#21 槙島の一計
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それからの数日は槙島と同じ部屋で過ごした。
毎日ほぼ決まった時間(と思われる)に現れる槙島がベットサイドに置かれた椅子に座ればそれが始まりの合図だ。
槙島はじっくりと読書をしている時もあれば、幸子との会話を楽しんでいる時もあった。
不思議なのはそこだ。
槙島は連れ去ってきた幸子に対し特別何も求めてこないのだ。
公安局の情報を引き出す為に拷問するでもなく、脅迫するでもない。ただ話し相手である事を望んでいた。
今のところ命の保障はあるようだが、ゆっくりしてもいられない。
なんとか逃げ出さなくては……。
(慎也…)
狡噛はどうしているのだろう。
怪我は大丈夫だろうか。
かなり酷い出血だった。
(……慎也、無事でいて)
「何を考えているんだい?」
「!」
声をかけられ振り返る。
読書をしていたはずの槙島が、いつの間にか手を休めて幸子を見ていた。薄い笑みを浮かべている。
「僕は期待しているのかもしれない」
「期待……?」
「トロイアスと永遠の愛を誓いながらダイアミディーズの求婚に心揺らすクレシダの心変わりを」
言った後で槙島は滑稽そうに苦笑した。
「いや、君はクレシダほど悪女ではないな。むしろ対照的と言ってもいい」
幸子は探るようなまなざしを槙島に向け暫し沈黙。それからこう応えた。
「……『男というものは手に入らないものを大事にするのよ』」
「!!……」
槙島の瞳が満足げに細められる。
「うん。クレシダの言葉だね」
「クレシダは悪女に捉えられがちだけど、強ちそんな人でもない。自分がどう振る舞えばいいか理解し、与えられた環境に適応しようとしていた」
「…君はどうかな?」
考えるまでもなかった。
「私の心は私が決める」
おいそれと切り替えられる愛なんて持ち合わせていない。
毎日ほぼ決まった時間(と思われる)に現れる槙島がベットサイドに置かれた椅子に座ればそれが始まりの合図だ。
槙島はじっくりと読書をしている時もあれば、幸子との会話を楽しんでいる時もあった。
不思議なのはそこだ。
槙島は連れ去ってきた幸子に対し特別何も求めてこないのだ。
公安局の情報を引き出す為に拷問するでもなく、脅迫するでもない。ただ話し相手である事を望んでいた。
今のところ命の保障はあるようだが、ゆっくりしてもいられない。
なんとか逃げ出さなくては……。
(慎也…)
狡噛はどうしているのだろう。
怪我は大丈夫だろうか。
かなり酷い出血だった。
(……慎也、無事でいて)
「何を考えているんだい?」
「!」
声をかけられ振り返る。
読書をしていたはずの槙島が、いつの間にか手を休めて幸子を見ていた。薄い笑みを浮かべている。
「僕は期待しているのかもしれない」
「期待……?」
「トロイアスと永遠の愛を誓いながらダイアミディーズの求婚に心揺らすクレシダの心変わりを」
言った後で槙島は滑稽そうに苦笑した。
「いや、君はクレシダほど悪女ではないな。むしろ対照的と言ってもいい」
幸子は探るようなまなざしを槙島に向け暫し沈黙。それからこう応えた。
「……『男というものは手に入らないものを大事にするのよ』」
「!!……」
槙島の瞳が満足げに細められる。
「うん。クレシダの言葉だね」
「クレシダは悪女に捉えられがちだけど、強ちそんな人でもない。自分がどう振る舞えばいいか理解し、与えられた環境に適応しようとしていた」
「…君はどうかな?」
考えるまでもなかった。
「私の心は私が決める」
おいそれと切り替えられる愛なんて持ち合わせていない。