#20 闇の奥
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沈黙が訪れ、常守は狡噛を見た。
視線の先は本の表紙に注がれているが、眺めている気配はなかった。おそらくは幸子の事を考えているのだろう。
あれだけ大切にしている女が連れ去られたのだ。冷静に見えるが、内には焦燥と怒りが渦巻いているに違いない。
(幸子さん…)
常守とて同じ気持ちだ。
だからこそ、これから自分がやるべき事はどうしても避けて通れない。
船原の無念を晴らす為に。
幸子を救い出す為に。
「狡噛さん、なぜ幸子さんは連れ去られたんでしょうか。…いえ、なぜ槙島は幸子さんを連れ去ったんでしょうか」
「姿を見られた事が理由なら、あの時幸子を消せばよかった。だが槙島はそうせずに、あえてリスクの高い方法を選択した。それはなぜだ?」
狡噛は自分に問いかけるように言う。
「人質、でしょうか?」
「必要ないだろ、奴には」
すぐに否定する狡噛。
本の表紙から顔をあげて目線は常守に。
「奴が幸子をさらった目的は分からない。だが槙島はすぐに幸子に手をかけるつもりもないように思う」
「確かにそうですね。わざわざ連れ去ったからには何か理由があるはずです」
しかし考えれば考えるほど槙島と幸子の接点が分からない。
第一2人は初対面のはずだ。接点なんて…。
「待って下さい、狡噛さん」
「どうした?」
「2人は本当にあの時が初対面だったんでしょうか?」
指摘されて狡噛は思考を巡らせた。そしてある結論に辿り着いた――‥
常守が退室した後、狡噛はベッドの背もたれに背中を預けて ふー…と息を吐いた。
握りしめた手が憤りに震える。
「幸子…!」
本当は今すぐにでも探しに行きたい。
愛する女が例え一秒でも他の男の手中にあるなど我慢できない。それが友を無き者にした張本人となれば尚更だ。
「待ってろ、幸子。すぐに迎えに行く」
シーツの上に無造作に置かれた本が視界の隅に入る。
『闇の奥』というそのタイトルは、狡噛が踏み入れようとしているものにも似ていた。
視線の先は本の表紙に注がれているが、眺めている気配はなかった。おそらくは幸子の事を考えているのだろう。
あれだけ大切にしている女が連れ去られたのだ。冷静に見えるが、内には焦燥と怒りが渦巻いているに違いない。
(幸子さん…)
常守とて同じ気持ちだ。
だからこそ、これから自分がやるべき事はどうしても避けて通れない。
船原の無念を晴らす為に。
幸子を救い出す為に。
「狡噛さん、なぜ幸子さんは連れ去られたんでしょうか。…いえ、なぜ槙島は幸子さんを連れ去ったんでしょうか」
「姿を見られた事が理由なら、あの時幸子を消せばよかった。だが槙島はそうせずに、あえてリスクの高い方法を選択した。それはなぜだ?」
狡噛は自分に問いかけるように言う。
「人質、でしょうか?」
「必要ないだろ、奴には」
すぐに否定する狡噛。
本の表紙から顔をあげて目線は常守に。
「奴が幸子をさらった目的は分からない。だが槙島はすぐに幸子に手をかけるつもりもないように思う」
「確かにそうですね。わざわざ連れ去ったからには何か理由があるはずです」
しかし考えれば考えるほど槙島と幸子の接点が分からない。
第一2人は初対面のはずだ。接点なんて…。
「待って下さい、狡噛さん」
「どうした?」
「2人は本当にあの時が初対面だったんでしょうか?」
指摘されて狡噛は思考を巡らせた。そしてある結論に辿り着いた――‥
常守が退室した後、狡噛はベッドの背もたれに背中を預けて ふー…と息を吐いた。
握りしめた手が憤りに震える。
「幸子…!」
本当は今すぐにでも探しに行きたい。
愛する女が例え一秒でも他の男の手中にあるなど我慢できない。それが友を無き者にした張本人となれば尚更だ。
「待ってろ、幸子。すぐに迎えに行く」
シーツの上に無造作に置かれた本が視界の隅に入る。
『闇の奥』というそのタイトルは、狡噛が踏み入れようとしているものにも似ていた。