唐之杜のナビで地下通路を進む縢は、あるはずのない地下へと降りる非常階段を発見した。
「うへえ…ここの地下フロアって四階で終わりじゃねえのかよ」
ゾッとしながらも更に地下へと降りていく。
「なあ、センセー。ここ絶対やばいって。……センセー？」
無線から唐之杜の応答はない。更にドミネーターからのアラートが無機質な地下に響く。
『通信エラー。システムとのリンクを構築できません』
「おいおいおい…」
思わずツッコミを入れる縢の背後には不振なヘルメットの男達が迫っていた。


―――――‥‥
地下フロアの最深部。
分厚い隔壁の前に座り込み、ノートパソコンを操作しているチェ。その背後に幸子はいた。
「まさかあんたが俺と一緒に来るとはね」
隔壁の開閉パネルをパッキングしながらチェがちらりと幸子を見た。
幸子とて槙島がどのような意図で別行動を取るに至ったのか理解していなかった。
唯一考えられるとしたら…シビュラの正体を彼女に見せたかったから、だろう。
「まあ、槙島さんの意向だからとやかく言うつもりはないが。彼は、この先にあるものをあんたが目にする事を望んでいるようだからな」
チェも幸子と同じような見解らしい。
「…この先には、何があるの？」
「さあ。それともうすぐご対面できるって訳だ」
幸子は作業中のチェから立ち塞がる隔壁へと視線を移した。この壁の先に待つものとは一体…。
その時、チェが持つ無線に通信が入る音がした。
「どうやらあんたのお仲間からの通信らしい」
「……仲間!?」
反射的に耳をすます。
会話の内容から察するに、どうやらチェの通信相手は縢のようだ。何度かのやりとりの後、通信は切れた。
「どうやらお仲間の執行官はここにシビュラと俺をぶち殺しに来るらしい。――っと、成功だ！」
チェの嬉しそうな声が通路に響き渡った。
目の前の隔壁のロックが解除され、重い音を立ててそれが開いた。