#50 雨、凪ぐ
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或るシンプルな一室――。
一人の男が窮屈そうなベッドに腰かけて紙の本を読んでいた。
時折、側に誂えられたローテーブルに置かれた灰皿の上の煙草に手を伸ばす。
本に視線を投げてはいるが、男…狡噛慎也の思考は全く別の所にあった。
(幸子……)
事情により、今は離れた場所にいる愛する女。
ようやく彼女を迎えに行く目処と、…決心がついた。
決意を固めてからも ふとした瞬間に、生まれ育った場所から見知らぬ土地に彼女を連れ去っていいものかと何度も自問自答した。
しかも己は殺人の罪を背負う身だ。
幸子をみすみす闇に引き摺り込む結果となるかもしれない。
それでも導き出される結論は何時も同じで。
(幸子を愛している――‥俺には幸子が必要だ)
そして幸子もまた狡噛を愛し、必要としてくれている。
それが全てだった。
「?……」
不意に扉がノックされ、狡噛は本を置いて立ち上がった。ゆっくりと扉を開ける。
「捕らわれのお姫さまを救出に行く、仲間募集中の勇者の部屋ってここ?」
狡噛の目が驚きに開かれ、それから感極まったような笑みに変わった。
「ここに宇宙一優秀な賢者がいるんだけど……仲間にしてみない?」
「宇宙一自堕落な遊び人の間違いだろ?」
久しぶりに聞いた軽口が可笑しくて、ついからかうように返せば、その若い男は一瞬ぶすっと膨れっ面を見せた後、芝居がかったように首を横に振りながら盛大な溜め息を吐く。
「はぁ~……コウちゃんてば相変わらず見る目ないねー」
「そいつは悪かったな」
「まあ、そんな勇者さま一人じゃ心配だし、俺も一緒に行ってやんよ。幸子ちゃん、迎えに行くんだろ?」
「……危ない橋だぞ?」
「それなら尚更一人より二人っしょ?それに幸子ちゃんには、危ない橋の百や二百渡っても返しきれないくらいでっかい借りがあるからさ」
その言葉に狡噛は全てを理解した。
「それじゃ行きますか。捕らわれのお姫さま救出に」
「ああ。頼りにしてるよ」
縢秀星が悪戯っぽい仕草で拳を突き出す。
見交わした狡噛がそれに乗って拳を突き合わせた。
正義の連鎖は終わらない――‥
SIByL still continues…
一人の男が窮屈そうなベッドに腰かけて紙の本を読んでいた。
時折、側に誂えられたローテーブルに置かれた灰皿の上の煙草に手を伸ばす。
本に視線を投げてはいるが、男…狡噛慎也の思考は全く別の所にあった。
(幸子……)
事情により、今は離れた場所にいる愛する女。
ようやく彼女を迎えに行く目処と、…決心がついた。
決意を固めてからも ふとした瞬間に、生まれ育った場所から見知らぬ土地に彼女を連れ去っていいものかと何度も自問自答した。
しかも己は殺人の罪を背負う身だ。
幸子をみすみす闇に引き摺り込む結果となるかもしれない。
それでも導き出される結論は何時も同じで。
(幸子を愛している――‥俺には幸子が必要だ)
そして幸子もまた狡噛を愛し、必要としてくれている。
それが全てだった。
「?……」
不意に扉がノックされ、狡噛は本を置いて立ち上がった。ゆっくりと扉を開ける。
「捕らわれのお姫さまを救出に行く、仲間募集中の勇者の部屋ってここ?」
狡噛の目が驚きに開かれ、それから感極まったような笑みに変わった。
「ここに宇宙一優秀な賢者がいるんだけど……仲間にしてみない?」
「宇宙一自堕落な遊び人の間違いだろ?」
久しぶりに聞いた軽口が可笑しくて、ついからかうように返せば、その若い男は一瞬ぶすっと膨れっ面を見せた後、芝居がかったように首を横に振りながら盛大な溜め息を吐く。
「はぁ~……コウちゃんてば相変わらず見る目ないねー」
「そいつは悪かったな」
「まあ、そんな勇者さま一人じゃ心配だし、俺も一緒に行ってやんよ。幸子ちゃん、迎えに行くんだろ?」
「……危ない橋だぞ?」
「それなら尚更一人より二人っしょ?それに幸子ちゃんには、危ない橋の百や二百渡っても返しきれないくらいでっかい借りがあるからさ」
その言葉に狡噛は全てを理解した。
「それじゃ行きますか。捕らわれのお姫さま救出に」
「ああ。頼りにしてるよ」
縢秀星が悪戯っぽい仕草で拳を突き出す。
見交わした狡噛がそれに乗って拳を突き合わせた。
正義の連鎖は終わらない――‥
SIByL still continues…