#44 研究室にて
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「……『イエスは、別の例えを持ち出して言われた』……『天の国は次のように例えられる。ある人が良い種を畑に蒔いた。人々が眠っている間に、敵が来て、麦の中に毒麦を蒔いて行った』」
マタイによる福音書。その一節を読み終え、何とも様になる優雅な動作で頁を捲る。
フル稼働する眼前のコンピュータを一瞥すると、無表情だった槙島の口元には笑みが表れた。
この作業が終われば間もなくこの世界(システム)は崩壊する。どうする――狡噛慎也?
「……やめて」
隣席からかけられた声。
槙島は待っていたとばかりに膝上に本を置き、悲痛な顔で己を見ている幸子をあやすように黒髪を撫でてやる。
「口内の痺れが消えたようだね」
「お願い……もうやめて……」
「心配いらないよ。世界が正常に戻るだけさ」
世界(システム)が壊れ、本来の姿を取り戻す――それだけのこと。
「狡噛慎也も直に現れる」
「?!――」
不意に飛び出した狡噛の名に幸子はびくりと反応を示した。
その態度に僅かな不快感を覚える。これが"嫉妬"…というものなのだろうか。
「彼は君が僕と行動を共にしていると気づいているはずだ。…菅巻の自宅に分かりやすいヒントを残してきたからね」
「っ、…慎也…?!」
「狡噛は僕を殺し、君を取り戻しにここへ来る。変質ウカノミタマの散布が早いか、彼が僕を仕留めるのが早いか…。君はどちらが先だと思う? ――幸子」
「!……(私は――‥)」
目の前に迫りくる現実に幸子はこくりと喉を鳴らした。
マタイによる福音書。その一節を読み終え、何とも様になる優雅な動作で頁を捲る。
フル稼働する眼前のコンピュータを一瞥すると、無表情だった槙島の口元には笑みが表れた。
この作業が終われば間もなくこの世界(システム)は崩壊する。どうする――狡噛慎也?
「……やめて」
隣席からかけられた声。
槙島は待っていたとばかりに膝上に本を置き、悲痛な顔で己を見ている幸子をあやすように黒髪を撫でてやる。
「口内の痺れが消えたようだね」
「お願い……もうやめて……」
「心配いらないよ。世界が正常に戻るだけさ」
世界(システム)が壊れ、本来の姿を取り戻す――それだけのこと。
「狡噛慎也も直に現れる」
「?!――」
不意に飛び出した狡噛の名に幸子はびくりと反応を示した。
その態度に僅かな不快感を覚える。これが"嫉妬"…というものなのだろうか。
「彼は君が僕と行動を共にしていると気づいているはずだ。…菅巻の自宅に分かりやすいヒントを残してきたからね」
「っ、…慎也…?!」
「狡噛は僕を殺し、君を取り戻しにここへ来る。変質ウカノミタマの散布が早いか、彼が僕を仕留めるのが早いか…。君はどちらが先だと思う? ――幸子」
「!……(私は――‥)」
目の前に迫りくる現実に幸子はこくりと喉を鳴らした。