#37 征陸の親心
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油絵の具やキャンバス等の画材の匂いが漂う部屋に案内した征陸は、何があったのか問いかけようと振り返る。
「幸子、一体何が――」
「慎也はどこ?」
言い終わる前に矢継ぎ早に質問をされた。
握りしめられたボイスレコーダー。そして再び涙の滲み出した瞳が征陸にある確信を抱かせた。
「記憶が戻ったのか?」
こくりと頷くと、征陸は近くのソファにドッカと腰を下ろし、手のひらを目の前にかざして大きな溜め息をついた。
「なんてこった…」
寄りにもよって狡噛の去った今に記憶が戻るとは。
「智己おじさんは知ってるんでしょ? 慎也の居場所を」
腰を下ろした征陸の斜め正面に立ち、涙混じりの声で尋ねる幸子。
彼女に真実を告げるのは簡単だ。だが彼女を案じ独り姿を消した狡噛を思えば躊躇いもある。
「なあ、幸子。コウの居場所を知ってお前はどうする? あいつの後を追って公安局を去るか?」
幸子はふるふると首を横に振った。
「……私は公安局を離れられない」
「?……」
最初それは刑事としての決意の表れに感じた。だが 幸子の顔に射す暗い影に征陸は考えを改めた。
「警視庁時代に用意していたセーフハウスだ。そこにコウはいる」
「智己おじさん…!!」
「公安局を離れられないのは勤務中の話だろ。非番にお前さんが何処で何をしていようと誰もとやかく言う権利はねぇさ」
「!?……」
征陸は立ち上がり、俯いたままの幸子の頭を大きな手のひらで撫でた。
「幸子…お前の事は小さい頃からよく知っている。娘のようなモンだ。俺が潜在犯の認定を受けた後も ずっと伸元の側にいてくれたこと、感謝してるぜ」
「智己おじさん……」
ぐすっと鼻を鳴らすと、征陸は二、三度優しく幸子の頭をぽんぽんと叩いた。
この娘が一人息子と一緒になってくれたらどんなに嬉しかっただろう。…彼女に押し付ける気もない親の勝手な気持ちだ。
「コウによろしくな」
「幸子、一体何が――」
「慎也はどこ?」
言い終わる前に矢継ぎ早に質問をされた。
握りしめられたボイスレコーダー。そして再び涙の滲み出した瞳が征陸にある確信を抱かせた。
「記憶が戻ったのか?」
こくりと頷くと、征陸は近くのソファにドッカと腰を下ろし、手のひらを目の前にかざして大きな溜め息をついた。
「なんてこった…」
寄りにもよって狡噛の去った今に記憶が戻るとは。
「智己おじさんは知ってるんでしょ? 慎也の居場所を」
腰を下ろした征陸の斜め正面に立ち、涙混じりの声で尋ねる幸子。
彼女に真実を告げるのは簡単だ。だが彼女を案じ独り姿を消した狡噛を思えば躊躇いもある。
「なあ、幸子。コウの居場所を知ってお前はどうする? あいつの後を追って公安局を去るか?」
幸子はふるふると首を横に振った。
「……私は公安局を離れられない」
「?……」
最初それは刑事としての決意の表れに感じた。だが 幸子の顔に射す暗い影に征陸は考えを改めた。
「警視庁時代に用意していたセーフハウスだ。そこにコウはいる」
「智己おじさん…!!」
「公安局を離れられないのは勤務中の話だろ。非番にお前さんが何処で何をしていようと誰もとやかく言う権利はねぇさ」
「!?……」
征陸は立ち上がり、俯いたままの幸子の頭を大きな手のひらで撫でた。
「幸子…お前の事は小さい頃からよく知っている。娘のようなモンだ。俺が潜在犯の認定を受けた後も ずっと伸元の側にいてくれたこと、感謝してるぜ」
「智己おじさん……」
ぐすっと鼻を鳴らすと、征陸は二、三度優しく幸子の頭をぽんぽんと叩いた。
この娘が一人息子と一緒になってくれたらどんなに嬉しかっただろう。…彼女に押し付ける気もない親の勝手な気持ちだ。
「コウによろしくな」