#31 飛び込んできた事件
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パトカーは滑るように現場へと急行する。
実際はオート運転に切り替えているので運転操作は必要ないのだが、幸子は手持ち無沙汰でなんとなくハンドルを握っていた。
助手席の狡噛は黙ったままだ。
(私と狡噛くんは恋人…)
昨日の唐之杜の発言が頭から離れない。
結論を述べてしまえばその記憶はなかった。
仮にそれが真実なら狡噛は今どんな気持ちでいるんだろうか…。
そもそも狡噛とは公安局に入局してから出逢った。幼なじみの宜野座は元より友人だったらしいが、幸子は然程接点を持っていた訳ではない。
後で出身校が同じと知り、不思議な偶然に驚いたものだ。
(公安局に入局した私達3人は監視官になって、狡噛くんが執行官に降格して、それから私も………?!)
そこでハッとした。
ぎゅっと強くハンドルを握る。
(なんで私は執行官になったの…!?)
復帰するなら監視官で良かった。なのに自分は執行官の道を選んでいる。
(……だめ、思い出せない)
幸子は頭を振った。
一度は潜在犯に堕ちた経緯については、幸子のサイコパスが元々特有のものであるからだと槙島は言っていた。しかし――‥
「幸子」
「えっ、あ、な、なに!?」
不意に名を呼ばれ幸子はビクッとして隣を見た。狡噛は苦笑している。
「そんなに緊張するな。監視官がそんなんじゃ執行官に示しがつかないぞ」
「あっ……う、うん…っ」
妙に意識して変に緊張していたのは確かだ。
それが狡噛に伝わってしまったのならよろしくない。幸子はもうひとつ考えていた話題を口にした。
「ちょっと考えてたんだ。B拠点に出入りしている人のこと」
「何か心当りでもあるのか?」
「覚えてる? 滝崎リナ」
「滝崎……」
と狡噛は天井を仰ぎ見て僅かな間考えていたが、
「北沢の事件の時に消えた六合塚の知り合いか」
「うん、そう。実は彼女とC拠点で再会したの」
「つまりB拠点に出入りしているのは滝崎だと?」
幸子が頷く。
「可能性としてはあるが、なんとも言えないな」
「そうだよね。滝崎リナ以外にも逃げ出した残党がいただろうし」
「全て制圧するのは不可能だ。例え成功したとしてもまた模倣犯が現れる。連鎖は止められない」
狡噛の言う事は最もだ。例え今回制圧をしても、第2第3の残党が必ず現れるだろう。
「…でも、断ち切りたい」
「――?!」
狡噛は一瞬目を丸くして幸子を見たが、鼻に抜けたような笑みと共に優しいまなざしを向けた。そのまま手を伸ばし、大きな手のひらを ぽんっと幸子の頭に乗せた。
その仕草に今度は幸子が戸惑い目を丸くする。
「……な、なあに?」
「特に深い意味はない。ただ――」
「ただ?」
「いや、幸子らしいと思っただけだ」
「!?……」
手を引っ込めた狡噛はそう言って笑ったが、幸子はまだ狡噛を見つめたままだった。
頭に残る温かい感触。
なぜだろう。すごく…安心する…。
実際はオート運転に切り替えているので運転操作は必要ないのだが、幸子は手持ち無沙汰でなんとなくハンドルを握っていた。
助手席の狡噛は黙ったままだ。
(私と狡噛くんは恋人…)
昨日の唐之杜の発言が頭から離れない。
結論を述べてしまえばその記憶はなかった。
仮にそれが真実なら狡噛は今どんな気持ちでいるんだろうか…。
そもそも狡噛とは公安局に入局してから出逢った。幼なじみの宜野座は元より友人だったらしいが、幸子は然程接点を持っていた訳ではない。
後で出身校が同じと知り、不思議な偶然に驚いたものだ。
(公安局に入局した私達3人は監視官になって、狡噛くんが執行官に降格して、それから私も………?!)
そこでハッとした。
ぎゅっと強くハンドルを握る。
(なんで私は執行官になったの…!?)
復帰するなら監視官で良かった。なのに自分は執行官の道を選んでいる。
(……だめ、思い出せない)
幸子は頭を振った。
一度は潜在犯に堕ちた経緯については、幸子のサイコパスが元々特有のものであるからだと槙島は言っていた。しかし――‥
「幸子」
「えっ、あ、な、なに!?」
不意に名を呼ばれ幸子はビクッとして隣を見た。狡噛は苦笑している。
「そんなに緊張するな。監視官がそんなんじゃ執行官に示しがつかないぞ」
「あっ……う、うん…っ」
妙に意識して変に緊張していたのは確かだ。
それが狡噛に伝わってしまったのならよろしくない。幸子はもうひとつ考えていた話題を口にした。
「ちょっと考えてたんだ。B拠点に出入りしている人のこと」
「何か心当りでもあるのか?」
「覚えてる? 滝崎リナ」
「滝崎……」
と狡噛は天井を仰ぎ見て僅かな間考えていたが、
「北沢の事件の時に消えた六合塚の知り合いか」
「うん、そう。実は彼女とC拠点で再会したの」
「つまりB拠点に出入りしているのは滝崎だと?」
幸子が頷く。
「可能性としてはあるが、なんとも言えないな」
「そうだよね。滝崎リナ以外にも逃げ出した残党がいただろうし」
「全て制圧するのは不可能だ。例え成功したとしてもまた模倣犯が現れる。連鎖は止められない」
狡噛の言う事は最もだ。例え今回制圧をしても、第2第3の残党が必ず現れるだろう。
「…でも、断ち切りたい」
「――?!」
狡噛は一瞬目を丸くして幸子を見たが、鼻に抜けたような笑みと共に優しいまなざしを向けた。そのまま手を伸ばし、大きな手のひらを ぽんっと幸子の頭に乗せた。
その仕草に今度は幸子が戸惑い目を丸くする。
「……な、なあに?」
「特に深い意味はない。ただ――」
「ただ?」
「いや、幸子らしいと思っただけだ」
「!?……」
手を引っ込めた狡噛はそう言って笑ったが、幸子はまだ狡噛を見つめたままだった。
頭に残る温かい感触。
なぜだろう。すごく…安心する…。