#39 逃亡後
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一係オフィスはただならぬ雰囲気に包まれていた。
宜野座と幸子が現れると、自然と一同の目が2人に注がれた。
「もう、全員に連絡がいったと思うが……狡噛が逃亡した。奴は槙島を追うだろう。我々も追いかける」
極力感情を抑えながら宜野座は厳しい表情で告げた。つまり槙島を追い詰めていけば狡噛とは自然と再会できるということ。
幸子の脳裏にあの日、槙島からかかってきた一本の電話が甦った。
『待っているよ、幸子。現れないのなら、腸を引き裂いて迎えにいくまでだ』
槙島から指定された場所。
或いはそこに行き、狡噛より先に槙島と会えれば――狡噛と槙島。2人を止める事が出来るのだろうか?
「幸子」
「あっ、は、はい」
「悪ぃがちょいと休憩に付き合ってくれねぇか?」
宜野座からの説明が終わり各々が仕事に戻ったのを見計らい、征陸が話しかけてきた。
おそらくセーフハウスの件だろうと悟り、幸子はそれを了承した。
ほんの30分程前まで宜野座と会話を交わしていた休憩所に今度は征陸とやって来た。
自販機で缶コーヒーを買い、並んでベンチに腰を下ろす。
「逢って来たのか?」
「……はい」
主語はなくとも意味は伝わる。
答えがイエスだと知り征陸は驚いたようだ。目を丸くしている。
「驚いたな。幸子、お前さんに何か事情があるのは察していたが……俺はお前が戻って来ねぇだろうと践んでいたんだ」
「えっ…?!」
「戻ると言ってもコウが引き留める。お前はそれに従う……そう思ってた」
俺の推理もまだまだだな、と征陸は笑いながら缶コーヒーを一口飲んだ。
「そんな…。戻りますよ。……私は、公安局の刑事だから……」
「やっぱりらしくねぇな」
両手で缶コーヒーを握りしめている幸子の様子を征陸はじっと伺い思案する。
幸子を縛りつけるのは公安局の上層部か。この娘から笑顔を奪う連中に穏やかでない感情が込み上げる。
「そんなしがらみ捨てちまえ」
「智己おじさん……?!」
「まだ遅くはねぇ。次に逢ったらコウと行け。
全て終わった後にコウを支えてやれるのは 幸子、お前しかいねぇんだから」
「!……」
征陸はそう言って缶コーヒーを一気に飲み干した。
ゴミ箱目掛けて空き缶を放ると、缶はヒュッと弧を描いてゴミ箱に収まった。
「おじさん、私…」
「なあ幸子よ。幸せになれ。俗に言う幸せじゃなく、お前自身がそれと感じる幸せにな」
征陸の心が伝わる。
心配しながらも、ちゃんと幸子の本心を理解していてくれるのがとても有り難い。
「……ありがとう、智己おじさん」
ポンと優しく頭に大きな手がのった。
宜野座と幸子が現れると、自然と一同の目が2人に注がれた。
「もう、全員に連絡がいったと思うが……狡噛が逃亡した。奴は槙島を追うだろう。我々も追いかける」
極力感情を抑えながら宜野座は厳しい表情で告げた。つまり槙島を追い詰めていけば狡噛とは自然と再会できるということ。
幸子の脳裏にあの日、槙島からかかってきた一本の電話が甦った。
『待っているよ、幸子。現れないのなら、腸を引き裂いて迎えにいくまでだ』
槙島から指定された場所。
或いはそこに行き、狡噛より先に槙島と会えれば――狡噛と槙島。2人を止める事が出来るのだろうか?
「幸子」
「あっ、は、はい」
「悪ぃがちょいと休憩に付き合ってくれねぇか?」
宜野座からの説明が終わり各々が仕事に戻ったのを見計らい、征陸が話しかけてきた。
おそらくセーフハウスの件だろうと悟り、幸子はそれを了承した。
ほんの30分程前まで宜野座と会話を交わしていた休憩所に今度は征陸とやって来た。
自販機で缶コーヒーを買い、並んでベンチに腰を下ろす。
「逢って来たのか?」
「……はい」
主語はなくとも意味は伝わる。
答えがイエスだと知り征陸は驚いたようだ。目を丸くしている。
「驚いたな。幸子、お前さんに何か事情があるのは察していたが……俺はお前が戻って来ねぇだろうと践んでいたんだ」
「えっ…?!」
「戻ると言ってもコウが引き留める。お前はそれに従う……そう思ってた」
俺の推理もまだまだだな、と征陸は笑いながら缶コーヒーを一口飲んだ。
「そんな…。戻りますよ。……私は、公安局の刑事だから……」
「やっぱりらしくねぇな」
両手で缶コーヒーを握りしめている幸子の様子を征陸はじっと伺い思案する。
幸子を縛りつけるのは公安局の上層部か。この娘から笑顔を奪う連中に穏やかでない感情が込み上げる。
「そんなしがらみ捨てちまえ」
「智己おじさん……?!」
「まだ遅くはねぇ。次に逢ったらコウと行け。
全て終わった後にコウを支えてやれるのは 幸子、お前しかいねぇんだから」
「!……」
征陸はそう言って缶コーヒーを一気に飲み干した。
ゴミ箱目掛けて空き缶を放ると、缶はヒュッと弧を描いてゴミ箱に収まった。
「おじさん、私…」
「なあ幸子よ。幸せになれ。俗に言う幸せじゃなく、お前自身がそれと感じる幸せにな」
征陸の心が伝わる。
心配しながらも、ちゃんと幸子の本心を理解していてくれるのがとても有り難い。
「……ありがとう、智己おじさん」
ポンと優しく頭に大きな手がのった。