#20 闇の奥
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公安局最上階に位置する局長執務室。
文字通り公安局の頂上となるその部屋では局長の禾生と宜野座が対面していた。
船原ゆき殺害事件についての報告書の件で呼び出されたのだ。
「報告書は読んだよ」
ルービックキューブを弄りながら、禾生は緊張の面持ちで目の前に立つ宜野座にそう告げた。
犯人は槙島聖護であり、彼を裁く為のドミネーターは正常に作動しなかった――報告書にはそんな文面が並ぶ。
「宜野座君、私は君という男を高く評価している。この安定した繁栄。最大多数の最大幸福が実現された現在の社会を、一体何が支えていると思うかね」
「それは……厚生省のシビュラシステムによるものかと」
宜野座の返答に禾生は満足そうに頷く。
「だからこそ、シビュラは完璧でなければならない」
そこで禾生はデスクのコンソールを操作して、ある機密情報のファイルをホログラフ表示させた。それは とある男の逮捕記録。
「藤間……幸三郎!?」
藤間幸三郎…忘れるはずもない。
佐々山が殉職。狡噛を潜在犯に堕とし、更に幸子の人生にまで影響を及ぼした全ての原因である「標本事件」ーーその連続殺人事件の最重要容疑者だ。
「藤間幸三郎にはドミネーターが反応しなかった。我々はこうしたレアケースを『免罪体質者』と呼んでいる」
「免罪…体質?」
それはサイマティックスキャンの計測値と犯罪心理が一致しない特殊事例。
確率的におよそ200万人に一人の割合で出現しうると予測されている。
「藤間幸三郎はどうなったのです?」
宜野座は微かに震える唇でその疑問を尋ねた。
「行方不明、と公式には発表されているわけだが。私もそれ以外のコメントをここで述べるつもりはない」
「!!」
「…彼はただ、"消えた"のだ」
瞬間的に宜野座の頭に色々な想いが巡った。
ここで生きていく為の言葉はもう、心得ている。
「提出した報告書には不備があったようです」
ただ無表情に応えた。
「よろしい。明朝までに再提出したまえ」
コトリ…と音を立ててルービックキューブが机の上に置かれた。
文字通り公安局の頂上となるその部屋では局長の禾生と宜野座が対面していた。
船原ゆき殺害事件についての報告書の件で呼び出されたのだ。
「報告書は読んだよ」
ルービックキューブを弄りながら、禾生は緊張の面持ちで目の前に立つ宜野座にそう告げた。
犯人は槙島聖護であり、彼を裁く為のドミネーターは正常に作動しなかった――報告書にはそんな文面が並ぶ。
「宜野座君、私は君という男を高く評価している。この安定した繁栄。最大多数の最大幸福が実現された現在の社会を、一体何が支えていると思うかね」
「それは……厚生省のシビュラシステムによるものかと」
宜野座の返答に禾生は満足そうに頷く。
「だからこそ、シビュラは完璧でなければならない」
そこで禾生はデスクのコンソールを操作して、ある機密情報のファイルをホログラフ表示させた。それは とある男の逮捕記録。
「藤間……幸三郎!?」
藤間幸三郎…忘れるはずもない。
佐々山が殉職。狡噛を潜在犯に堕とし、更に幸子の人生にまで影響を及ぼした全ての原因である「標本事件」ーーその連続殺人事件の最重要容疑者だ。
「藤間幸三郎にはドミネーターが反応しなかった。我々はこうしたレアケースを『免罪体質者』と呼んでいる」
「免罪…体質?」
それはサイマティックスキャンの計測値と犯罪心理が一致しない特殊事例。
確率的におよそ200万人に一人の割合で出現しうると予測されている。
「藤間幸三郎はどうなったのです?」
宜野座は微かに震える唇でその疑問を尋ねた。
「行方不明、と公式には発表されているわけだが。私もそれ以外のコメントをここで述べるつもりはない」
「!!」
「…彼はただ、"消えた"のだ」
瞬間的に宜野座の頭に色々な想いが巡った。
ここで生きていく為の言葉はもう、心得ている。
「提出した報告書には不備があったようです」
ただ無表情に応えた。
「よろしい。明朝までに再提出したまえ」
コトリ…と音を立ててルービックキューブが机の上に置かれた。