#48 麦畑の誓い
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瞬間。槙島の靴と常守の頭の間に幸子の体が割り入り、常守を庇うように覆い被さった。
「?!――」
反射的に力を緩めはしたが勢いは止まらず、槙島の足は彼女の背中を直撃する。
「ああっ!」
加減したとはいえ、常人に比べれば遥かに重い垂直蹴りを受け、幸子は痛みに悲鳴を上げた。苦しさに一瞬息が詰まる。
「幸子、さん……!!」
「大丈夫だよ、朱ちゃん」
悲痛な表情の常守を安心させるように優しく微笑んでみせた。
「幸子、そこを退くんだ」
「いや。これ以上あなたに誰も傷つけさせない!」
槙島は暫く無言で幸子を見つめていたが、徐に常守の落としたリボルバーを拾い上げ、構えた。
銃口は幸子に向けられ それからゆっくりと動き、倒れている常守のこめかみ付近を狙った。
「幸子さん、逃げて…」
「朱ちゃんを置いて逃げるなんて、そんな事出来ないよ。絶対にしない」
幸子は彼女の頭を優しく撫でながら首を横に振る。常守の瞳に じわりと涙の膜が張った。
幸子が槙島を振り返ると、銃口は相変わらず常守を狙っているにも関わらず、その目は他ならぬ幸子を捕えていた。
「聖護……もうやめて…。人を傷つければ、傷つけた分だけあなた自身も傷ついているんだよ」
「おかしな事を言うね。僕が傷ついているだなんて」
「気づいてないだけ。現にあなたはこの世界(システム)に苦しんでいる」
「………」
槙島と幸子の瞳が交差する。
二度目の静寂。
そして槙島はトリガーを引いた。
リボルバーは常守を撃ち抜くでもなく、カチッと音を立てたにすぎなかったが、その音は、紛れもなく槙島の中で引き金になったに違いなかった。
「………そうか……君が」
呟いた槙島はリボルバーを捨てると、幸子と常守を置き去りにしたまま麦畑の中へと足早に消えていった。
かなりの怪我をしている。
遠くには逃げられないだろう。
「幸子!」
彼を追うべきか迷っている幸子の耳に聞こえてきたのは――愛しい人の声。
「?!――」
反射的に力を緩めはしたが勢いは止まらず、槙島の足は彼女の背中を直撃する。
「ああっ!」
加減したとはいえ、常人に比べれば遥かに重い垂直蹴りを受け、幸子は痛みに悲鳴を上げた。苦しさに一瞬息が詰まる。
「幸子、さん……!!」
「大丈夫だよ、朱ちゃん」
悲痛な表情の常守を安心させるように優しく微笑んでみせた。
「幸子、そこを退くんだ」
「いや。これ以上あなたに誰も傷つけさせない!」
槙島は暫く無言で幸子を見つめていたが、徐に常守の落としたリボルバーを拾い上げ、構えた。
銃口は幸子に向けられ それからゆっくりと動き、倒れている常守のこめかみ付近を狙った。
「幸子さん、逃げて…」
「朱ちゃんを置いて逃げるなんて、そんな事出来ないよ。絶対にしない」
幸子は彼女の頭を優しく撫でながら首を横に振る。常守の瞳に じわりと涙の膜が張った。
幸子が槙島を振り返ると、銃口は相変わらず常守を狙っているにも関わらず、その目は他ならぬ幸子を捕えていた。
「聖護……もうやめて…。人を傷つければ、傷つけた分だけあなた自身も傷ついているんだよ」
「おかしな事を言うね。僕が傷ついているだなんて」
「気づいてないだけ。現にあなたはこの世界(システム)に苦しんでいる」
「………」
槙島と幸子の瞳が交差する。
二度目の静寂。
そして槙島はトリガーを引いた。
リボルバーは常守を撃ち抜くでもなく、カチッと音を立てたにすぎなかったが、その音は、紛れもなく槙島の中で引き金になったに違いなかった。
「………そうか……君が」
呟いた槙島はリボルバーを捨てると、幸子と常守を置き去りにしたまま麦畑の中へと足早に消えていった。
かなりの怪我をしている。
遠くには逃げられないだろう。
「幸子!」
彼を追うべきか迷っている幸子の耳に聞こえてきたのは――愛しい人の声。