#15 監視官と執行官の狭間
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覆面パトカーは高速道路を快適に走る。
車内はしんと静まり、BGM替わりのニュース番組だけがうるさく流れていた。
『私は100歳を超えています。しかし人生は益々楽しみを増している』
全身サイボーグである帝都ネットワーク建設会長 泉宮寺へのインタビューだ。
助手席の狡噛は 窓枠に肩肘をつき、さっきからずっと窓の外を眺めていた。ニュースを消す必要はないとの事だったので、もしかしたらインタビューの内容は聞いているのかもしれない。
――もしくは幸子を想っているのか…。
そしてまた 運転席の常守も、自動運転に切り替え頭では別の事を考えていた。
2日前の宜野座とのやりとりを。
「……木梨は潜在犯じゃない」
そう言った宜野座はぽつりぽつりと語り始めた。幸子が執行官となった経緯を。
(幸子さんは自ら執行官になる道を選んだ…)
分からないのはそこだ。
なぜ監視官のままではいけなかったのだろう。
自分を犠牲にしてまで危険な執行官であり続ける幸子の考えが常守には理解できなかった。
覆面パトカーは高速道路を抜け埼玉県秩父市に入っていった。
『私有地』と書かれた看板がかかった森の奥深く…そこに雑賀譲二の住まいはあった。
狡噛がインターホンを押すと、ドアが開き無精髭を生やした中年男が現れた。
「お久しぶりです。雑賀教授」
「教授はやめてくれよ。大学制度がなくなって何年経つと思ってるんだ」
狡噛が挨拶を述べると雑賀は顔をしかめ、それから視線を常守に移した。
「そっちのお嬢さんが…」
「初めまして。公安局の監視官 常守朱です。今日はよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、雑賀は二度程眼鏡をガチャガチャとあげるような仕種をして それからニヤリと笑った。
「狡噛が木梨以外の女性を連れて来るなんて珍しいな」
「幸子は勤務なんです。先生にお会いしたがってましたよ」
「それは残念だ。狡噛、まさかわざと木梨が勤務の日を選んだんじゃないだろうな?」
「そ、そんな幸子さんを欺くような真似しません…!!」
雑賀の切り返しに、思わず常守が言い返してしまう。幸子が傷つく姿を見るなんて絶対嫌だ。
ムキになる常守が想定内だったらしい雑賀はニヤリと笑みを浮かべた。
その様子にプロファイリングは既に行われていると知り、狡噛は苦笑した。
「先生、余りからかわないでやって下さい。彼女が夢中なのは俺ではなく幸子なんですから」
「ハハハ…そうか。狡噛、お前もうかうかしてられないな」
愉快そうに笑い、常守を振り返った。
「いや、不躾に悪かった。とにかく入りたまえ。歓迎するよ」
車内はしんと静まり、BGM替わりのニュース番組だけがうるさく流れていた。
『私は100歳を超えています。しかし人生は益々楽しみを増している』
全身サイボーグである帝都ネットワーク建設会長 泉宮寺へのインタビューだ。
助手席の狡噛は 窓枠に肩肘をつき、さっきからずっと窓の外を眺めていた。ニュースを消す必要はないとの事だったので、もしかしたらインタビューの内容は聞いているのかもしれない。
――もしくは幸子を想っているのか…。
そしてまた 運転席の常守も、自動運転に切り替え頭では別の事を考えていた。
2日前の宜野座とのやりとりを。
「……木梨は潜在犯じゃない」
そう言った宜野座はぽつりぽつりと語り始めた。幸子が執行官となった経緯を。
(幸子さんは自ら執行官になる道を選んだ…)
分からないのはそこだ。
なぜ監視官のままではいけなかったのだろう。
自分を犠牲にしてまで危険な執行官であり続ける幸子の考えが常守には理解できなかった。
覆面パトカーは高速道路を抜け埼玉県秩父市に入っていった。
『私有地』と書かれた看板がかかった森の奥深く…そこに雑賀譲二の住まいはあった。
狡噛がインターホンを押すと、ドアが開き無精髭を生やした中年男が現れた。
「お久しぶりです。雑賀教授」
「教授はやめてくれよ。大学制度がなくなって何年経つと思ってるんだ」
狡噛が挨拶を述べると雑賀は顔をしかめ、それから視線を常守に移した。
「そっちのお嬢さんが…」
「初めまして。公安局の監視官 常守朱です。今日はよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、雑賀は二度程眼鏡をガチャガチャとあげるような仕種をして それからニヤリと笑った。
「狡噛が木梨以外の女性を連れて来るなんて珍しいな」
「幸子は勤務なんです。先生にお会いしたがってましたよ」
「それは残念だ。狡噛、まさかわざと木梨が勤務の日を選んだんじゃないだろうな?」
「そ、そんな幸子さんを欺くような真似しません…!!」
雑賀の切り返しに、思わず常守が言い返してしまう。幸子が傷つく姿を見るなんて絶対嫌だ。
ムキになる常守が想定内だったらしい雑賀はニヤリと笑みを浮かべた。
その様子にプロファイリングは既に行われていると知り、狡噛は苦笑した。
「先生、余りからかわないでやって下さい。彼女が夢中なのは俺ではなく幸子なんですから」
「ハハハ…そうか。狡噛、お前もうかうかしてられないな」
愉快そうに笑い、常守を振り返った。
「いや、不躾に悪かった。とにかく入りたまえ。歓迎するよ」