#09 潜入捜査
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そういえば――‥
「幸子さん、大丈夫かな」
「?……幸子がどうした」
ペットボトルの水を見ていた狡噛が、幸子の名前に反応して振り返った。そうだ。知らないのだ、この男は。
「幸子さん、被害者の在籍していた学校に教師として潜入してるんです」
「なに!?」
初めて狡噛が僅かな動揺を示した。
「…危険だな。今回の事件は内部犯の可能性が高い」
「ですよね。宜野座さんもそう踏んで幸子さんを送り込んだみたいです」
「ギノが……」
今までの経験上、宜野座が幸子を単独で危険な場所に送るとは到底思えない。だが一刻も早い現場復帰と事件解決が必要だ。
「あの 狡噛さん。佐々山執行官て、どんな人だったんですか?」
気に障るかもとゴクリと唾を飲んだが、狡噛は懐かしそうに目を細めて言った。
「クソヤローだった」
「は?」
常守は思わず耳を疑う。く……くそ?
「女好きでね。唐之杜や六合塚なんて何度尻を触られたことか。その度にぶん殴られるのに、まったく懲りる様子がなかった」
「幸子さんのも?」
「もちろんだ。幸子はその事実を俺に隠しててな。知った時は佐々山と大喧嘩したもんだ」
「ええっ!?」
狡噛なら嫉妬心に任せてそれくらいやりそうだ。
「それがきっかけで俺達の仲がみんなにバレて……後で幸子と2人、ギノに説教をくらったよ」
狡噛は当時を思い出しているのか、口元には笑みが浮かんでいる。
「女好きで凶暴。実に楽しいクソヤローだった」
口元の笑みが消える。
「少なくとも、あんな死に方をするような男じゃなかった」
そして狡噛は続けた。
犯人を同じ目に遭わせてやりたいと…そう思うようになった時点で、監視官としての自分はもう終わっていたと。
「後悔はありませんか?」
「自分の行動に後悔はない。ただ――」
と言葉を止めて握った拳を見つめた。
幸子の顔が浮かぶ。
それが例え幸子自身が望んだことだったにせよ、あいつを……巻き込んでしまった。
しかし後悔とは裏腹に、どんな手段を使っても幸子を己の手元に置いておきたいと思う自分もいて。
(俺は幸子を失うのが、怖い……のかもな)
ただならぬ雰囲気で黙り込む狡噛に遠慮がちに呼び掛けると、彼は我に返ったようだった。
「狡噛さん?」
「……なんでもない。問題は、未解決なこと、この一点に尽きる」
最後に狡噛は、佐々山が撮った写真を見せてくれた。
ピンボケの酷い一枚の写真。
画像ファイルのタイトルは――『マキシマ』
「幸子さん、大丈夫かな」
「?……幸子がどうした」
ペットボトルの水を見ていた狡噛が、幸子の名前に反応して振り返った。そうだ。知らないのだ、この男は。
「幸子さん、被害者の在籍していた学校に教師として潜入してるんです」
「なに!?」
初めて狡噛が僅かな動揺を示した。
「…危険だな。今回の事件は内部犯の可能性が高い」
「ですよね。宜野座さんもそう踏んで幸子さんを送り込んだみたいです」
「ギノが……」
今までの経験上、宜野座が幸子を単独で危険な場所に送るとは到底思えない。だが一刻も早い現場復帰と事件解決が必要だ。
「あの 狡噛さん。佐々山執行官て、どんな人だったんですか?」
気に障るかもとゴクリと唾を飲んだが、狡噛は懐かしそうに目を細めて言った。
「クソヤローだった」
「は?」
常守は思わず耳を疑う。く……くそ?
「女好きでね。唐之杜や六合塚なんて何度尻を触られたことか。その度にぶん殴られるのに、まったく懲りる様子がなかった」
「幸子さんのも?」
「もちろんだ。幸子はその事実を俺に隠しててな。知った時は佐々山と大喧嘩したもんだ」
「ええっ!?」
狡噛なら嫉妬心に任せてそれくらいやりそうだ。
「それがきっかけで俺達の仲がみんなにバレて……後で幸子と2人、ギノに説教をくらったよ」
狡噛は当時を思い出しているのか、口元には笑みが浮かんでいる。
「女好きで凶暴。実に楽しいクソヤローだった」
口元の笑みが消える。
「少なくとも、あんな死に方をするような男じゃなかった」
そして狡噛は続けた。
犯人を同じ目に遭わせてやりたいと…そう思うようになった時点で、監視官としての自分はもう終わっていたと。
「後悔はありませんか?」
「自分の行動に後悔はない。ただ――」
と言葉を止めて握った拳を見つめた。
幸子の顔が浮かぶ。
それが例え幸子自身が望んだことだったにせよ、あいつを……巻き込んでしまった。
しかし後悔とは裏腹に、どんな手段を使っても幸子を己の手元に置いておきたいと思う自分もいて。
(俺は幸子を失うのが、怖い……のかもな)
ただならぬ雰囲気で黙り込む狡噛に遠慮がちに呼び掛けると、彼は我に返ったようだった。
「狡噛さん?」
「……なんでもない。問題は、未解決なこと、この一点に尽きる」
最後に狡噛は、佐々山が撮った写真を見せてくれた。
ピンボケの酷い一枚の写真。
画像ファイルのタイトルは――『マキシマ』