#49 かけがえのない存在
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槙島の背後には、彼を見下ろすように立つ狡噛と――それに幸子。
感情の読めない表情の狡噛は、手にしたリボルバーを構えようと腕を動かす。案の定その腕は己より小さく白い両手に制された。
「慎也、待って…」
「幸子」
今ここで自分が行動を起こすのを狡噛も槙島も望んでいない。許される事ではないと分かっている。だが、例えそうだとしても譲れなかった。
征陸と宜野座。
それに常守。
皆傷ついてしまった。
何も出来なかった無力な自分を痛感する。
それでも…諦めたくない。
「槙島聖護の身柄は私に預からせて」
「この男を公安局に引き渡す気か…?!」
「そう。彼は自らの犯した罪を生きて償わなくてはいけないから」
「悪人を裁けない法律で、どうやってこの男を罰するというんだ?!」
幸子が止めに入るのは想定内であったが、まさか公安局の上層部に身柄を引き渡そうとするとは。
シビュラに槙島を裁く気がないのは一目瞭然だ。それは幸子も承知していると思っていた。
「……この先、槙島聖護は意思と自由を奪われて生き続ける事になる。それはきっと、彼にとっては何よりも重い罰になる」
幸子の出した結論。
シビュラの仲間になるのを拒む槙島にとって、連中の仲間に成り下がり永遠に近い時を過ごすことは、不本意で堪らない屈辱だろう。
「槙島聖護――あなたを逮捕します」
「言葉と表情が裏腹だね。幸子」
振り返った槙島は薄い笑みを洩らした。
彼の目に映った幸子は苦悩の表情を浮かべていたからだ。
「これもまた狡噛慎也を守る為の覚悟かい?」
「………」
幸子は応えず、意思を秘めたまなざしで狡噛を見つめた。
「お願い慎也…銃を下ろして。……トリガーを引かないで」
リボルバーを持つ手を抑えながら懸命に訴える。
「幸子」
いつの間にか幸子の頬を濡らしていた涙。
骨張った手がそっと幸子の頬に伸び、涙の筋を優しく拭うと顔を上向かせた。そのまま唇を塞ぐ。
「ん、……うっ…」
よく知る唇の感触を感じたのも束の間、不意に項付近に鈍い痛みが走り、ゆっくりと意識が遠退く――。
「慎……也……」
「――愛してる」
低く囁かれた狡噛の言葉を最後に、幸子の意識は途切れた。
感情の読めない表情の狡噛は、手にしたリボルバーを構えようと腕を動かす。案の定その腕は己より小さく白い両手に制された。
「慎也、待って…」
「幸子」
今ここで自分が行動を起こすのを狡噛も槙島も望んでいない。許される事ではないと分かっている。だが、例えそうだとしても譲れなかった。
征陸と宜野座。
それに常守。
皆傷ついてしまった。
何も出来なかった無力な自分を痛感する。
それでも…諦めたくない。
「槙島聖護の身柄は私に預からせて」
「この男を公安局に引き渡す気か…?!」
「そう。彼は自らの犯した罪を生きて償わなくてはいけないから」
「悪人を裁けない法律で、どうやってこの男を罰するというんだ?!」
幸子が止めに入るのは想定内であったが、まさか公安局の上層部に身柄を引き渡そうとするとは。
シビュラに槙島を裁く気がないのは一目瞭然だ。それは幸子も承知していると思っていた。
「……この先、槙島聖護は意思と自由を奪われて生き続ける事になる。それはきっと、彼にとっては何よりも重い罰になる」
幸子の出した結論。
シビュラの仲間になるのを拒む槙島にとって、連中の仲間に成り下がり永遠に近い時を過ごすことは、不本意で堪らない屈辱だろう。
「槙島聖護――あなたを逮捕します」
「言葉と表情が裏腹だね。幸子」
振り返った槙島は薄い笑みを洩らした。
彼の目に映った幸子は苦悩の表情を浮かべていたからだ。
「これもまた狡噛慎也を守る為の覚悟かい?」
「………」
幸子は応えず、意思を秘めたまなざしで狡噛を見つめた。
「お願い慎也…銃を下ろして。……トリガーを引かないで」
リボルバーを持つ手を抑えながら懸命に訴える。
「幸子」
いつの間にか幸子の頬を濡らしていた涙。
骨張った手がそっと幸子の頬に伸び、涙の筋を優しく拭うと顔を上向かせた。そのまま唇を塞ぐ。
「ん、……うっ…」
よく知る唇の感触を感じたのも束の間、不意に項付近に鈍い痛みが走り、ゆっくりと意識が遠退く――。
「慎……也……」
「――愛してる」
低く囁かれた狡噛の言葉を最後に、幸子の意識は途切れた。