#44 研究室にて
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一面の麦畑だった。
陽射しと相まって輝く黄金色が、見えるもの全てを一色に染め上げていた。その中を槙島は鼻歌混じりに悠然と歩く。
柔らかい風が槙島と、その腕に姫抱きにされた幸子の髪を揺らす。
「――‥?!」
腕の中の幸子が寝返りをうつように小さく動いたのを感じて槙島は彼女に視線を向けた。
ゆっくりと…微睡みから覚醒するように目を開ける幸子。
「目覚めたかい?」
「……こ……」
ここは一体何処なの!?
――そう続けようとするも口内に痺れるような感覚が走り上手く言葉に出来なかった。
「まだ喋りにくいかな」
「あ……」
「少し強い睡眠薬だったからね。あと数時間は倦怠感が残るはずだよ」
悪びれた様子は微塵もない槙島の微笑みを見上げながら幸子は眠っていた間の記憶を辿る。
槙島を捕らえようとして逆に捕らわれてしまった後、急激な眠気を感じて抗えずに眠りに落ちていった。おそらく口づけられた時に睡眠薬を飲まされたのだ。
それからの記憶はない。気づいたら槙島の腕に抱かれてこの一面の麦畑の中を歩いていた。
「ど、こ……へ…?」
「ウカノミタマ・ウイルス生産工場さ」
「――?!!」
白い肌が瞬時に青ざめる。
どうやら槙島は、セーフハウスで話した事を本気で行動に移すつもりだ。
(早く止めないと――!!)
焦る気持ちとは裏腹に体は言う事をきかず、そうこうしている内に工場へ到着してしまった。
槙島は回り込んで工場と隣接する出雲大学・農学部キャンパスへ歩いていく。
校舎の一角にある菅巻の研究室前に着くと、槙島は一旦幸子を降ろした。
「立てるかい?」
まだ薬の影響で足元が覚束ない幸子を片手で支えながら、地面に置いたバッグを開けた。そして口元を歪めながらバッグの中のクーラーボックスから何かを取り出し、研究室のドアに付属しているロックシステムに当てた。
音もなく開くドア――。
「……っ」
その正体が何なのか解り幸子は思わず目を逸らした。
また一人…犠牲者を出してしまった。刑事でありながら、なんと自分は無力なのか…!
「『嘆き喚くことなんか、オペラの役者にまかせておけばいいのさ』――」
「?!――」
「幸子、自分を責める必要はないよ」
ニーチェの作品の一文を引用した槙島は彼女の髪を優しく撫で鋤いた。
そして再び彼女を抱き上げ研究室に侵入する。
実験室のパソコンを起動させればマニピュレーター類が息を吹き返した。
幸子を椅子に座らせ、その隣…パソコンの真正面の席に自身も着く。
「さて、……始めようか」
陽射しと相まって輝く黄金色が、見えるもの全てを一色に染め上げていた。その中を槙島は鼻歌混じりに悠然と歩く。
柔らかい風が槙島と、その腕に姫抱きにされた幸子の髪を揺らす。
「――‥?!」
腕の中の幸子が寝返りをうつように小さく動いたのを感じて槙島は彼女に視線を向けた。
ゆっくりと…微睡みから覚醒するように目を開ける幸子。
「目覚めたかい?」
「……こ……」
ここは一体何処なの!?
――そう続けようとするも口内に痺れるような感覚が走り上手く言葉に出来なかった。
「まだ喋りにくいかな」
「あ……」
「少し強い睡眠薬だったからね。あと数時間は倦怠感が残るはずだよ」
悪びれた様子は微塵もない槙島の微笑みを見上げながら幸子は眠っていた間の記憶を辿る。
槙島を捕らえようとして逆に捕らわれてしまった後、急激な眠気を感じて抗えずに眠りに落ちていった。おそらく口づけられた時に睡眠薬を飲まされたのだ。
それからの記憶はない。気づいたら槙島の腕に抱かれてこの一面の麦畑の中を歩いていた。
「ど、こ……へ…?」
「ウカノミタマ・ウイルス生産工場さ」
「――?!!」
白い肌が瞬時に青ざめる。
どうやら槙島は、セーフハウスで話した事を本気で行動に移すつもりだ。
(早く止めないと――!!)
焦る気持ちとは裏腹に体は言う事をきかず、そうこうしている内に工場へ到着してしまった。
槙島は回り込んで工場と隣接する出雲大学・農学部キャンパスへ歩いていく。
校舎の一角にある菅巻の研究室前に着くと、槙島は一旦幸子を降ろした。
「立てるかい?」
まだ薬の影響で足元が覚束ない幸子を片手で支えながら、地面に置いたバッグを開けた。そして口元を歪めながらバッグの中のクーラーボックスから何かを取り出し、研究室のドアに付属しているロックシステムに当てた。
音もなく開くドア――。
「……っ」
その正体が何なのか解り幸子は思わず目を逸らした。
また一人…犠牲者を出してしまった。刑事でありながら、なんと自分は無力なのか…!
「『嘆き喚くことなんか、オペラの役者にまかせておけばいいのさ』――」
「?!――」
「幸子、自分を責める必要はないよ」
ニーチェの作品の一文を引用した槙島は彼女の髪を優しく撫で鋤いた。
そして再び彼女を抱き上げ研究室に侵入する。
実験室のパソコンを起動させればマニピュレーター類が息を吹き返した。
幸子を椅子に座らせ、その隣…パソコンの真正面の席に自身も着く。
「さて、……始めようか」