#19 空色の温もり
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覆面パトカーは潜在犯更正施設へ向け走る。
「新しい執行官候補は女性みたいだね」
助手席に座った幸子が端末情報を確認しながら運転席の宜野座に話しかけた。
「元シビュラ公認の芸術家らしい」
「六合塚弥生さん、か…」
端末に表示された顔写真は更正施設で撮影されたものだろう。その表情は凛々しく…しかしどこか頑なに見えた。
「潜在犯になって半年。施設内では目立った素行の悪さはない」
「…きっと真面目な子なんだろうね」
「本気で社会復帰を目指していると聞いたが」
「そうなんだ…」
だとしたら、これから自分達がしに行く話は 彼女にとっては少々酷かもしれない。
「ねえ、伸元。潜在犯て何で潜在犯なんだろ」
「はあ?」
「少なくとも私には、この子が潜在犯だなんて信じられないんだもん」
宜野座は暫くの間をあけて言った。
「さあな。シビュラがそう判断したんだ。俺達はそれを受け入れるしかない」
宜野座の言葉には何処か悲しそうな響きが混じっていた。潜在犯である父に想いを馳せているのだろうか。
「そっか…。そうだよね」
と、幸子は正面に視線を戻した。
真新しい建物の外観が見えてきた。更正施設はもうすぐそこ。
面会室で対面した六合塚弥生は写真で見るより綺麗な女性だったが、施設暮らしで疲れているのかその表情は暗く、少しやつれて見えた。
「君に執行官の適性があるとシビュラが判断を下した」
潜在犯はそのほとんどが施設で一生を終える。
制限つきの自由と言えども社会復帰できる執行官は、公安局の犬になるというリスクを差し置いても魅力的なはず。
しかしそれを聞いた六合塚はあからさまな嫌悪を示した。
「それはもう…私のサイコパスはおしまいっていうことですか?!」
「……」
バンッと机を叩いた六合塚の指に オレンジ色のマニキュアが綺麗に塗られているのを幸子は見た。
「六合塚さん、そう頑なにならないで」
冷ややかな表情のまま黙り込む宜野座に代わり、今度は幸子が口を開く。
「執行官になったからといってサイコパスが回復しない訳じゃない。あなたにも大切な人達はいるでしょ?」
「……」
暫く幸子に訝しげな視線を送っていた六合塚だったが、やがて縦に頷いた。
「刑事になればあなたの大切な人達を犯罪から守る力を得ることが――」
「そんな力要らないわよ!私に必要なのは音楽なの!そうすれば…!!」
そうすれば、また彼女と一緒に――‥
「六合塚さん?」
「とにかく帰って下さい。私は執行官になんてなりません」
眉を潜め 俯いた六合塚は 己の指先を見つめていた。
「新しい執行官候補は女性みたいだね」
助手席に座った幸子が端末情報を確認しながら運転席の宜野座に話しかけた。
「元シビュラ公認の芸術家らしい」
「六合塚弥生さん、か…」
端末に表示された顔写真は更正施設で撮影されたものだろう。その表情は凛々しく…しかしどこか頑なに見えた。
「潜在犯になって半年。施設内では目立った素行の悪さはない」
「…きっと真面目な子なんだろうね」
「本気で社会復帰を目指していると聞いたが」
「そうなんだ…」
だとしたら、これから自分達がしに行く話は 彼女にとっては少々酷かもしれない。
「ねえ、伸元。潜在犯て何で潜在犯なんだろ」
「はあ?」
「少なくとも私には、この子が潜在犯だなんて信じられないんだもん」
宜野座は暫くの間をあけて言った。
「さあな。シビュラがそう判断したんだ。俺達はそれを受け入れるしかない」
宜野座の言葉には何処か悲しそうな響きが混じっていた。潜在犯である父に想いを馳せているのだろうか。
「そっか…。そうだよね」
と、幸子は正面に視線を戻した。
真新しい建物の外観が見えてきた。更正施設はもうすぐそこ。
面会室で対面した六合塚弥生は写真で見るより綺麗な女性だったが、施設暮らしで疲れているのかその表情は暗く、少しやつれて見えた。
「君に執行官の適性があるとシビュラが判断を下した」
潜在犯はそのほとんどが施設で一生を終える。
制限つきの自由と言えども社会復帰できる執行官は、公安局の犬になるというリスクを差し置いても魅力的なはず。
しかしそれを聞いた六合塚はあからさまな嫌悪を示した。
「それはもう…私のサイコパスはおしまいっていうことですか?!」
「……」
バンッと机を叩いた六合塚の指に オレンジ色のマニキュアが綺麗に塗られているのを幸子は見た。
「六合塚さん、そう頑なにならないで」
冷ややかな表情のまま黙り込む宜野座に代わり、今度は幸子が口を開く。
「執行官になったからといってサイコパスが回復しない訳じゃない。あなたにも大切な人達はいるでしょ?」
「……」
暫く幸子に訝しげな視線を送っていた六合塚だったが、やがて縦に頷いた。
「刑事になればあなたの大切な人達を犯罪から守る力を得ることが――」
「そんな力要らないわよ!私に必要なのは音楽なの!そうすれば…!!」
そうすれば、また彼女と一緒に――‥
「六合塚さん?」
「とにかく帰って下さい。私は執行官になんてなりません」
眉を潜め 俯いた六合塚は 己の指先を見つめていた。