#50 雨、凪ぐ
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「朱ちゃん!」
不意に名を呼ばれて常守は思考を止めた。
空から視線を移した先に幸子の姿があった。手には3つの缶。
「朱ちゃんはココアでいいかな。私と同じだよ。伸元はコーヒーにしたけど」
「うん、幸子さんと同じで嬉しい。ありがとう」
「……どうかしたの?」
ココアを常守に渡しながら幸子が尋ねてくる。常守の様子が変だと気づいたらしい。
こういう時の幸子は鋭いと思いつつ、同じくシビュラの正体を知る彼女になら打ち明けていいかと結論を出した。
「幸子さんはどう思う? 本当に狡噛さんは槙島を……」
幸子が目覚めた時、既に狡噛と槙島の姿は何処にもなかった。
代わりに常守が大粒の涙を流しながら心配そうに幸子の顔を覗き込んでいたのだ。
「……槙島聖護の遺体は発見されなかった。でも現場に残されていた血痕は致死量を越えていた」
「私は間違いなく銃声を耳にしました」
常守の言葉通りならトリガーは引かれてしまった。
狡噛が決行したのではないと信じたい。だが、
「シビュラは槙島聖護がもういないと判断した。きっとそれが全てなんだと思う」
黙って幸子の話を聞いている常守の瞳には絶望とはまた違った強い意志の光が宿っていた。
彼女の心情を察し、幸子はあえてあっけらかんとした口調で話しかける。
「同じ身の上だね、私達」
この世界(システム)を更に確立させる為の観察対象。
強靭なサイコパスを持つ常守と、免罪体質ではないが特殊なサイコパスを持つ幸子にシビュラが望むこと。
「幸子さんが一緒なのは心強いな」
常守が小さく微笑んで僅かに身を寄せてきた。
「…でも本当は、狡噛さんに幸子さんを連れ去って欲しかったんだ」
「朱ちゃん…」
自分の事を親身に考えてくれていて、とても信頼のおける、この妹のような後輩に胸が熱くなる。
「大丈夫。慎也と私は離れないよ。絶対に」
「幸子さん…」
「だから…慎也が迎えに来てくれるその日まで、朱ちゃんの側にいさせてね」
「…っ、当たり前だよ!」
ぎゅっと抱きついてきた常守の背中を2、3度擦ってやる。
「さてと、そろそろ私も智己おじさんに逢いに行ってこようかな」
「うん…。私はここで待ってる」
幸子は常守に微笑み、それから建物の中へと歩いていった。
不意に名を呼ばれて常守は思考を止めた。
空から視線を移した先に幸子の姿があった。手には3つの缶。
「朱ちゃんはココアでいいかな。私と同じだよ。伸元はコーヒーにしたけど」
「うん、幸子さんと同じで嬉しい。ありがとう」
「……どうかしたの?」
ココアを常守に渡しながら幸子が尋ねてくる。常守の様子が変だと気づいたらしい。
こういう時の幸子は鋭いと思いつつ、同じくシビュラの正体を知る彼女になら打ち明けていいかと結論を出した。
「幸子さんはどう思う? 本当に狡噛さんは槙島を……」
幸子が目覚めた時、既に狡噛と槙島の姿は何処にもなかった。
代わりに常守が大粒の涙を流しながら心配そうに幸子の顔を覗き込んでいたのだ。
「……槙島聖護の遺体は発見されなかった。でも現場に残されていた血痕は致死量を越えていた」
「私は間違いなく銃声を耳にしました」
常守の言葉通りならトリガーは引かれてしまった。
狡噛が決行したのではないと信じたい。だが、
「シビュラは槙島聖護がもういないと判断した。きっとそれが全てなんだと思う」
黙って幸子の話を聞いている常守の瞳には絶望とはまた違った強い意志の光が宿っていた。
彼女の心情を察し、幸子はあえてあっけらかんとした口調で話しかける。
「同じ身の上だね、私達」
この世界(システム)を更に確立させる為の観察対象。
強靭なサイコパスを持つ常守と、免罪体質ではないが特殊なサイコパスを持つ幸子にシビュラが望むこと。
「幸子さんが一緒なのは心強いな」
常守が小さく微笑んで僅かに身を寄せてきた。
「…でも本当は、狡噛さんに幸子さんを連れ去って欲しかったんだ」
「朱ちゃん…」
自分の事を親身に考えてくれていて、とても信頼のおける、この妹のような後輩に胸が熱くなる。
「大丈夫。慎也と私は離れないよ。絶対に」
「幸子さん…」
「だから…慎也が迎えに来てくれるその日まで、朱ちゃんの側にいさせてね」
「…っ、当たり前だよ!」
ぎゅっと抱きついてきた常守の背中を2、3度擦ってやる。
「さてと、そろそろ私も智己おじさんに逢いに行ってこようかな」
「うん…。私はここで待ってる」
幸子は常守に微笑み、それから建物の中へと歩いていった。