#35 監視官として
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他の刑事達は全て槙島の捜索に出払い、一係オフィスには幸子と狡噛のみが残っていた。
上座の監視官デスクで仕事をしていた幸子は、分析室行きの資料を手にしたまま狡噛を盗み見た。狡噛は下座にある資料の積み上げられた己の執行官デスクで何か調べものをしている。
(…やっぱり気まずいよ)
昨日の今日だ。幸子の体には まだ昨夜の狡噛の痕がくっきりと残っているし(見える位置は濃い目のファンデーションで誤魔化しているが)、思い返せば心臓が早鐘を打ち頬が熱くなる。
無理矢理の行為にショックは大きけれど、やはり一夜経つ今でも狡噛に対して怒りは湧いてこなかった。
(それは、私が狡噛くんの恋人だったから――?)
空席になっている狡噛の隣のデスクは元は幸子が使っていたものだ。自分達はあの場所でどんな会話を交わし笑いあったのだろう…。
幸子はふるふると首を横に振り、椅子から立ち上がった。仕事は仕事だ。きちんとこなさなくては。
「狡噛執行官」
狡噛は返事をする代わりにこちらを見た。
昨夜の激しさを纏った獣のような鋭い瞳は、今は澄んだ海のように穏やかな…だが何処か哀しげな色を持って自分を映している。
幸子は少し緊張しながら封筒を差し出した。
「この資料を唐之杜分析官に届けて下さい」
「了解だ」
狡噛は素直に頷き、封筒を受け取ると席を立った。
「木梨」
そしてドアの手前で、まだ狡噛のデスク前に立ち尽くしている幸子を振り返った。
「あ……な、なに…?」
「…昨日はすまなかった」
「!……あ、あの…」
呼び止めようと口を開いた時にはもう、狡噛の姿はオフィスから消えていた。
幸子は監視官デスクに戻り、椅子に深く身を預けると長い溜め息をついた。
("木梨"……か…)
なぜだろう。
言い様のない寂しさが幸子の胸を締め付けていた。
上座の監視官デスクで仕事をしていた幸子は、分析室行きの資料を手にしたまま狡噛を盗み見た。狡噛は下座にある資料の積み上げられた己の執行官デスクで何か調べものをしている。
(…やっぱり気まずいよ)
昨日の今日だ。幸子の体には まだ昨夜の狡噛の痕がくっきりと残っているし(見える位置は濃い目のファンデーションで誤魔化しているが)、思い返せば心臓が早鐘を打ち頬が熱くなる。
無理矢理の行為にショックは大きけれど、やはり一夜経つ今でも狡噛に対して怒りは湧いてこなかった。
(それは、私が狡噛くんの恋人だったから――?)
空席になっている狡噛の隣のデスクは元は幸子が使っていたものだ。自分達はあの場所でどんな会話を交わし笑いあったのだろう…。
幸子はふるふると首を横に振り、椅子から立ち上がった。仕事は仕事だ。きちんとこなさなくては。
「狡噛執行官」
狡噛は返事をする代わりにこちらを見た。
昨夜の激しさを纏った獣のような鋭い瞳は、今は澄んだ海のように穏やかな…だが何処か哀しげな色を持って自分を映している。
幸子は少し緊張しながら封筒を差し出した。
「この資料を唐之杜分析官に届けて下さい」
「了解だ」
狡噛は素直に頷き、封筒を受け取ると席を立った。
「木梨」
そしてドアの手前で、まだ狡噛のデスク前に立ち尽くしている幸子を振り返った。
「あ……な、なに…?」
「…昨日はすまなかった」
「!……あ、あの…」
呼び止めようと口を開いた時にはもう、狡噛の姿はオフィスから消えていた。
幸子は監視官デスクに戻り、椅子に深く身を預けると長い溜め息をついた。
("木梨"……か…)
なぜだろう。
言い様のない寂しさが幸子の胸を締め付けていた。