銃口を司る正義
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3日後。休憩に訪れた食堂で幸子の姿を見かけた。
声をかけようと近づいていくと、彼女の様子がいつもと違う事に気づく。
カップの中の紅茶は一口も飲まれた形跡がないまま、冷めきっているようだ。それだけで長い時間 幸子がここにいるのだと察せられた。
「木梨」
名を呼べばハッとして顔をあげた幸子と目が合う。
何かあったのだと――彼女の表情から瞬時に悟った。
「狡噛くん…!?」
「座っていいか?」
「あっ、うん。…どうぞ」
椅子を引いて幸子の差し向かいに座った。
手にしていたコーヒーをソーサーごとテーブルへと置く。カチャ…と陶器が音を立てた。
「何かあったのか?」
「えっ…?!」
「いや、珍しく元気ないと思ってさ」
「珍しくは余計だよっ」
もう、と笑った幸子の顔にはやはり何処か影があり。
「木梨、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ…」
そう言った幸子は思う所があったようで、少しの間を開けてから再び口を開いた。
「……ううん、やっぱり大丈夫じゃない……かも」
「何かあったのか?」
先程と同じ質問を繰り返してやると、幸子は自嘲気味な笑みを浮かべた。
「私……やっぱり監視官に向いてないのかな」
「どうした、突然?」
もう幸子の顔に笑みはなかった。
思い詰めた様子で握り合わせた両手の指をきゅっときつく絡めた。
「私のせいでみんなを危険に曝したの。私…またトリガーを引けなかった」
「木梨…」
犯人に生きて罪を償わせる事に刑事としての信念を持つ幸子は、意図してドミネーターを使用したがらない。
「私は自分の理想を押しつけすぎだって……佐々山さんに叱られちゃった」
「――?!」
ドクリ…と嫌な音が鳴る。
「佐々山さんの言う通りだよね。私、」
「お前は」
「えっ…?!」
「お前の信念は誰かに何か言われたくらいで簡単に挫けるものなのか?」
思っていたよりずっと厳しい言葉が出た。幸子が戸惑っているのが分かる。
「こ、狡噛く…」
「そんな簡単に挫かれる正義なら、この先も貫いていくのは難しいぞ」
「――っ!?」
ビクッと大袈裟に震える幸子の肩。
「…そう、だよね。変な事言ってごめんなさい…」
「……?!」
「私、もう行くね」
「木梨…!!」
不似合いな作り笑いを残して幸子は足早に食堂を出ていった。
狡噛はコーヒーを一気に飲み干すと、長い溜め息を吐きながら背もたれに深く背を預けた。
声をかけようと近づいていくと、彼女の様子がいつもと違う事に気づく。
カップの中の紅茶は一口も飲まれた形跡がないまま、冷めきっているようだ。それだけで長い時間 幸子がここにいるのだと察せられた。
「木梨」
名を呼べばハッとして顔をあげた幸子と目が合う。
何かあったのだと――彼女の表情から瞬時に悟った。
「狡噛くん…!?」
「座っていいか?」
「あっ、うん。…どうぞ」
椅子を引いて幸子の差し向かいに座った。
手にしていたコーヒーをソーサーごとテーブルへと置く。カチャ…と陶器が音を立てた。
「何かあったのか?」
「えっ…?!」
「いや、珍しく元気ないと思ってさ」
「珍しくは余計だよっ」
もう、と笑った幸子の顔にはやはり何処か影があり。
「木梨、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ…」
そう言った幸子は思う所があったようで、少しの間を開けてから再び口を開いた。
「……ううん、やっぱり大丈夫じゃない……かも」
「何かあったのか?」
先程と同じ質問を繰り返してやると、幸子は自嘲気味な笑みを浮かべた。
「私……やっぱり監視官に向いてないのかな」
「どうした、突然?」
もう幸子の顔に笑みはなかった。
思い詰めた様子で握り合わせた両手の指をきゅっときつく絡めた。
「私のせいでみんなを危険に曝したの。私…またトリガーを引けなかった」
「木梨…」
犯人に生きて罪を償わせる事に刑事としての信念を持つ幸子は、意図してドミネーターを使用したがらない。
「私は自分の理想を押しつけすぎだって……佐々山さんに叱られちゃった」
「――?!」
ドクリ…と嫌な音が鳴る。
「佐々山さんの言う通りだよね。私、」
「お前は」
「えっ…?!」
「お前の信念は誰かに何か言われたくらいで簡単に挫けるものなのか?」
思っていたよりずっと厳しい言葉が出た。幸子が戸惑っているのが分かる。
「こ、狡噛く…」
「そんな簡単に挫かれる正義なら、この先も貫いていくのは難しいぞ」
「――っ!?」
ビクッと大袈裟に震える幸子の肩。
「…そう、だよね。変な事言ってごめんなさい…」
「……?!」
「私、もう行くね」
「木梨…!!」
不似合いな作り笑いを残して幸子は足早に食堂を出ていった。
狡噛はコーヒーを一気に飲み干すと、長い溜め息を吐きながら背もたれに深く背を預けた。