#06 スケープゴートの刃
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常守は外来駐車場で執行官達の作業を見守っていた。
「持ち合わせのケーブルは……200メートル分か」
携帯端末に表示されたホログラムの施設見取り図を真剣に眺めながら、狡噛は一人言のように呟く。
「裏口から引き込んだとしても…二階のエレベーターホールまで届かせるのが限度だな」
「そこまで金原の野郎を引っ張り出せるかい?」
「やるだけはやってみよう」
狡噛と縢の会話を聞きながら いささか不安になってきたのか、常守は恐る恐る尋ねる。
「金原さんには、その……話をするだけなんですよね?」
「ああ」
と まだ熱心にホログラムを見つめながら上の空で頷いた狡噛であったが、ふと気づいたように顔を上げて常守を見た。
「監視官。木梨はどこへ行った?」
「あの…その…」
「なんだ?」
なんだかはっきりしない様子の常守に、狡噛は怪訝そうに聞く。
「……に…行くって…」
「聞こえないぞ、監視官」
「だ、だから……トイレに行きました!」
「!」
常守からしてみれば、幸子が女性であるが故に なんとなく言いにくい行き先だったのだろう。しかしそれを聞いた途端、狡噛の目は施設の見取り図へ移動していた。
(幸子…)
忘れていた訳ではない。
忘れていた訳ではなかったのに。
監視官時代から変わらない幸子の性格を。
ちっと舌打ちしてホログラムを消した狡噛。
常守は戸惑ったように狡噛の携帯端末から彼の顔に視線を移した。
「狡噛さん…?」
「行くぞ」
「ど、どこですか?」
「トイレだ」
愕然とした。こうして狡噛の行動や発言に驚かされるのは何回目だろう。
「な、なに言ってるんですか!? そんな事が許されるとでも――」
「食堂でのことを考えてみろ」
「……へっ!?」
「金原をからかっていた工員達は何と言っていた?」
問いかけられて思い返す。工員は確か――
『黄緑野郎。今日もまた優雅に個室でランチかい?』
「個室でランチ…」
「ほとんどが無人の工場施設で、工員に個室を与えられるだけの場所が確保されていると思うか?」
常守は肝が冷えた。
色相さえも明るみになるプライバシーの薄い施設で唯一一人になれる所など一ヵ所しか思い浮かばない。
「まさか幸子さん……」
「木梨は金原に会いに行ったんだ」
判りきっていたはずの答えであった。
なのに常守は、狡噛の言葉に杭で打たれるような衝撃を受けた。
「持ち合わせのケーブルは……200メートル分か」
携帯端末に表示されたホログラムの施設見取り図を真剣に眺めながら、狡噛は一人言のように呟く。
「裏口から引き込んだとしても…二階のエレベーターホールまで届かせるのが限度だな」
「そこまで金原の野郎を引っ張り出せるかい?」
「やるだけはやってみよう」
狡噛と縢の会話を聞きながら いささか不安になってきたのか、常守は恐る恐る尋ねる。
「金原さんには、その……話をするだけなんですよね?」
「ああ」
と まだ熱心にホログラムを見つめながら上の空で頷いた狡噛であったが、ふと気づいたように顔を上げて常守を見た。
「監視官。木梨はどこへ行った?」
「あの…その…」
「なんだ?」
なんだかはっきりしない様子の常守に、狡噛は怪訝そうに聞く。
「……に…行くって…」
「聞こえないぞ、監視官」
「だ、だから……トイレに行きました!」
「!」
常守からしてみれば、幸子が女性であるが故に なんとなく言いにくい行き先だったのだろう。しかしそれを聞いた途端、狡噛の目は施設の見取り図へ移動していた。
(幸子…)
忘れていた訳ではない。
忘れていた訳ではなかったのに。
監視官時代から変わらない幸子の性格を。
ちっと舌打ちしてホログラムを消した狡噛。
常守は戸惑ったように狡噛の携帯端末から彼の顔に視線を移した。
「狡噛さん…?」
「行くぞ」
「ど、どこですか?」
「トイレだ」
愕然とした。こうして狡噛の行動や発言に驚かされるのは何回目だろう。
「な、なに言ってるんですか!? そんな事が許されるとでも――」
「食堂でのことを考えてみろ」
「……へっ!?」
「金原をからかっていた工員達は何と言っていた?」
問いかけられて思い返す。工員は確か――
『黄緑野郎。今日もまた優雅に個室でランチかい?』
「個室でランチ…」
「ほとんどが無人の工場施設で、工員に個室を与えられるだけの場所が確保されていると思うか?」
常守は肝が冷えた。
色相さえも明るみになるプライバシーの薄い施設で唯一一人になれる所など一ヵ所しか思い浮かばない。
「まさか幸子さん……」
「木梨は金原に会いに行ったんだ」
判りきっていたはずの答えであった。
なのに常守は、狡噛の言葉に杭で打たれるような衝撃を受けた。