#45 父子
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最初に視界に入ってきたのは床に横たわる征陸の姿だった。
「智己おじさん……!!」
ハッと口元を抑えた。直視するのが辛いのに…目を逸らす事が出来ない。
頭部にも重傷を負う征陸は虫の息で、見るからに手の施しようがなかった。
「……っ…く、…!!」
それでも宜野座は荒い息を吐きながら死にもの狂いでコンテナの下から脱出すると、血まみれの腕を抱えたままふらふらと征陸に近づき、がくりと崩おれた。
「!……っ…」
ワナワナと震える手で征陸に触れた宜野座がこちらを向いた。
いつものツンとした雰囲気など微塵もない。すがりつく幼子のような瞳には、ただ悲しみが湛えられていた。
「っ、伸元……」
征陸に向き直り、頭部の出血に手を添える宜野座の震える背中に涙が溢れた。
何も出来ないが、宜野座の傍にいてあげたい。
そう思い動こうとした幸子の腕が何者かに拘束され、立ち上がらせるようにグイッと上に引かれた。
「……っ、離して…!!」
「水を注すものじゃない」
幸子の腕を捕らえたままで槙島が笑う。この場に似つかわしくないその表情に反発するように、幸子は涙を流したままキッと彼を睨みつけた。
その瞬間、発砲音が響き銃弾が槙島の髪を掠めた。
「追いついて来たか」
「?!! ……あっ!」
この銃弾を撃ったのは――?!
思い浮かんだ人物を掻き消すように、拘束されたままでいた腕を強く引かれてその場から連れ去られた。
「伸元!!」
遠ざかる小さな背中に向かって叫ぶ。
槙島の手により走る事を強要されながら、幸子の脳裏に浮かぶのは…先程の宜野座の表情だった。
どうしていいか分からずすがりついてくるような…そんな悲しみと絶望を滲ませたもの。
過去に一度だけ――宜野座のあんな表情を目にした事がある。
あれは――そうだ。征陸が潜在犯に認定された時。
『幸子。父さん……もう帰って来ないんだ』
『伸元…?』
『父さんと一緒に遊んだり出かけたりするのは、もう出来ないんだって』
幼い宜野座は寂しそうに言って抱えた膝に顔を埋めた。
幼心にも彼の悲しみが犇々と伝わってきて、幸子は必死で彼の手を握り続けた。
(伸元…傍にいてあげられなくて、本当にごめんなさい…)
刑事という職業柄、常にある程度の覚悟はしている。
それでも幼なじみとその父親の早すぎる辛い別れに、流れる涙を止める術がなかった。
「智己おじさん……!!」
ハッと口元を抑えた。直視するのが辛いのに…目を逸らす事が出来ない。
頭部にも重傷を負う征陸は虫の息で、見るからに手の施しようがなかった。
「……っ…く、…!!」
それでも宜野座は荒い息を吐きながら死にもの狂いでコンテナの下から脱出すると、血まみれの腕を抱えたままふらふらと征陸に近づき、がくりと崩おれた。
「!……っ…」
ワナワナと震える手で征陸に触れた宜野座がこちらを向いた。
いつものツンとした雰囲気など微塵もない。すがりつく幼子のような瞳には、ただ悲しみが湛えられていた。
「っ、伸元……」
征陸に向き直り、頭部の出血に手を添える宜野座の震える背中に涙が溢れた。
何も出来ないが、宜野座の傍にいてあげたい。
そう思い動こうとした幸子の腕が何者かに拘束され、立ち上がらせるようにグイッと上に引かれた。
「……っ、離して…!!」
「水を注すものじゃない」
幸子の腕を捕らえたままで槙島が笑う。この場に似つかわしくないその表情に反発するように、幸子は涙を流したままキッと彼を睨みつけた。
その瞬間、発砲音が響き銃弾が槙島の髪を掠めた。
「追いついて来たか」
「?!! ……あっ!」
この銃弾を撃ったのは――?!
思い浮かんだ人物を掻き消すように、拘束されたままでいた腕を強く引かれてその場から連れ去られた。
「伸元!!」
遠ざかる小さな背中に向かって叫ぶ。
槙島の手により走る事を強要されながら、幸子の脳裏に浮かぶのは…先程の宜野座の表情だった。
どうしていいか分からずすがりついてくるような…そんな悲しみと絶望を滲ませたもの。
過去に一度だけ――宜野座のあんな表情を目にした事がある。
あれは――そうだ。征陸が潜在犯に認定された時。
『幸子。父さん……もう帰って来ないんだ』
『伸元…?』
『父さんと一緒に遊んだり出かけたりするのは、もう出来ないんだって』
幼い宜野座は寂しそうに言って抱えた膝に顔を埋めた。
幼心にも彼の悲しみが犇々と伝わってきて、幸子は必死で彼の手を握り続けた。
(伸元…傍にいてあげられなくて、本当にごめんなさい…)
刑事という職業柄、常にある程度の覚悟はしている。
それでも幼なじみとその父親の早すぎる辛い別れに、流れる涙を止める術がなかった。