也が潜在犯になって執行官に降格したから?
その後を追うように私が執行官になったから?
慎也と私が……今は監視官であるあなたの部下だから?
(私達が、伸元を"失望"させたから?)
『――? おい、木梨。どうした?応答しろ』
「!!?」
端末から聞こえてきた宜野座の声に、幸子はハッと我に返った。
「えっ、あ……なに?」
『もう暫く潜入捜査を頼むと言っているんだ』
「あ、う…うん。了解」
応えながら幸子は聞かずにいられない事を尋ねる。
「ねえ、ギノ。……慎也はどうしてる?」
『……待機中だ。捜査からは外れてもらった』
その理由は藤間幸三郎と関係あるの? ――聞こうとして口をつぐんだ。宜野座も何か察したように話を切り上げる。
『また何かあったら連絡する』
「ん?」
『……っ…』
「ギノ?」
『無理は……するなよ』
ボソリと呟くように言って一方的に切れた端末。端末を眺めながら幸子は思った。
変わったように見えて、実は全く変わってないのかもしれない。
慎也も。私も。…伸元も。
昼間の柴田の言葉が脳裏をよぎった。
『押しつけられたルールに沿った、自分の立場。それが自分自身に嘘をつかせる』
――そうかもしれない。