銃口を司る正義
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エレベーターのある一階エントランスは帝塚と内藤、それに警備ドローンにより封鎖されている。
盛下が逃亡するなら非常階段しか手段がない。
そう判断した幸子と佐々山は七階までの道のりに階段を使用した。
「あの、佐々山さん」
背中に声をかけると幸子の前を行く佐々山がちらりと振り返った。
幸子と違いほとんど息を切らしていない。そういえばなにか格闘技をしていると話していたが…おおよそタフなのだろう。
「なんだよ、改まって。……まさかまた犯人を撃つなとか言い出すんじゃねーだろうな?」
「…っ、そのまさかです。犯人の犯罪係数が300を越えていたとしても、命は取らずに拘束したいんです」
「お前さ、なんでそういう温~い事言えちゃうの?」
「死を持ってではなく、生きて罪を償う事に意味があると思うから」
答えを聞いた佐々山は盛大な溜め息を吐いた。
「あのさ幸子ちゃん。状況解ってる? 被害者が一緒なんだぞ? そいつを人質にしてきたらどーすんだよ?」
「それは……人質を解放するよう説得します」
「そーいやお前、前にもそんな事言ってたよな」
佐々山はもうひとつ息を吐いた。
「話し合いで解決出来るなら執行官もドミネーターも要らねーよ」
そう指摘すると幸子は言葉を詰まらせた。
図星だったのだろう。
何か言おうとして、それでも自分の気持ちが上手く言葉に出来ないらしく、やっと紡いだ言葉は短いものだったが、彼女の想いが籠められていた。
「でも……助けたい。諦めたくないんです」
幸子の考えが甘いのは確かだ。
だが…と佐々山は思う。
こいつはきっと何処までも他人(ひと)に優しい。罪は罪としてきちんと認識しているが、全ての人間が僅かでも持ち合わせているであろう情を頑なに信じているのだ。
(それでも理想を語るには経験値が圧倒的に不足してんだけどな)
この無知で無垢な若き監視官を年長者の自分が少しでも導いてやれるだろうか。
佐々山は歩みを止めて完全に後ろを振り返った。釣られて足を止めた幸子と対面する。
「木梨。ただ綺麗事を並べて説得して、それで変わる程 他人は甘くないぞ」
「――?!」
「俺は状況がヤバイと判断したら躊躇いなくドミネーターを使う。例えエリミネーターやデコンポーザーでも、だ。それが俺達執行官の仕事だからな」
「佐々山さん…!!」
「俺のやり方が気に入らないならドミネーターで俺を撃て。撃って止めろ。それがお前の…監視官の仕事だからな」
幸子の顔が青ざめる。唇が小刻みに震えていた。
「そんな…撃ちたくありません。だって佐々山さんは仲間です。仲間を撃つなんて…そんなの…!!」
「ならやっぱり、お前の発言はただの綺麗事だ」
「――っ!?」
幸子の目が大きく開かれる。
きつい言い方をしている自覚はありながらも佐々山はあえて続けた。
「生きて罪を償わせるのが刑事としてのお前の正義なんだろ? ならちゃんと態度で示せ。自分の言葉に責任を持てよ。俺を撃ってでも、その信念――貫いてみせろ!」
一見きつく当たられているように感じる。
だがこれは佐々山なりの激励だ。幸子は直感した。
「……っ、はい」
「上等だ」
しっかりと頷いた幸子に佐々山は人懐っこい笑顔を見せた。
盛下が逃亡するなら非常階段しか手段がない。
そう判断した幸子と佐々山は七階までの道のりに階段を使用した。
「あの、佐々山さん」
背中に声をかけると幸子の前を行く佐々山がちらりと振り返った。
幸子と違いほとんど息を切らしていない。そういえばなにか格闘技をしていると話していたが…おおよそタフなのだろう。
「なんだよ、改まって。……まさかまた犯人を撃つなとか言い出すんじゃねーだろうな?」
「…っ、そのまさかです。犯人の犯罪係数が300を越えていたとしても、命は取らずに拘束したいんです」
「お前さ、なんでそういう温~い事言えちゃうの?」
「死を持ってではなく、生きて罪を償う事に意味があると思うから」
答えを聞いた佐々山は盛大な溜め息を吐いた。
「あのさ幸子ちゃん。状況解ってる? 被害者が一緒なんだぞ? そいつを人質にしてきたらどーすんだよ?」
「それは……人質を解放するよう説得します」
「そーいやお前、前にもそんな事言ってたよな」
佐々山はもうひとつ息を吐いた。
「話し合いで解決出来るなら執行官もドミネーターも要らねーよ」
そう指摘すると幸子は言葉を詰まらせた。
図星だったのだろう。
何か言おうとして、それでも自分の気持ちが上手く言葉に出来ないらしく、やっと紡いだ言葉は短いものだったが、彼女の想いが籠められていた。
「でも……助けたい。諦めたくないんです」
幸子の考えが甘いのは確かだ。
だが…と佐々山は思う。
こいつはきっと何処までも他人(ひと)に優しい。罪は罪としてきちんと認識しているが、全ての人間が僅かでも持ち合わせているであろう情を頑なに信じているのだ。
(それでも理想を語るには経験値が圧倒的に不足してんだけどな)
この無知で無垢な若き監視官を年長者の自分が少しでも導いてやれるだろうか。
佐々山は歩みを止めて完全に後ろを振り返った。釣られて足を止めた幸子と対面する。
「木梨。ただ綺麗事を並べて説得して、それで変わる程 他人は甘くないぞ」
「――?!」
「俺は状況がヤバイと判断したら躊躇いなくドミネーターを使う。例えエリミネーターやデコンポーザーでも、だ。それが俺達執行官の仕事だからな」
「佐々山さん…!!」
「俺のやり方が気に入らないならドミネーターで俺を撃て。撃って止めろ。それがお前の…監視官の仕事だからな」
幸子の顔が青ざめる。唇が小刻みに震えていた。
「そんな…撃ちたくありません。だって佐々山さんは仲間です。仲間を撃つなんて…そんなの…!!」
「ならやっぱり、お前の発言はただの綺麗事だ」
「――っ!?」
幸子の目が大きく開かれる。
きつい言い方をしている自覚はありながらも佐々山はあえて続けた。
「生きて罪を償わせるのが刑事としてのお前の正義なんだろ? ならちゃんと態度で示せ。自分の言葉に責任を持てよ。俺を撃ってでも、その信念――貫いてみせろ!」
一見きつく当たられているように感じる。
だがこれは佐々山なりの激励だ。幸子は直感した。
「……っ、はい」
「上等だ」
しっかりと頷いた幸子に佐々山は人懐っこい笑顔を見せた。