#05 封鎖の澱み
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「それにしても嫌な職場だよな~。今日一日ネットに接続できない環境で缶詰とはね」
トレイに山盛りの料理を頬張りながら スマートフォンをいじる縢は『圏外』の表示に舌打ちした。
狡噛と幸子。それに縢と常守は社員食堂で食事をとっている。
食事をとると言っても それは表向きであり、狡噛などコーヒーを口に運びつつも周囲の職員の観察に余念がなかった。
「こうして見てると平和な社員食堂の風景に見えるけど…」
「実際はどうだろうな」
言葉を濁した幸子。相槌を打つ狡噛。
おそらく考えていることは一緒。
「でもここの人達のサイコパス色相、わりと安定しているよ」
端末でデータチェックしていた常守が、検証中のデータをホロ表示にして示してくれた。
幸子と一緒にデータを一瞥した縢は、だから何だという風に皮肉っぽく笑いながら フォークを持つ手をひらひらさせた。
「ハン……どんな場所でも気晴らしの方法は、案外簡単に見つかるもんだぜ」
「……?」
「いかがです。何か不審な点は見つかりましたか?」
常守が縢に何か言う前に、現れた郷田がなぜか満面の笑みを湛えて話しかけてきた。
なんだか嘘っぽい笑顔だと幸子は思った。
「いえ、頂いたデータからは特になにも――」
ガシャーン!
常守と郷田の会話が金属の落ちる音に掻き消された。刑事課メンバーの視線が自動的に音のした方に注がれる。
見れば、落とした食器とぶちまけられた料理を必死で拾う男を 数人の職員が囲んでいた。
「あの人……!?」
幸子は口に手を充てて息を飲んだ。さっき廊下でぶつかった小男ではないか。
「よう、黄緑野郎。今日も優雅に個室でランチかい」
小男――金原を嘲笑う工員達から、彼らが故意に足を引っ掛けたのは明白だったが、更に幸子や常守を驚かせたのは郷田の発言だ。
「一人、ああいう立場の人間がいるだけで、グループ全体のストレスケアができるんです」
このような事態が起きているだけでも大問題なのに、郷田はまるでそれを肯定しているような発言をする。
狡噛と幸子、それに常守は郷田の態度と発言に嫌悪感を抱いた(縢はあえて首を突っ込まないようにしているのか、我関せずで黙々とランチを食べ続けている)
「それを笑って見過ごせるあんたも、ここの責任者がお似合いってわけだ。シビュラシステム様々だな」
吐き捨てるように言って席を立った狡噛とほぼ同時に幸子も席を立つ。
するりと郷田の横をすり抜け、まだ屈み込んで食器をがちゃがちゃいわせている金原に駆け寄った。
「立てますか?」
「!」
屈む金原の目線と合わせるように膝を折って話しかける。話しかけられたのが意外だったのか、金原は驚いたような、しかし食い入るような瞳で幸子を見つめた。
「大丈夫か?」
「す、すみません…」
幸子の隣に立った狡噛が手を差し伸べる。金原が恐る恐るその手を掴むと、狡噛は一気に助け起こした。
「ご飯、新しいの取って来ますね」
「あっ……はぁ…」
優しく声をかけてから配膳カウンターに歩き出した幸子を、金原は口をあんぐりと開けたまま 眩しいものを見るような目つきで追っていた。そんな金原の様子を伺う狡噛。
そして一部始終を見守っていた常守は、誇らしい2人の行動に、どうだと言わんばかりの勝ち気な笑みを郷田に見せつけてやった。
トレイに山盛りの料理を頬張りながら スマートフォンをいじる縢は『圏外』の表示に舌打ちした。
狡噛と幸子。それに縢と常守は社員食堂で食事をとっている。
食事をとると言っても それは表向きであり、狡噛などコーヒーを口に運びつつも周囲の職員の観察に余念がなかった。
「こうして見てると平和な社員食堂の風景に見えるけど…」
「実際はどうだろうな」
言葉を濁した幸子。相槌を打つ狡噛。
おそらく考えていることは一緒。
「でもここの人達のサイコパス色相、わりと安定しているよ」
端末でデータチェックしていた常守が、検証中のデータをホロ表示にして示してくれた。
幸子と一緒にデータを一瞥した縢は、だから何だという風に皮肉っぽく笑いながら フォークを持つ手をひらひらさせた。
「ハン……どんな場所でも気晴らしの方法は、案外簡単に見つかるもんだぜ」
「……?」
「いかがです。何か不審な点は見つかりましたか?」
常守が縢に何か言う前に、現れた郷田がなぜか満面の笑みを湛えて話しかけてきた。
なんだか嘘っぽい笑顔だと幸子は思った。
「いえ、頂いたデータからは特になにも――」
ガシャーン!
常守と郷田の会話が金属の落ちる音に掻き消された。刑事課メンバーの視線が自動的に音のした方に注がれる。
見れば、落とした食器とぶちまけられた料理を必死で拾う男を 数人の職員が囲んでいた。
「あの人……!?」
幸子は口に手を充てて息を飲んだ。さっき廊下でぶつかった小男ではないか。
「よう、黄緑野郎。今日も優雅に個室でランチかい」
小男――金原を嘲笑う工員達から、彼らが故意に足を引っ掛けたのは明白だったが、更に幸子や常守を驚かせたのは郷田の発言だ。
「一人、ああいう立場の人間がいるだけで、グループ全体のストレスケアができるんです」
このような事態が起きているだけでも大問題なのに、郷田はまるでそれを肯定しているような発言をする。
狡噛と幸子、それに常守は郷田の態度と発言に嫌悪感を抱いた(縢はあえて首を突っ込まないようにしているのか、我関せずで黙々とランチを食べ続けている)
「それを笑って見過ごせるあんたも、ここの責任者がお似合いってわけだ。シビュラシステム様々だな」
吐き捨てるように言って席を立った狡噛とほぼ同時に幸子も席を立つ。
するりと郷田の横をすり抜け、まだ屈み込んで食器をがちゃがちゃいわせている金原に駆け寄った。
「立てますか?」
「!」
屈む金原の目線と合わせるように膝を折って話しかける。話しかけられたのが意外だったのか、金原は驚いたような、しかし食い入るような瞳で幸子を見つめた。
「大丈夫か?」
「す、すみません…」
幸子の隣に立った狡噛が手を差し伸べる。金原が恐る恐るその手を掴むと、狡噛は一気に助け起こした。
「ご飯、新しいの取って来ますね」
「あっ……はぁ…」
優しく声をかけてから配膳カウンターに歩き出した幸子を、金原は口をあんぐりと開けたまま 眩しいものを見るような目つきで追っていた。そんな金原の様子を伺う狡噛。
そして一部始終を見守っていた常守は、誇らしい2人の行動に、どうだと言わんばかりの勝ち気な笑みを郷田に見せつけてやった。