#30 隠された愛
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ポケットに片手を突っ込んだ狡噛は ベッドサイドに立ち、寝息を立てる幸子の寝顔を眺めていた。
(幸子……)
C拠点での出来事が脳裏をよぎる。
あれからすぐに常守から連絡が入りパトカーに戻る運びとなって そのまま別々の車で帰還した為、幸子との接触はそれ以上なかった。そして勤務明けの今、幸子の様子を伺いに医務室へと現れたのである。
それにしても――狡噛は思う。
幸子の態度は妙だ。
壁を作っているというよりは、まるで自分との記憶だけがすっぽりと抜け落ちているような、そんな印象を受けるからだ。
("狡噛くん"、か……)
苦笑いを浮かべる。2人きりの時にそう呼ばれたのは一体何年ぶりだろう。
ポケットに潜ませていた手を伸ばし、そっと幸子の前髪に触れた。優しい動きで鋤くと、狡噛の指の隙間からさらさらと柔らかい黒髪が流れた。
「幸子――」
声に出すとその声は思った以上に掠れていた。
手を滑らせ頬を撫でると、顔を近づけゆっくりと唇を重ねた。
「無抵抗な恋人へのスキンシップって罪に問われるのかしら?」
分析室に足を踏み入れた途端 唐之杜から指摘を受けた。
狡噛は苦笑しながらモニター画面に目をやった。医務室の様子が映し出されている。
「さあ。盗撮よりは罪が軽いんじゃないか?」
「盗撮なんて人聞き悪いわね。これはれっきとした分析のお仕事」
椅子ごと振り返り、狡噛の物言いを律儀に訂正する。狡噛はもう一度苦笑し、話題を振り直した。
「幸子の容態は?」
「それなりに深い傷ではあったけど痕が残る可能性は低いわ。適切な応急処置のおかげね」
「そりゃ、どうも」
どうやら大事ないようで一安心だ。
狡噛は煙草を手に取る。一本をくわえジッポを取り出していると唐之杜が灰皿を差し出してくれた。
ゆっくりと煙を吸い込み、吐き出す。自分も吸いたくなったようで、唐之杜も白衣のポケットを探って煙草を取り出した。
「慎也君さあ、幸子に指輪贈った?」
「指輪……? いや、まだだが」
素直に応えれば唐之杜の表情が好奇心に輝く。
「あら~…"まだ"って事は贈る予定はあるんだ~」
「――っ!!?」
吸い込んだ煙が変な所に入ってしまい思わずゲホゲホと噎せてしまう。
「あははは、図星だったみたいね」
「うるさい。それより…指輪がどうかしたのか?」
聞けば唐之杜は煙草をくわえたまま言った。
「指輪してるのよね、幸子」
(幸子……)
C拠点での出来事が脳裏をよぎる。
あれからすぐに常守から連絡が入りパトカーに戻る運びとなって そのまま別々の車で帰還した為、幸子との接触はそれ以上なかった。そして勤務明けの今、幸子の様子を伺いに医務室へと現れたのである。
それにしても――狡噛は思う。
幸子の態度は妙だ。
壁を作っているというよりは、まるで自分との記憶だけがすっぽりと抜け落ちているような、そんな印象を受けるからだ。
("狡噛くん"、か……)
苦笑いを浮かべる。2人きりの時にそう呼ばれたのは一体何年ぶりだろう。
ポケットに潜ませていた手を伸ばし、そっと幸子の前髪に触れた。優しい動きで鋤くと、狡噛の指の隙間からさらさらと柔らかい黒髪が流れた。
「幸子――」
声に出すとその声は思った以上に掠れていた。
手を滑らせ頬を撫でると、顔を近づけゆっくりと唇を重ねた。
「無抵抗な恋人へのスキンシップって罪に問われるのかしら?」
分析室に足を踏み入れた途端 唐之杜から指摘を受けた。
狡噛は苦笑しながらモニター画面に目をやった。医務室の様子が映し出されている。
「さあ。盗撮よりは罪が軽いんじゃないか?」
「盗撮なんて人聞き悪いわね。これはれっきとした分析のお仕事」
椅子ごと振り返り、狡噛の物言いを律儀に訂正する。狡噛はもう一度苦笑し、話題を振り直した。
「幸子の容態は?」
「それなりに深い傷ではあったけど痕が残る可能性は低いわ。適切な応急処置のおかげね」
「そりゃ、どうも」
どうやら大事ないようで一安心だ。
狡噛は煙草を手に取る。一本をくわえジッポを取り出していると唐之杜が灰皿を差し出してくれた。
ゆっくりと煙を吸い込み、吐き出す。自分も吸いたくなったようで、唐之杜も白衣のポケットを探って煙草を取り出した。
「慎也君さあ、幸子に指輪贈った?」
「指輪……? いや、まだだが」
素直に応えれば唐之杜の表情が好奇心に輝く。
「あら~…"まだ"って事は贈る予定はあるんだ~」
「――っ!!?」
吸い込んだ煙が変な所に入ってしまい思わずゲホゲホと噎せてしまう。
「あははは、図星だったみたいね」
「うるさい。それより…指輪がどうかしたのか?」
聞けば唐之杜は煙草をくわえたまま言った。
「指輪してるのよね、幸子」