#36 色のない部屋
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ゆっくりと意識が戻る。
狡噛は目を閉じたまま指を微かに動かしてみた。倦怠感は拭えないが、どうやら体はいうことを聞くようだ。
「――!」
閉じていた目を開けると、己の寝ているベッドに突っ伏して眠る幸子の姿があった。
(幸子…)
ここに幸子がいるなど夢にも思わなかった。
自分は――取り返しのつかない事をしてしまったのだ。この女に。
それでもあどけなさの残る寝顔を見ると自然と頬が緩み、触れたくなる。反射的に幸子の頬へと手を伸ばしかけた時、不意に扉が開き唐之杜が現れた。
声をかけてこようとした唐之杜を制し、狡噛は名残惜しそうにもう一度幸子の寝顔を見つめてから静かに起き上がった。
「ああ、ヘルメットね。その手があったか」
分析室ラボから頂戴してきたヘルメットを被り、自室へと戻った狡噛を征陸がグラスを傾けながら迎える。
ローテーブルの上には征陸が持参したのであろう酒瓶と空のグラスがもうひとつ…その隣にドミネーターが置かれていた。
「退院祝いだ。まあ、飲めよ」
ヘルメットを脱ぎ こちらへ歩いてきた狡噛にニカッと笑いかけながら征陸は酒瓶を持ち空のグラスに酒を注ぐ。氷がパキッと小気味良い音を響かせた。
向かい合う形で狡噛が座ると、開かれたままのファイルを手にし、征陸はパラパラと頁を捲った。
「お前の集めた槙島の資料、見せてもらってるぜ。一見とっ散らかっているようでいて、きっちり整理がついている。いざとなれば肝心な部分だけいつでも持ち出せる構えだな」
「……」
征陸の意図が読めず、狡噛は様子を伺いながら黙ってグラスを手に取る。
「何故そこまで奴に拘る?お前が許せないのは悪か?それとも槙島自身か?」
「……どっちも違うよ、とっつぁん」
ぐいっと一口酒を煽り、狡噛は続けた。
「今ここで諦めても、いずれ俺は槙島聖護を見逃した自分が許せなくなる。そんなのは真っ平だ」
「お前らしい答えだな、コウ」
ニヤリと笑うとメモ用紙と古びたキーホルダーをテーブルに置いた。
狡噛は目を閉じたまま指を微かに動かしてみた。倦怠感は拭えないが、どうやら体はいうことを聞くようだ。
「――!」
閉じていた目を開けると、己の寝ているベッドに突っ伏して眠る幸子の姿があった。
(幸子…)
ここに幸子がいるなど夢にも思わなかった。
自分は――取り返しのつかない事をしてしまったのだ。この女に。
それでもあどけなさの残る寝顔を見ると自然と頬が緩み、触れたくなる。反射的に幸子の頬へと手を伸ばしかけた時、不意に扉が開き唐之杜が現れた。
声をかけてこようとした唐之杜を制し、狡噛は名残惜しそうにもう一度幸子の寝顔を見つめてから静かに起き上がった。
「ああ、ヘルメットね。その手があったか」
分析室ラボから頂戴してきたヘルメットを被り、自室へと戻った狡噛を征陸がグラスを傾けながら迎える。
ローテーブルの上には征陸が持参したのであろう酒瓶と空のグラスがもうひとつ…その隣にドミネーターが置かれていた。
「退院祝いだ。まあ、飲めよ」
ヘルメットを脱ぎ こちらへ歩いてきた狡噛にニカッと笑いかけながら征陸は酒瓶を持ち空のグラスに酒を注ぐ。氷がパキッと小気味良い音を響かせた。
向かい合う形で狡噛が座ると、開かれたままのファイルを手にし、征陸はパラパラと頁を捲った。
「お前の集めた槙島の資料、見せてもらってるぜ。一見とっ散らかっているようでいて、きっちり整理がついている。いざとなれば肝心な部分だけいつでも持ち出せる構えだな」
「……」
征陸の意図が読めず、狡噛は様子を伺いながら黙ってグラスを手に取る。
「何故そこまで奴に拘る?お前が許せないのは悪か?それとも槙島自身か?」
「……どっちも違うよ、とっつぁん」
ぐいっと一口酒を煽り、狡噛は続けた。
「今ここで諦めても、いずれ俺は槙島聖護を見逃した自分が許せなくなる。そんなのは真っ平だ」
「お前らしい答えだな、コウ」
ニヤリと笑うとメモ用紙と古びたキーホルダーをテーブルに置いた。