佐々山と警備員の睨み合いはなおも続く。
「なんでテメーにそこまで言われなきゃならねーんだ!?」
「あなたが木梨さんに迷惑をかけているからです」
「あァ？」
「２人共…こんな所でやめて下さい！」
話を遮るように割って入った幸子を佐々山と警備員が見た。
「佐々山さん、警備員さんは私を心配してくれているだけなんです」
「だとしてもいきなり説教はねーだろ!?」
「警備員さん、佐々山さんはいつもこんな感じなんで心配入りません」
「いつも?! いつもあなたに迫っているんですか!?」
これではラチがあかない。
仕方ない…幸子は強行手段に出た。
「さ、佐々山さん…早く食堂に行きましょう。私、お腹すいちゃいました」
「お、おい。俺はまだ――！」
「警備員さん、お仕事頑張って下さい。失礼します」
渋る佐々山を何とか急き立てて歩き出す。
ちらりと振り返ると、警備員はまだ厳しい目でこちらを見ていた。
「アイツ…なんだかおかしくねーか？」
「さっきも言った通り、私を心配してくれているだけですよ」
「それにしたってさ…」
と佐々山も後ろをチラチラと眺めて警戒する。
「俺がいつ木梨に迷惑かけたってんだ」
「あはは…いつでしょうね……」
自覚のない佐々山に、幸子は愛想笑いを返すしかなかった。