#48 麦畑の誓い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「幸子!」
「慎也!」
槙島が去ったのと別方向から狡噛がやって来る。
気を失った常守の頭を膝に乗せながら狡噛の到着を待った。
「慎也、朱ちゃんが…!!」
狡噛が常守を農道まで運んでくれた。
降ろされた常守の泥をハンカチで払おうと幸子は己のスーツのポケットを探るが何処にもない。
「あ、あれ…?!」
「どうした?」
「ハンカチが…」
「これでいいか?」
と狡噛がジャケットのポケットから己のハンカチを取り出し幸子に差し出す。
「ありがとう。借りるね」
受け取ったハンカチで優しく顔を拭ってやる。
多少の擦り傷はあるが、痣にはなっていない。時間が経てば擦り傷も残らないだろう。良かった…。
「全く、幸子も常守監視官も無茶ばかりするな」
様子を見守っていた狡噛の洩らした言葉に思わずくすっと笑ってしまった。当然狡噛は怪訝な顔。
「何かおかしな事を言ったか?」
「だって、そういう慎也がいつも一番無茶ばかりするんだもん」
言えば、それもそうかと狡噛も小さく笑みを溢した。
「慎也、ハンカチありがとう。自分のを無くしちゃったみたいで。…参ったな。大切にしてたのに……」
「これの事か?」
と、狡噛がジャケットの内ポケットから丁寧に取り出したのは、見覚えある菖蒲の刺繍が施されたハンカチだった。
「あっ、それ! 慎也が拾ってくれてたんだね。良かった…」
「これ、まだ使っていたんだな」
「当たり前だよ。慎也からのプレゼントだもん」
「そうか」
「そうだよ。でも、何処に落ちてたの?」
「……それより、もう落とすなよ」
「う、うん。ありがとう」
歯切れの悪い狡噛を不思議に思いながらも受け取ろうとして、幸子は伸ばしかけた手を引っ込めた。
「やっぱりいい。慎也が持ってて」
「幸子?」
「絶対に返してね。大切な人から貰った、すごく大切なものなの」
菖蒲の花言葉は――"良い便り"
これを狡噛に託す事で、共に歩む未来への願いを、そっと忍ばせた。
「………分かった。俺が預かる。必ず幸子に返すよ」
「うん、約束」
「ああ。約束だ」
暫し見つめ合った後、2人はそうするのが自然なように身を寄せあった。
逞しい腕が幸子の背中に伸び、隙間なく密着するよう強く抱きしめてくる。
「離れたくない……」
「……離さないさ」
風がそよぎ、狡噛と幸子の髪と、そして黄金色の穂を揺らした。
「慎也!」
槙島が去ったのと別方向から狡噛がやって来る。
気を失った常守の頭を膝に乗せながら狡噛の到着を待った。
「慎也、朱ちゃんが…!!」
狡噛が常守を農道まで運んでくれた。
降ろされた常守の泥をハンカチで払おうと幸子は己のスーツのポケットを探るが何処にもない。
「あ、あれ…?!」
「どうした?」
「ハンカチが…」
「これでいいか?」
と狡噛がジャケットのポケットから己のハンカチを取り出し幸子に差し出す。
「ありがとう。借りるね」
受け取ったハンカチで優しく顔を拭ってやる。
多少の擦り傷はあるが、痣にはなっていない。時間が経てば擦り傷も残らないだろう。良かった…。
「全く、幸子も常守監視官も無茶ばかりするな」
様子を見守っていた狡噛の洩らした言葉に思わずくすっと笑ってしまった。当然狡噛は怪訝な顔。
「何かおかしな事を言ったか?」
「だって、そういう慎也がいつも一番無茶ばかりするんだもん」
言えば、それもそうかと狡噛も小さく笑みを溢した。
「慎也、ハンカチありがとう。自分のを無くしちゃったみたいで。…参ったな。大切にしてたのに……」
「これの事か?」
と、狡噛がジャケットの内ポケットから丁寧に取り出したのは、見覚えある菖蒲の刺繍が施されたハンカチだった。
「あっ、それ! 慎也が拾ってくれてたんだね。良かった…」
「これ、まだ使っていたんだな」
「当たり前だよ。慎也からのプレゼントだもん」
「そうか」
「そうだよ。でも、何処に落ちてたの?」
「……それより、もう落とすなよ」
「う、うん。ありがとう」
歯切れの悪い狡噛を不思議に思いながらも受け取ろうとして、幸子は伸ばしかけた手を引っ込めた。
「やっぱりいい。慎也が持ってて」
「幸子?」
「絶対に返してね。大切な人から貰った、すごく大切なものなの」
菖蒲の花言葉は――"良い便り"
これを狡噛に託す事で、共に歩む未来への願いを、そっと忍ばせた。
「………分かった。俺が預かる。必ず幸子に返すよ」
「うん、約束」
「ああ。約束だ」
暫し見つめ合った後、2人はそうするのが自然なように身を寄せあった。
逞しい腕が幸子の背中に伸び、隙間なく密着するよう強く抱きしめてくる。
「離れたくない……」
「……離さないさ」
風がそよぎ、狡噛と幸子の髪と、そして黄金色の穂を揺らした。