ヘルメット男達との死闘で傷を負った縢であったが、なんとかチェの開いた扉まで辿り着く事が出来た。
「あいつは…中か…」
呟くと負傷した脚を引きずりながら中へと踏み込む。すぐに目に入ったのは、見知らぬ中年男と、その隣に立つ――
「幸子ちゃんじゃねーか!?」
「縢くん!!」
「無事だったんだな。でもなんでここに？」
「それより……見て」
幸子に促され前方を見た瞬間、縢は言葉を失った。
「何なんだ、こりゃ…」
茫然とする。
これが…こんなものがシビュラシステムだと言うのか……。
「はは…この手でぶち壊すまでもないね。こいつを世間に公表すれば、この国はおしまいだ！」
幸子の傍にいた男…チェが狂ったような笑い声をあげた。
その時、背後で靴音がした。
「か、禾生局長!?」
振り向いた幸子が叫んだ時にはもう、禾生の構えたドミネーターはチェを狙っていた。ガス圧銃を構えたチェと禾生のドミネーターが同時に発砲される。
チェはエリミネーターの直撃で即座に裁かれたが、彼の射出した濃硫酸カプセルもまた禾生の腹に命中した。
「ひっ…!!」
「な、なんだ…!?」
幸子と縢が目にしたもの……それは、硫酸を浴びた禾生の胴体から露出する機械装置だった。
「ロ、ロボット?!」
呟いた縢の瞳が更に見開かれた。
チェを仕留めた銃口が、今度は縢に向けられている。
『刑事課登録執行官。執行モード･ノンリーサル･パラライザー。落ち着いて照･準ヲ、サダ･メ…』
縢の犯罪係数に反応してパラライザー形態に戻りかけたドミネーターが再度変形した。
あの形は――
「デコンポーザー…」
幸子はごくりと喉を鳴らした。対象を分子分解してしまう最凶の形態。
「……やってらんねーよ、クソが」
突きつけられた銃を見つめ、縢はなんとも言えない笑みを見せた。
「縢くん!!!」
禾生の指がトリガーにかかった瞬間、幸子は思わず飛び出していた。