#49 かけがえのない存在
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「なぜ幸子を眠らせた? 彼女にはこの先を見届ける権利があるはずだよ」
気を失った幸子を片手で己の胸にしっかりと抱いた狡噛に言葉を投げる槙島。
「幸子は記憶を失った事で、或いはそれと気づかず貴様と関わった事で、貴様という人間の本質を知ってしまった。この先を見せる必要はない」
それは普通の青年としての顔を知ってしまい少なからず芽生えたであろう、幸子の槙島に対する"情"への配慮。
目の前の男を肯定する気は全くないし、その情にすら嫉妬しているのが事実だ。だが幸子にこれから起こる事を見せるのは気が引けた。
「全てに背を向けてきた君が最後まで手離さずにいた幸子の愛。最後の最後で君はそれを失う道を選ぶのか?」
「失わないさ。俺は幸子と生きる」
きっぱりと言い切った狡噛の言葉に何かが晴れた気がした。
「確かなものを探していた――‥」
再び槙島は前方を見る。
陽はすっかり落ち、夜の冷たさが辺りを支配し始めていた。
「どんなものでもスペアの利くこの世界で、幸子は初めて出逢った唯一の存在だった」
「………」
「おかしいな。君の事を忘れれば、彼女は僕の気持ちに応えてくれると思ったのに」
いや、思ったんじゃない。
――そう願ったんだ。
「人の心はそんなに単純じゃない。真実を無理矢理ねじ曲げたとしても、刻み込まれているんだ。なかった事になんて出来ない。貴様のやり方はこの世界(システム)と変わらない」
「……そうだね」
槙島が頷いた。
「なあ、どうなんだ狡噛。君はこの後、僕の代わりを見つけられるのか?」
「……いいや、もう二度と御免だね」
狡噛はゆっくりとリボルバーを構えた。槙島の後頭部に狙いを定める。
そのままの体勢で暫し動きを止めた。
気を失っている幸子の背中から後頭部に手を回してきつく抱きしめた。
この先 己の心が乾いてしまったとしても、幸子の存在は狡噛に温もりを注ぎ続けるだろう。
ようやく全てに終止符を打てる――‥
そんな想いとは裏腹に、幸子を泣かせてしまう事実に胸が痛んだ。
感情の読めない狡噛の表情。
対する槙島のそれは安らいだ微笑み。
そして狡噛の指はトリガーにかかった――‥
気を失った幸子を片手で己の胸にしっかりと抱いた狡噛に言葉を投げる槙島。
「幸子は記憶を失った事で、或いはそれと気づかず貴様と関わった事で、貴様という人間の本質を知ってしまった。この先を見せる必要はない」
それは普通の青年としての顔を知ってしまい少なからず芽生えたであろう、幸子の槙島に対する"情"への配慮。
目の前の男を肯定する気は全くないし、その情にすら嫉妬しているのが事実だ。だが幸子にこれから起こる事を見せるのは気が引けた。
「全てに背を向けてきた君が最後まで手離さずにいた幸子の愛。最後の最後で君はそれを失う道を選ぶのか?」
「失わないさ。俺は幸子と生きる」
きっぱりと言い切った狡噛の言葉に何かが晴れた気がした。
「確かなものを探していた――‥」
再び槙島は前方を見る。
陽はすっかり落ち、夜の冷たさが辺りを支配し始めていた。
「どんなものでもスペアの利くこの世界で、幸子は初めて出逢った唯一の存在だった」
「………」
「おかしいな。君の事を忘れれば、彼女は僕の気持ちに応えてくれると思ったのに」
いや、思ったんじゃない。
――そう願ったんだ。
「人の心はそんなに単純じゃない。真実を無理矢理ねじ曲げたとしても、刻み込まれているんだ。なかった事になんて出来ない。貴様のやり方はこの世界(システム)と変わらない」
「……そうだね」
槙島が頷いた。
「なあ、どうなんだ狡噛。君はこの後、僕の代わりを見つけられるのか?」
「……いいや、もう二度と御免だね」
狡噛はゆっくりとリボルバーを構えた。槙島の後頭部に狙いを定める。
そのままの体勢で暫し動きを止めた。
気を失っている幸子の背中から後頭部に手を回してきつく抱きしめた。
この先 己の心が乾いてしまったとしても、幸子の存在は狡噛に温もりを注ぎ続けるだろう。
ようやく全てに終止符を打てる――‥
そんな想いとは裏腹に、幸子を泣かせてしまう事実に胸が痛んだ。
感情の読めない狡噛の表情。
対する槙島のそれは安らいだ微笑み。
そして狡噛の指はトリガーにかかった――‥