銃口を司る正義
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休憩時間を使って屋上に出た。
んー…と伸びをして新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。初夏の爽やかな風が髪を煽るのが心地好かった。
講義終了後も、青柳達は熱心に監視官時代の話を若い講師から聞いていたが、幸子は一旦クールダウンしたくて抜け出して来たのだ。
「木梨」
呼ばれて振り返ると、コツコツと足音を響かせながら狡噛がこちらに歩いてくる所だった。
「狡噛くん?!」
「気分でも悪いのか?」
「ううん。ちょっと気持ちを落ち着かせていただけだよ」
「みんな昂っていたからな。…ギノも。青柳も」
「狡噛くんも?」
「まあ、そうだな」
隣までやってくると、先程の幸子と同じように狡噛も大きく体を伸ばした。
「それに…机の前に座ってばかりいると体が鈍(なま)る」
「狡噛くんて何かスポーツとかやってるの?」
「キックボクシングとレスリングを趣味で、な」
「うわぁ、すごいね!!」
素直に感心する幸子に笑みを溢しながら、穏やかな表情のまま尋ねる。
「不安か?」
「ん…?」
「ドミネーター」
手摺に向けられていた幸子の体が隣に立つ狡噛の方に向けられた。次の言葉を待つ。
「木梨、俺の前に座ってただろ? 背中が緊張しっぱなしだったからさ」
「そ…そんなに固まってた?」
「まるで石のように」
冗談半分としても、一体自分はどれだけ緊張しながら講義を受けていたのか。
「…不安じゃないって言ったら嘘になるかな。ドミネーターを使う事に躊躇いがない訳じゃないし」
「ドミネーターの使用は監視官として避けられないからな」
そうなのだ。ドミネーターとは今後長い付き合いになる。だからこそ――。
「講義を受けててね、改めて監視官の責任の重さを痛感させられて…ちょっと圧倒されちゃってるみたい」
ははは…と自嘲気味に笑う幸子から視線を空へと滑らせた。
「ドミネーター…潜在犯を裁くシビュラの目。
シビュラに代わり潜在犯を執行する――それが監視官の役割」
「……なんだか怖いな。覚悟はしてきたはずなのに」
「物は考えようさ」
再び空から幸子に視線を移しながら狡噛。
「俺達がドミネーターで潜在犯を執行する事によって未然に防げる犯罪がある。それに執行した潜在犯が更正して社会復帰する可能性だって出てくるんだ」
「あっ…」
「そう考えると…気持ちが少し楽にならないか?」
「う、うん…!!」
全くその通りだ。
ドミネーターを通して社会貢献できると思えば使用も然程苦ではなくなる。
「元気出たようだな」
「うん。ありがとう、狡噛くん」
「まあ、本当は話し合いで説得できるならそれが一番だと思うが」
「……おかしな解答しちゃったかな?」
「ドミネーターが苦手な監視官が一人くらいいてもいいさ」
狡噛の笑みに釣られるように、幸子の顔にも自然と笑みが溢れた。
目の前にいるこの頼りになる同僚から、人として大切な事を学んだ気がした。
んー…と伸びをして新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。初夏の爽やかな風が髪を煽るのが心地好かった。
講義終了後も、青柳達は熱心に監視官時代の話を若い講師から聞いていたが、幸子は一旦クールダウンしたくて抜け出して来たのだ。
「木梨」
呼ばれて振り返ると、コツコツと足音を響かせながら狡噛がこちらに歩いてくる所だった。
「狡噛くん?!」
「気分でも悪いのか?」
「ううん。ちょっと気持ちを落ち着かせていただけだよ」
「みんな昂っていたからな。…ギノも。青柳も」
「狡噛くんも?」
「まあ、そうだな」
隣までやってくると、先程の幸子と同じように狡噛も大きく体を伸ばした。
「それに…机の前に座ってばかりいると体が鈍(なま)る」
「狡噛くんて何かスポーツとかやってるの?」
「キックボクシングとレスリングを趣味で、な」
「うわぁ、すごいね!!」
素直に感心する幸子に笑みを溢しながら、穏やかな表情のまま尋ねる。
「不安か?」
「ん…?」
「ドミネーター」
手摺に向けられていた幸子の体が隣に立つ狡噛の方に向けられた。次の言葉を待つ。
「木梨、俺の前に座ってただろ? 背中が緊張しっぱなしだったからさ」
「そ…そんなに固まってた?」
「まるで石のように」
冗談半分としても、一体自分はどれだけ緊張しながら講義を受けていたのか。
「…不安じゃないって言ったら嘘になるかな。ドミネーターを使う事に躊躇いがない訳じゃないし」
「ドミネーターの使用は監視官として避けられないからな」
そうなのだ。ドミネーターとは今後長い付き合いになる。だからこそ――。
「講義を受けててね、改めて監視官の責任の重さを痛感させられて…ちょっと圧倒されちゃってるみたい」
ははは…と自嘲気味に笑う幸子から視線を空へと滑らせた。
「ドミネーター…潜在犯を裁くシビュラの目。
シビュラに代わり潜在犯を執行する――それが監視官の役割」
「……なんだか怖いな。覚悟はしてきたはずなのに」
「物は考えようさ」
再び空から幸子に視線を移しながら狡噛。
「俺達がドミネーターで潜在犯を執行する事によって未然に防げる犯罪がある。それに執行した潜在犯が更正して社会復帰する可能性だって出てくるんだ」
「あっ…」
「そう考えると…気持ちが少し楽にならないか?」
「う、うん…!!」
全くその通りだ。
ドミネーターを通して社会貢献できると思えば使用も然程苦ではなくなる。
「元気出たようだな」
「うん。ありがとう、狡噛くん」
「まあ、本当は話し合いで説得できるならそれが一番だと思うが」
「……おかしな解答しちゃったかな?」
「ドミネーターが苦手な監視官が一人くらいいてもいいさ」
狡噛の笑みに釣られるように、幸子の顔にも自然と笑みが溢れた。
目の前にいるこの頼りになる同僚から、人として大切な事を学んだ気がした。