#XX 果たされた約束
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鼓動が早鐘を打った。
体中の血液が沸騰したように体が震え、脳がじんじんと痺れる。
緩む涙腺を堪えてゆっくりと振り返った。
「っ、ああ……」
開け放たれた玄関ドアの前に立っていたのは――。
「慎…也……!?」
「幸子!」
「しん、や……っ、慎也ぁっ!」
飛びつくより先に狡噛の力強い腕に抱きしめられていた。
パタン…と、狡噛の背後でドアが閉まる。
「慎也、慎也ぁ…!!」
「遅くなってすまない」
感情に思考がついていかず、泣きじゃくりながら狡噛の胸にすがりつき、ただただ彼の名を呼ぶ事しか出来なかった。
一方の狡噛も愛しい温もりを体全体で感じるように、幸子を抱きしめる腕に更に力を込めた。空虚な心が満たされていく――。
そうして暫くの間、2人は抱き合っていた。
「まずは これを返さないとな」
抱擁を解いた狡噛がポケットから取り出したのは見覚えのあるハンカチ。
菖蒲の花刺繍が目に入る。
「約束だからな」
「うん…っ」
約束のハンカチは再び幸子の許へ。
受け取った幸子の涙に濡れた顔に微笑みが洩れる。
「ホントだ…」
「ん?」
「菖蒲の花言葉……。"良い便り"って」
花言葉通りに狡噛というこれ以上ないくらい良い便りが縢によって幸子の許へ届けられた。
「幸子、知っているか。菖蒲の花言葉はもうひとつあるんだ」
「えっ…?!」
"信じるものの幸福"――
「幸子が俺を信じていてくれたから、俺達は離れずに今こうしている」
それならば私は、花言葉通りに幸せを望んでいいの…?
「慎也と一緒がいい…。ずっと慎也の傍にいたいの」
頬を流れる涙の筋を狡噛の指先がそっと拭う。狡噛の触れた箇所から温かさが流れ込んだ。
それから狡噛は幸子の腰に手を回し抱き寄せたままで、真っ直ぐに見つめてきた。
「勿論だ。幸子、ずっと俺の傍にいろ。俺の横で笑っていてほしい」
「……っ、はい…」
自然と重なりあう唇。
触れるだけであった口づけは、離れていた時間を取り戻すように徐々に深くなっていく。
互いに感じる唇の感触と温もりは、確かな幸福感として 狡噛と幸子を優しく包み込んだ――。
All Alone With You
14.10.24
体中の血液が沸騰したように体が震え、脳がじんじんと痺れる。
緩む涙腺を堪えてゆっくりと振り返った。
「っ、ああ……」
開け放たれた玄関ドアの前に立っていたのは――。
「慎…也……!?」
「幸子!」
「しん、や……っ、慎也ぁっ!」
飛びつくより先に狡噛の力強い腕に抱きしめられていた。
パタン…と、狡噛の背後でドアが閉まる。
「慎也、慎也ぁ…!!」
「遅くなってすまない」
感情に思考がついていかず、泣きじゃくりながら狡噛の胸にすがりつき、ただただ彼の名を呼ぶ事しか出来なかった。
一方の狡噛も愛しい温もりを体全体で感じるように、幸子を抱きしめる腕に更に力を込めた。空虚な心が満たされていく――。
そうして暫くの間、2人は抱き合っていた。
「まずは これを返さないとな」
抱擁を解いた狡噛がポケットから取り出したのは見覚えのあるハンカチ。
菖蒲の花刺繍が目に入る。
「約束だからな」
「うん…っ」
約束のハンカチは再び幸子の許へ。
受け取った幸子の涙に濡れた顔に微笑みが洩れる。
「ホントだ…」
「ん?」
「菖蒲の花言葉……。"良い便り"って」
花言葉通りに狡噛というこれ以上ないくらい良い便りが縢によって幸子の許へ届けられた。
「幸子、知っているか。菖蒲の花言葉はもうひとつあるんだ」
「えっ…?!」
"信じるものの幸福"――
「幸子が俺を信じていてくれたから、俺達は離れずに今こうしている」
それならば私は、花言葉通りに幸せを望んでいいの…?
「慎也と一緒がいい…。ずっと慎也の傍にいたいの」
頬を流れる涙の筋を狡噛の指先がそっと拭う。狡噛の触れた箇所から温かさが流れ込んだ。
それから狡噛は幸子の腰に手を回し抱き寄せたままで、真っ直ぐに見つめてきた。
「勿論だ。幸子、ずっと俺の傍にいろ。俺の横で笑っていてほしい」
「……っ、はい…」
自然と重なりあう唇。
触れるだけであった口づけは、離れていた時間を取り戻すように徐々に深くなっていく。
互いに感じる唇の感触と温もりは、確かな幸福感として 狡噛と幸子を優しく包み込んだ――。
All Alone With You
14.10.24