銃口を司る正義
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屋上へ着いた所でようやく掴まれていた手が解放された。
突然すぎてされるがままであった幸子は僅かに息を切らしながら、狡噛の背に尋ねる。
「狡噛くん、緊急事態って…三係で何かあったの!?」
「いや」
狡噛は首を横に振った。
「じ、じゃあ…一係で!?」
「違う」
と、また首を横に振る。
「それじゃ一体…」
「木梨が」
「わ、私!?」
「緊急事態だったろ? 霜村監視官に言い寄られて」
こちらを振り向いた狡噛は自嘲気味の笑みを浮かべていた。
「悪い。咄嗟にあれしか連れ出す方法を思いつかなかった」
「――?!」
あの時――。
霜村を怖いと感じ、助けて欲しいと願った。
…居るはずのない狡噛に。
だがすがるように探して走らせた視線の先に狡噛はいた。本当に…いたのだ。
なぜだろう。すごく嬉しくて、自然と頬が緩む。
「連れ出してくれてありがとう、狡噛くん」
「ようやく笑ったな。やっぱり木梨には笑顔が似合うよ」
言われて幸子は自分が昨日からずっと笑っていなかった事に気づいた。
狡噛の前でも ずっと思い詰めたような顔をしていた自信がある。狡噛はそれに気づかせてくれたのだ。
そう感じた幸子は仕切り直すように改めて狡噛と向き合った。
「狡噛くん。私、もっと経験を積む。そうすればいつか、理想じゃない自分の信念を貫けるようになると思うんだ」
「それでこそ木梨だ」
狡噛も何処か嬉しそうで。
「これからも一緒に成長していこうな」
「うんっ!」
大きく頷く。
これで全て元通りだ――そう思ったが、違った。
一度幸子から視線を外し空を仰いだ狡噛は、バツが悪そうに口を開いた。
「すまない。余裕がなかった」
「余裕?」
幸子が不思議そうに首を傾げる。
今の彼女の決意を耳にし、狡噛もまた気づいたのだ。
(そうだ。昨日の俺は余裕がなかった)
幸子の事を解った風な佐々山に嫉妬した。
佐々山の言葉を重く受け止めている幸子に嫉妬した。
上司と部下。先輩と後輩。
幸子と佐々山の関係に嫉妬していた。
なぜそんな感情を持つのか――今なら分かる。
「木梨が好きだ」
それは突然の愛の告白だった。
突然すぎてされるがままであった幸子は僅かに息を切らしながら、狡噛の背に尋ねる。
「狡噛くん、緊急事態って…三係で何かあったの!?」
「いや」
狡噛は首を横に振った。
「じ、じゃあ…一係で!?」
「違う」
と、また首を横に振る。
「それじゃ一体…」
「木梨が」
「わ、私!?」
「緊急事態だったろ? 霜村監視官に言い寄られて」
こちらを振り向いた狡噛は自嘲気味の笑みを浮かべていた。
「悪い。咄嗟にあれしか連れ出す方法を思いつかなかった」
「――?!」
あの時――。
霜村を怖いと感じ、助けて欲しいと願った。
…居るはずのない狡噛に。
だがすがるように探して走らせた視線の先に狡噛はいた。本当に…いたのだ。
なぜだろう。すごく嬉しくて、自然と頬が緩む。
「連れ出してくれてありがとう、狡噛くん」
「ようやく笑ったな。やっぱり木梨には笑顔が似合うよ」
言われて幸子は自分が昨日からずっと笑っていなかった事に気づいた。
狡噛の前でも ずっと思い詰めたような顔をしていた自信がある。狡噛はそれに気づかせてくれたのだ。
そう感じた幸子は仕切り直すように改めて狡噛と向き合った。
「狡噛くん。私、もっと経験を積む。そうすればいつか、理想じゃない自分の信念を貫けるようになると思うんだ」
「それでこそ木梨だ」
狡噛も何処か嬉しそうで。
「これからも一緒に成長していこうな」
「うんっ!」
大きく頷く。
これで全て元通りだ――そう思ったが、違った。
一度幸子から視線を外し空を仰いだ狡噛は、バツが悪そうに口を開いた。
「すまない。余裕がなかった」
「余裕?」
幸子が不思議そうに首を傾げる。
今の彼女の決意を耳にし、狡噛もまた気づいたのだ。
(そうだ。昨日の俺は余裕がなかった)
幸子の事を解った風な佐々山に嫉妬した。
佐々山の言葉を重く受け止めている幸子に嫉妬した。
上司と部下。先輩と後輩。
幸子と佐々山の関係に嫉妬していた。
なぜそんな感情を持つのか――今なら分かる。
「木梨が好きだ」
それは突然の愛の告白だった。