福岡では予算の都合で看板のみの博多どんたくを見学し、一行は今日の宿である盆碁霊温泉旅館へと向かった。
「ヒバリ ヒバリ」
雲雀の肩に停まったヒバードが、トランクから下ろした幸子の鞄にパタパタと移動した。
「ユキコ ユキコ」
博多どんたくから宿への移動の際、幸子たち女子はビアンキに呼ばれて別行動を取っていた(止めようとしたのだが、リボーンにうまく邪魔されてしまった)。
幸子のいない修学旅行など雲雀にとっては何の意味もなく、単に群れるだけの集団としての認識が、雲雀をイライラさせた。
立派な門を潜り扉を開けて玄関に入ると、外観と同じ純和風の造りが広がっており、ピンクの着物を着た５人の仲居が一行を出迎えてくれた。
「ようこそおいで下さいました。当館の女将 ビアンキでございます」
「あ、アネキーーっ!!」
どたーんっ
ビアンキを見た獄寺が手足をひくつかせながら派手に倒れた。それを合図にしたかのように顔を上げた４人の仲居は京子、ハル、イーピン、それに幸子であった。
「！」
「恭弥、似合うかな？」
幸子が少し恥ずかしそうな笑顔で雲雀に尋ねるが、雲雀は何も言わずに目を丸くしている。
「恭弥？」
「なにやってんの？」
「へっ…？」
「行くよ」
雲雀は宿に上がり込むと、幸子の手を掴んだ。
「ちょ…っ、恭弥っ!?」
「ヒバリ、オメーらの部屋の鍵だ」
リボーンの投げた鍵を無言で受けとると、ヒバリはちらりと部屋番号を確認し、幸子の手を引いたまま足早に廊下を歩き出した。
当たり前のように雲雀と同じ部屋なのが、嬉しい反面気恥ずかしい。
「みなさんお疲れでしょ？お先に露天風呂をどうぞ」
ビアンキの声が、まるで追いかけてくるように背中腰に届いた。