真っ赤な嘘
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風の宣言通り、鍛練を重ねた幸子は確実に力をつけていった。同時に風もどんどん強くなっていき、とうとう無敵の武闘家と謳われるまでになっていた。
結局彼との実力差が埋まる事はなかったが、それでもいいと思い始めていた。
愛し、愛される。
ライバルである前に恋人。
いつしか風が望んだその関係こそが、幸子に何ものにも変えがたい至福を与えていたからだ。
「幸子、出かけて来ます」
突然 風に声をかけられ、幸子は読んでいた本から顔を上げた。
「あ、うん。ご飯は?」
「頂きますよ。そんなに遅くはならないと思います」
「分かった。用意しておくね。いってらっしゃい」
幸子が小さく手を振れば、風は優しい笑顔を残して出かけていった。
その笑顔を見送った後、小さく息を吐いた。
穏やかに時は流れ、このまま一緒に年を重ねていくんだとずっと思っていた。なのに、幸子の心は靄(もや)がかかったように晴れなくて。
最近、風は頻繁に家を空ける。
以前は行く先をきちんと伝えて出かけていたのだが、それがなくなった。
そうなったのは、風が"無敵の武闘家"として名声高くなってからな気がする。
なにか大変な事に巻き込まれていないだろうか…。
「考えすぎだよね」
幸子は頭を振ってモヤモヤを追い出すと、夕食の支度をすべく本を置いて立ち上がった。
「ただいま、幸子」
「おかえりなさい!」
約束通り早くに帰宅した風を出迎えた幸子は、思わずぎゅっと抱きついた。
「どうしたんです、幸子」
「会いたかった。会いたかったの…!」
「…寂しくさせてしまったようですね。なら――」
「きゃっ!」
ヒョイと横抱きにされ、幸子は慌てて風を見た。いつも穏やかに澄んでいる風の瞳の奥に、激しい熱を持つ赤い光が宿っていた。
嵐の前の静けさとはこの事か。幸子はゴクリと唾を飲んだ。
「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。可愛がってあげますから」
背筋が期待にゾクリとした。
結局彼との実力差が埋まる事はなかったが、それでもいいと思い始めていた。
愛し、愛される。
ライバルである前に恋人。
いつしか風が望んだその関係こそが、幸子に何ものにも変えがたい至福を与えていたからだ。
「幸子、出かけて来ます」
突然 風に声をかけられ、幸子は読んでいた本から顔を上げた。
「あ、うん。ご飯は?」
「頂きますよ。そんなに遅くはならないと思います」
「分かった。用意しておくね。いってらっしゃい」
幸子が小さく手を振れば、風は優しい笑顔を残して出かけていった。
その笑顔を見送った後、小さく息を吐いた。
穏やかに時は流れ、このまま一緒に年を重ねていくんだとずっと思っていた。なのに、幸子の心は靄(もや)がかかったように晴れなくて。
最近、風は頻繁に家を空ける。
以前は行く先をきちんと伝えて出かけていたのだが、それがなくなった。
そうなったのは、風が"無敵の武闘家"として名声高くなってからな気がする。
なにか大変な事に巻き込まれていないだろうか…。
「考えすぎだよね」
幸子は頭を振ってモヤモヤを追い出すと、夕食の支度をすべく本を置いて立ち上がった。
「ただいま、幸子」
「おかえりなさい!」
約束通り早くに帰宅した風を出迎えた幸子は、思わずぎゅっと抱きついた。
「どうしたんです、幸子」
「会いたかった。会いたかったの…!」
「…寂しくさせてしまったようですね。なら――」
「きゃっ!」
ヒョイと横抱きにされ、幸子は慌てて風を見た。いつも穏やかに澄んでいる風の瞳の奥に、激しい熱を持つ赤い光が宿っていた。
嵐の前の静けさとはこの事か。幸子はゴクリと唾を飲んだ。
「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。可愛がってあげますから」
背筋が期待にゾクリとした。