銃口を司る正義
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
何度もローヒールが足から脱げそうになりながら、幸子は廊下を駆けていた。
先程の天利との会話が耳に残って離れない。
『狡噛くんが……怪我?!』
『はい。樋野製薬の工場でドローンが暴走して、それで――』
幸子が話の続きを聞くことはなかった。既に体が勝手に医務室へと走り出していたからだ。
(狡噛くん……!)
最悪の事態が頭を過り、目頭が熱くなる。
ううん。きっと…きっと狡噛くんなら大丈夫だ…!!
そう自分を奮い起たせ、足と同じくらい震えている唇を噛みしめた。
時間にして2、3分の距離がやけに長く感じた。医務室の扉を潜り奥の治療室へとノックもせずに飛び込んだ。
「狡噛くん…!」
「木梨…?!」
ベッドに座っていた狡噛が驚いた様子で幸子を呼ぶ。幸子は真っ青な顔で一目散に狡噛の元へ駆け寄った。
「怪我は!?」
「ああ、怪我なら――」
と腕を見せる。
シャツが捲りあげられた左腕に包帯が巻かれていた。
「暴走したドローンにやられちまってな」
「他に怪我は?!」
「いや、これだけだ」
「痛くない?」
覗き込んでくる幸子の唇が震えていた。
「痛みはない。かすり傷だからな。直ぐに治るさ」
「良かった…」
ホッと安堵した幸子は、へなへなとその場にへたりこんでしまった。
さっきまで考えていた最悪が安心感に変わり、一気に力を奪っていったのだ。
「お、おい 木梨。大丈夫か!?」
「本当に…良かった…」
己の前にぺたんと座る幸子の目に涙の膜が張っているのに気づき、狡噛は一瞬息を飲んだ。それから鼻に抜けた優しい笑いを洩らした。
「そんな顔するな。俺が重傷だとでも思ったのか?」
大きな手をぽんと幸子の頭に乗せる。
「本当に……木梨は心配性だよな」
撫でるように動く手は優しい。
「怪我のこと、一体誰に聞いたんだ?」
「天利さんに」
「天利もまた随分オーバーに告げてくれたな」
「ううん、違うの。私が天利さんの話を最後まで聞かないで来ちゃったんだ」
そうだ。天利の話には続きがあるようだった。
中途半端に話を聞いて早合点したのは自分だ。天利が悪いのではない。
それを聞いた狡噛は悪戯っぽく尋ねてくる。
「俺が怪我したって聞いてそんなに慌てたのか?」
「だって……狡噛くんに何かあったら、私……?!」
ハッとして無意識に出た言葉を止めた。
さっきと違う。今度は心臓が小刻みに鼓動を打っている。
(何かあったら……?!)
何を言っているのだ、私は。
(何かあったら、私はどうするつもりだったの…?!)
突然感じた自分の気持ちに激しく動揺した。
「っ…」
「木梨…?」
動揺の意味を考える間もなく、2人のデバイスが緊急の呼び出しを告げた。
先程の天利との会話が耳に残って離れない。
『狡噛くんが……怪我?!』
『はい。樋野製薬の工場でドローンが暴走して、それで――』
幸子が話の続きを聞くことはなかった。既に体が勝手に医務室へと走り出していたからだ。
(狡噛くん……!)
最悪の事態が頭を過り、目頭が熱くなる。
ううん。きっと…きっと狡噛くんなら大丈夫だ…!!
そう自分を奮い起たせ、足と同じくらい震えている唇を噛みしめた。
時間にして2、3分の距離がやけに長く感じた。医務室の扉を潜り奥の治療室へとノックもせずに飛び込んだ。
「狡噛くん…!」
「木梨…?!」
ベッドに座っていた狡噛が驚いた様子で幸子を呼ぶ。幸子は真っ青な顔で一目散に狡噛の元へ駆け寄った。
「怪我は!?」
「ああ、怪我なら――」
と腕を見せる。
シャツが捲りあげられた左腕に包帯が巻かれていた。
「暴走したドローンにやられちまってな」
「他に怪我は?!」
「いや、これだけだ」
「痛くない?」
覗き込んでくる幸子の唇が震えていた。
「痛みはない。かすり傷だからな。直ぐに治るさ」
「良かった…」
ホッと安堵した幸子は、へなへなとその場にへたりこんでしまった。
さっきまで考えていた最悪が安心感に変わり、一気に力を奪っていったのだ。
「お、おい 木梨。大丈夫か!?」
「本当に…良かった…」
己の前にぺたんと座る幸子の目に涙の膜が張っているのに気づき、狡噛は一瞬息を飲んだ。それから鼻に抜けた優しい笑いを洩らした。
「そんな顔するな。俺が重傷だとでも思ったのか?」
大きな手をぽんと幸子の頭に乗せる。
「本当に……木梨は心配性だよな」
撫でるように動く手は優しい。
「怪我のこと、一体誰に聞いたんだ?」
「天利さんに」
「天利もまた随分オーバーに告げてくれたな」
「ううん、違うの。私が天利さんの話を最後まで聞かないで来ちゃったんだ」
そうだ。天利の話には続きがあるようだった。
中途半端に話を聞いて早合点したのは自分だ。天利が悪いのではない。
それを聞いた狡噛は悪戯っぽく尋ねてくる。
「俺が怪我したって聞いてそんなに慌てたのか?」
「だって……狡噛くんに何かあったら、私……?!」
ハッとして無意識に出た言葉を止めた。
さっきと違う。今度は心臓が小刻みに鼓動を打っている。
(何かあったら……?!)
何を言っているのだ、私は。
(何かあったら、私はどうするつもりだったの…?!)
突然感じた自分の気持ちに激しく動揺した。
「っ…」
「木梨…?」
動揺の意味を考える間もなく、2人のデバイスが緊急の呼び出しを告げた。