朝のヒンヤリとした空気が宜野座の頬を撫でる。
のぼり始めた太陽の陽が、雲の切れ間からゆっくりと差していく。今日も天気に恵まれそうだ。
しかし爽やかな天候とは裏腹に、宜野座の心はモヤがかかったように重く、晴れないでいた。
(幸子……)
後輩監視官である常守朱の友人が犠牲になった例の事件。現場に居合わせた事件の首謀者槙島に幸子が連れ去られてから、もう一週間以上が経過する。
なぜあの時狡噛の許に行かせてしまったのか――後悔ばかりが募る。
『なぜ…なぜお前がいて幸子を守れなかった!?』
幸子を槙島に奪われた焦燥から、征陸に激昂した後、重傷を負った狡噛を責め立ててしまった。
そこまで動揺している自分に、宜野座自身が一番驚いていた。
(俺は……)
とっくに諦めたものだと思っていたのに…。
『ワオンワオン！』
「!!」
ダイムの吠える声で、ハッと宜野座は我に返った。いつの間にか自宅前まで戻って来ていた。