真っ赤な嘘
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数日後。朝から天気は荒れていた。
「幸子、出かけて来ます」
「えっ、こんな天気の日に!?」
幸子は驚き声を上げた。
「他の日に延期したら?」
「そういう訳にもいかないのです。クライアントの都合ですから」
「でも……」
いつもは笑顔で送り出してくれる幸子が、今日はやけに渋る。
風は困ったような笑みを浮かべると、幸子の腰を抱き寄せ、その頬にキスをした。
「心配入りません。直ぐに戻りますよ」
「やっ…」
「幸子?」
「行かないで!」
「!」
幸子は泣いていた。
理由を尋ねても、すがりつきながら泣きじゃくるだけで何も語らない。
武闘家らしく、いつも強気で泣き言を言わない幸子。こんな彼女は珍しい。
暫くの間、風は何も言わずにただ彼女の背中をあやすように撫でていた。
「ごめんね、もう大丈夫」
ようやく落ち着いた幸子が、風の胸板から顔を上げながら言った。
風は心配そうに覗き込み、前髪をそっと分けてやった。
「いってらっしゃい」
「幸子…」
口を開きかけた風は、一度口をつぐみ、笑みを浮かべて唇を寄せた。
「愛してます」
理由を尋ねる代わりに熱い想いを耳許に囁く。
なぜ急に泣き出したのか、幸子自身にもよく理由が分からなかった。
なぜかは分からない。
ただ――なぜだかすごく嫌な予感がしたのだ。
(風…早く帰って来て)
しかしその願いは届かず…
その日、風が戻る事はなかった。
「幸子、出かけて来ます」
「えっ、こんな天気の日に!?」
幸子は驚き声を上げた。
「他の日に延期したら?」
「そういう訳にもいかないのです。クライアントの都合ですから」
「でも……」
いつもは笑顔で送り出してくれる幸子が、今日はやけに渋る。
風は困ったような笑みを浮かべると、幸子の腰を抱き寄せ、その頬にキスをした。
「心配入りません。直ぐに戻りますよ」
「やっ…」
「幸子?」
「行かないで!」
「!」
幸子は泣いていた。
理由を尋ねても、すがりつきながら泣きじゃくるだけで何も語らない。
武闘家らしく、いつも強気で泣き言を言わない幸子。こんな彼女は珍しい。
暫くの間、風は何も言わずにただ彼女の背中をあやすように撫でていた。
「ごめんね、もう大丈夫」
ようやく落ち着いた幸子が、風の胸板から顔を上げながら言った。
風は心配そうに覗き込み、前髪をそっと分けてやった。
「いってらっしゃい」
「幸子…」
口を開きかけた風は、一度口をつぐみ、笑みを浮かべて唇を寄せた。
「愛してます」
理由を尋ねる代わりに熱い想いを耳許に囁く。
なぜ急に泣き出したのか、幸子自身にもよく理由が分からなかった。
なぜかは分からない。
ただ――なぜだかすごく嫌な予感がしたのだ。
(風…早く帰って来て)
しかしその願いは届かず…
その日、風が戻る事はなかった。