#36 色のない部屋
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狡噛の容体が気にかかり、勤務中ではあったが医務室へと向かった。
「容体は?」
「…まだ目を覚ましません」
狡噛の横たわるベッド脇に置かれた椅子に座り込んだ常守が答えた。
曇ったままの表情を和らげたくて幸子は常守の華奢な背中を擦りながら優しく言う。
「大丈夫。朱ちゃんが中枢神経を避けてくれたから、直に目を覚ますよ」
常守は顔をあげて微かに安堵の笑みを見せた。
こういう然り気無い幸子の気遣い、優しさが好きだ。
それにしても――
眠る狡噛を見ていると彼をドミネーターで初めて撃った時を思い出す。そしてあの時の幸子を。
(幸子さんなら真っ先に狡噛さんの許へ来ると思ってたのに…。らしくないな)
幸子の様子を伺う。
複雑な表情を浮かべてはいるが、以前に比べれば幾分か落ち着いて見える。そんな幸子に更なる違和感を覚えてしまった。
「ねえ、幸子さん」
「ん?」
「………」
「朱ちゃん?」
「…ううん、何でもない」
口を閉ざした常守に幸子はハテナ顔で首を傾げたが、深くは聞かずに話題を変える事にした。
「でも朱ちゃんすごいね。的確な判断で窮地を切り抜けちゃうんだもん。もう立派な刑事だね」
「そんな事…!! 確かにあの状況下を切り抜けるにはあれしかないと思ったけど…でも、かなり咄嗟な面もあったから」
両手を顔の前で横にぶんぶんと振り謙遜する。
この若き監視官の判断力や決断力にはやはり目を見張るものがある――そう心から感心していると、常守は妙な事を言った。
「幸子さんも同じ事を考えていたよね?」
「私…?!」
「あの時 幸子さんがドミネーターを構えようとしてるのが見えて。だから――」
だから先に狡噛を撃ったのだ。
どんな事情であれ、幸子に狡噛を撃たせたくなかったから。
それは常守なりに幸子を守った結果であった。
「朱ちゃんは私を買い被りすぎてるよ」
「えっ!?」
暫しの沈黙の後、幸子は自嘲気味な笑みを浮かべた。
「あの時誰かが私にドミネーターを向けていたら――きっと裁かれていたのは私だよ」
「??」
常守には幸子の深意は測れなかったが、幸子が眠る狡噛に目を向けたのに気づき退室を決めた。
「私はこれで失礼します。幸子さんは狡噛さんに付き添っていてあげて」
「うん、そうするね。お疲れさま」
最後に常守は芝居がかったように敬礼し、退室した。
「容体は?」
「…まだ目を覚ましません」
狡噛の横たわるベッド脇に置かれた椅子に座り込んだ常守が答えた。
曇ったままの表情を和らげたくて幸子は常守の華奢な背中を擦りながら優しく言う。
「大丈夫。朱ちゃんが中枢神経を避けてくれたから、直に目を覚ますよ」
常守は顔をあげて微かに安堵の笑みを見せた。
こういう然り気無い幸子の気遣い、優しさが好きだ。
それにしても――
眠る狡噛を見ていると彼をドミネーターで初めて撃った時を思い出す。そしてあの時の幸子を。
(幸子さんなら真っ先に狡噛さんの許へ来ると思ってたのに…。らしくないな)
幸子の様子を伺う。
複雑な表情を浮かべてはいるが、以前に比べれば幾分か落ち着いて見える。そんな幸子に更なる違和感を覚えてしまった。
「ねえ、幸子さん」
「ん?」
「………」
「朱ちゃん?」
「…ううん、何でもない」
口を閉ざした常守に幸子はハテナ顔で首を傾げたが、深くは聞かずに話題を変える事にした。
「でも朱ちゃんすごいね。的確な判断で窮地を切り抜けちゃうんだもん。もう立派な刑事だね」
「そんな事…!! 確かにあの状況下を切り抜けるにはあれしかないと思ったけど…でも、かなり咄嗟な面もあったから」
両手を顔の前で横にぶんぶんと振り謙遜する。
この若き監視官の判断力や決断力にはやはり目を見張るものがある――そう心から感心していると、常守は妙な事を言った。
「幸子さんも同じ事を考えていたよね?」
「私…?!」
「あの時 幸子さんがドミネーターを構えようとしてるのが見えて。だから――」
だから先に狡噛を撃ったのだ。
どんな事情であれ、幸子に狡噛を撃たせたくなかったから。
それは常守なりに幸子を守った結果であった。
「朱ちゃんは私を買い被りすぎてるよ」
「えっ!?」
暫しの沈黙の後、幸子は自嘲気味な笑みを浮かべた。
「あの時誰かが私にドミネーターを向けていたら――きっと裁かれていたのは私だよ」
「??」
常守には幸子の深意は測れなかったが、幸子が眠る狡噛に目を向けたのに気づき退室を決めた。
「私はこれで失礼します。幸子さんは狡噛さんに付き添っていてあげて」
「うん、そうするね。お疲れさま」
最後に常守は芝居がかったように敬礼し、退室した。