#50 雨、凪ぐ
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宜野座に名を呼ばれてハッと幸子は我に返った。
窓の外の風景から車内に視線を戻すと助手席に着いた宜野座が不思議そうにこちらを眺めている。
「幸子さん、疲れてる?」
運転席の常守が心配そうに言った。
「ううん、違うの。ちょっとボーッとしてただけ。それより――何の話だっけ?」
「明日から赴任する新任監視官の話だ」
宜野座が応えた。
「異例の人事ですよね。未成年の登用なんて」
「確か桜霜学園の学生らしいな」
桜霜学園…。王稜璃華子の起こした事件の被害者。彼女はその友人だったか。
そう言えば槙島と初めて出逢ったのは、教師として潜入捜査をしていた同学園内だった。
「幸子は面識あるのか?」
「ううん、面識はないと思う。私が教えていたのは違う学年だったから」
「……そうか」
「居ても立ってもいられなかったんですね、きっと。だって友達を殺されてるんですもの」
「俺達にも責任の一旦はある…って事か」
「そうだね……」
2人の言う通りだ。
友人を失い、悩んだ末にその若さで職業適性診断を受けたのだろう。
自分に出来る事を探して。
確かに責任の一旦は自分達にもある。
特に自分は桜霜学園に一時でも教師として赴任していたのだ。学生達を守りきれなかった責任を嫌でも痛感する。
彼女が若くして監視官の道を選んだのなら、全力でサポートしたい。
それが自分に出来るたったひとつの事だ。
「そう言えば…宜野座さんの眼鏡、ダテだったんですか?」
重く静まった車内の雰囲気を変えようと常守が別の話題を振った。
宜野座と…それに幸子も苦笑いを浮かべる。
「あれ?幸子さんもダテだって知ってたの?」
「うん。実は」
とこちらを振り向いた宜野座と見交わした。
「自分の顔が嫌いでね。特に目元が。……だがもう、どうでも良くなったんだ」
「伸元は眼鏡してない方が素敵だよね。ねっ、朱ちゃん」
「うん! 宜野座さん、かっこいいですよ」
照れたように咳払いをした宜野座に、今度は幸子と常守が見交わして笑った。
車内の空気が緩和していく。
色々な事があった。
征陸、縢、そして狡噛が去り、代わりに新任監視官が赴任する。
一係もどんどん様変わりしていくのだろう。
(慎也――‥)
狡噛はきっと、罪を背負ってしまった。
……止められなかった事実が胸を痛くする。
しかし幸子の気持ちはもう揺らがなかった。
狡噛の抱えるものを共に背負い、生きていこう――。
幸子はそっと目を閉じて、近い未来に訪れるであろう恋人との再会に想いを馳せた。
覆面パトカーは公安局に向けて高速道路を滑るように走っていった。
窓の外の風景から車内に視線を戻すと助手席に着いた宜野座が不思議そうにこちらを眺めている。
「幸子さん、疲れてる?」
運転席の常守が心配そうに言った。
「ううん、違うの。ちょっとボーッとしてただけ。それより――何の話だっけ?」
「明日から赴任する新任監視官の話だ」
宜野座が応えた。
「異例の人事ですよね。未成年の登用なんて」
「確か桜霜学園の学生らしいな」
桜霜学園…。王稜璃華子の起こした事件の被害者。彼女はその友人だったか。
そう言えば槙島と初めて出逢ったのは、教師として潜入捜査をしていた同学園内だった。
「幸子は面識あるのか?」
「ううん、面識はないと思う。私が教えていたのは違う学年だったから」
「……そうか」
「居ても立ってもいられなかったんですね、きっと。だって友達を殺されてるんですもの」
「俺達にも責任の一旦はある…って事か」
「そうだね……」
2人の言う通りだ。
友人を失い、悩んだ末にその若さで職業適性診断を受けたのだろう。
自分に出来る事を探して。
確かに責任の一旦は自分達にもある。
特に自分は桜霜学園に一時でも教師として赴任していたのだ。学生達を守りきれなかった責任を嫌でも痛感する。
彼女が若くして監視官の道を選んだのなら、全力でサポートしたい。
それが自分に出来るたったひとつの事だ。
「そう言えば…宜野座さんの眼鏡、ダテだったんですか?」
重く静まった車内の雰囲気を変えようと常守が別の話題を振った。
宜野座と…それに幸子も苦笑いを浮かべる。
「あれ?幸子さんもダテだって知ってたの?」
「うん。実は」
とこちらを振り向いた宜野座と見交わした。
「自分の顔が嫌いでね。特に目元が。……だがもう、どうでも良くなったんだ」
「伸元は眼鏡してない方が素敵だよね。ねっ、朱ちゃん」
「うん! 宜野座さん、かっこいいですよ」
照れたように咳払いをした宜野座に、今度は幸子と常守が見交わして笑った。
車内の空気が緩和していく。
色々な事があった。
征陸、縢、そして狡噛が去り、代わりに新任監視官が赴任する。
一係もどんどん様変わりしていくのだろう。
(慎也――‥)
狡噛はきっと、罪を背負ってしまった。
……止められなかった事実が胸を痛くする。
しかし幸子の気持ちはもう揺らがなかった。
狡噛の抱えるものを共に背負い、生きていこう――。
幸子はそっと目を閉じて、近い未来に訪れるであろう恋人との再会に想いを馳せた。
覆面パトカーは公安局に向けて高速道路を滑るように走っていった。