#44 研究室にて
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俗にいう標本事件以来、狡噛はずっと闇を見つめてきた。
あの日佐々山を行かせてしまった自分を、手綱を離してしまった自分を責め、今も背負い続けている。
槙島をその手にかければ彼の悲願は成就するのかもしれない。だが、狡噛はまた新たな闇を抱える事になるのだ。
人を殺めた罪(とが)を。
(もうこれ以上、慎也に苦しんで欲しくない…!!)
――そう考えると同時に、目の前の男に対する感情の変化も感じられて。
「……慎也にあなたを殺させはしない」
「ん?」
槙島の目が興味深く幸子を映す。
「あなたが抱えてきた孤独は……きっと私なんて想像も及ばないものなんだと思う」
桜霜学園で互いに偽りの自分として出逢った初対面。それから彼に捕らわれ、会話を交わす内に、犯罪者ではない普通の青年としての姿も垣間見た。
槙島はきっと純粋な人だ。
それ故、免罪体質というある意味で恵まれたサイコパスを利用するのではなく、逆に傷つき疎外感を覚えてしまった。シビュラの支配する世界に疑問を持ってしまったのだ。
「……でも他人を捲き込むやり方は間違ってる。あなたは生きて、きちんと罪を償わないといけない」
「だから僕をシビュラに差し出すのかい?」
パタン…と読んでいた本を閉じた。
「それであの男は納得するのかな。君は狡噛の全てを肯定しているんじゃなかったのかい?」
「慎也の全てを愛してる。だからこそ、間違った道に進むのを止めたい」
「彼の信念を挫いても?」
「どんな理由があっても、人が人を殺すなんて絶対にしてはいけないんだよ」
「……君は本当に面白い」
背もたれに深く凭れかかりながら槙島は薄い笑みを浮かべた。
「それで? どうするつもりだい、幸子。もうすぐ変質ウカノミタマも完成する。そして狡噛慎也もやって来る。お前はお前の信念をどう貫くつもりだ?」
「こうするつもり!」
立ち上がった幸子は素早い動きでパソコンへ手を伸ばした。
あの日佐々山を行かせてしまった自分を、手綱を離してしまった自分を責め、今も背負い続けている。
槙島をその手にかければ彼の悲願は成就するのかもしれない。だが、狡噛はまた新たな闇を抱える事になるのだ。
人を殺めた罪(とが)を。
(もうこれ以上、慎也に苦しんで欲しくない…!!)
――そう考えると同時に、目の前の男に対する感情の変化も感じられて。
「……慎也にあなたを殺させはしない」
「ん?」
槙島の目が興味深く幸子を映す。
「あなたが抱えてきた孤独は……きっと私なんて想像も及ばないものなんだと思う」
桜霜学園で互いに偽りの自分として出逢った初対面。それから彼に捕らわれ、会話を交わす内に、犯罪者ではない普通の青年としての姿も垣間見た。
槙島はきっと純粋な人だ。
それ故、免罪体質というある意味で恵まれたサイコパスを利用するのではなく、逆に傷つき疎外感を覚えてしまった。シビュラの支配する世界に疑問を持ってしまったのだ。
「……でも他人を捲き込むやり方は間違ってる。あなたは生きて、きちんと罪を償わないといけない」
「だから僕をシビュラに差し出すのかい?」
パタン…と読んでいた本を閉じた。
「それであの男は納得するのかな。君は狡噛の全てを肯定しているんじゃなかったのかい?」
「慎也の全てを愛してる。だからこそ、間違った道に進むのを止めたい」
「彼の信念を挫いても?」
「どんな理由があっても、人が人を殺すなんて絶対にしてはいけないんだよ」
「……君は本当に面白い」
背もたれに深く凭れかかりながら槙島は薄い笑みを浮かべた。
「それで? どうするつもりだい、幸子。もうすぐ変質ウカノミタマも完成する。そして狡噛慎也もやって来る。お前はお前の信念をどう貫くつもりだ?」
「こうするつもり!」
立ち上がった幸子は素早い動きでパソコンへ手を伸ばした。