#29 交わる思惑
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「狡噛さん! 幸子さんと六合塚さんは…!!」
遅れて室内に現れた常守は幸子達の無事を知るとその場にへたり込んでしまった。
「ふふっ。大丈夫だよ、朱ちゃん」
常守の刑事らしからぬ初々しさに笑みが溢れる。その隙に狡噛が傷口を止血してくれた。
「これで取り敢えずは大丈夫だが、公安局に戻ったらすぐ志恩に診てもらえ。化膿すると困るからな」
「ありがとう。狡噛くん」
「?!!」
狡噛が驚いた顔をしたが、幸子は対して気にも留めずに話を続けた。
「でも……なんで2人がここに?」
「B拠点は空振りだった。公安局が動き出した情報を事前に得ていたんだ」
「……それで滝崎リナ達はここに現れたんだね」
「リナ…なんで……」
「弥生ちゃん…」
幸子は立ち上がり、震える六合塚の背中をゆっくり擦ってやった。
へたり込んでいた常守は何かのスイッチが入ったかのように立ち上がり、六合塚に声をかけた。
「…六合塚さん、建物の外壁調査に同行して下さい」
「……はい」
絞り出すような返事をして六合塚は常守の後について室内を出ていった。
(弥生ちゃん…)
きっと彼女にとって今日の任務は何よりも辛いものだったろう。
逃げ出した滝崎の行方を追跡するのは、シビュラが完全復旧してない今、難しい。
そんな事を考えていたら、ふいに背後から抱きしめられた。
「幸子」
「――っ!?」
狡噛の逞しい腕が幸子を優しく抱いていた。彼の声音は、まるで恋人に向けられるそれのように優しい。
「無事で良かった」
「こ、狡噛くん…っ」
「――!!?」
どうしていいか分からず小さく名前を呼べば、狡噛は抱擁を解き幸子を見つめた。
そのグレーの瞳は、先程と同じように驚きに見開かれていた。
靴音をほとんど立てずに歩く男は背にした廃屋を振り返った。
彼女を己から奪おうなど、あの男の行動は万死に値する行為だった。そして彼は当然の罰を受けた。
しかし思ったよりあっさりと彼女の行方を掴めたものだ。
灯台元暗し。
藤間は彼女を己の腸(はらわた)に閉じ込めていた。
まあ、閉じ込めたのなら抉じ開けるまでだ。
「必ず迎えに行くよ――幸子」
槙島聖護は薄く笑うと銀髪を翻して歩き出し、闇に溶け込むように街へと消えた――。
遅れて室内に現れた常守は幸子達の無事を知るとその場にへたり込んでしまった。
「ふふっ。大丈夫だよ、朱ちゃん」
常守の刑事らしからぬ初々しさに笑みが溢れる。その隙に狡噛が傷口を止血してくれた。
「これで取り敢えずは大丈夫だが、公安局に戻ったらすぐ志恩に診てもらえ。化膿すると困るからな」
「ありがとう。狡噛くん」
「?!!」
狡噛が驚いた顔をしたが、幸子は対して気にも留めずに話を続けた。
「でも……なんで2人がここに?」
「B拠点は空振りだった。公安局が動き出した情報を事前に得ていたんだ」
「……それで滝崎リナ達はここに現れたんだね」
「リナ…なんで……」
「弥生ちゃん…」
幸子は立ち上がり、震える六合塚の背中をゆっくり擦ってやった。
へたり込んでいた常守は何かのスイッチが入ったかのように立ち上がり、六合塚に声をかけた。
「…六合塚さん、建物の外壁調査に同行して下さい」
「……はい」
絞り出すような返事をして六合塚は常守の後について室内を出ていった。
(弥生ちゃん…)
きっと彼女にとって今日の任務は何よりも辛いものだったろう。
逃げ出した滝崎の行方を追跡するのは、シビュラが完全復旧してない今、難しい。
そんな事を考えていたら、ふいに背後から抱きしめられた。
「幸子」
「――っ!?」
狡噛の逞しい腕が幸子を優しく抱いていた。彼の声音は、まるで恋人に向けられるそれのように優しい。
「無事で良かった」
「こ、狡噛くん…っ」
「――!!?」
どうしていいか分からず小さく名前を呼べば、狡噛は抱擁を解き幸子を見つめた。
そのグレーの瞳は、先程と同じように驚きに見開かれていた。
靴音をほとんど立てずに歩く男は背にした廃屋を振り返った。
彼女を己から奪おうなど、あの男の行動は万死に値する行為だった。そして彼は当然の罰を受けた。
しかし思ったよりあっさりと彼女の行方を掴めたものだ。
灯台元暗し。
藤間は彼女を己の腸(はらわた)に閉じ込めていた。
まあ、閉じ込めたのなら抉じ開けるまでだ。
「必ず迎えに行くよ――幸子」
槙島聖護は薄く笑うと銀髪を翻して歩き出し、闇に溶け込むように街へと消えた――。