雲鳥の統べる空
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図書委員長にああ言ったものの、実際応接室の前に立つと激しい緊張と不安が幸子を襲った。
風紀委員はリーゼントで屈強そうな男子生徒ばかりのイメージがある。
雲雀もそのような感じなのだろうか。人を外見で判断する気はないが、不良の頂点に立っていると思うとやはり怖くて足がすくむ。
(どうしよう。ちょっと怖くなってきちゃったよ…)
しかしここで後込みしていても仕方ない。とにかく前進あるのみだ。腹を括ると幸子は応接室のドアをノックした。
「失礼します」
ガチャッとドアを開ける。緊張の一瞬――‥
「全委員会名簿を届けに来ました」
初めて足を踏み入れた応接室。
豪華な皮ばりのソファーの背もたれ部分に腰かけた男が、幸子に気づいて視線を向けた。
「君、誰?」
ストレートの黒髪に鋭い切れ長の瞳は青灰色だ。
半袖シャツの左腕には『風紀』の腕章をつけている。幸子がイメージしていた風紀委員とは全く違うが、彼が委員長の『ヒバリ』だろうか。
「図書委員の木梨幸子です。名簿を届けに来ました」
「おかしいな。僕の記憶では図書委員長は男子生徒だったはずだけど」
風紀腕章をつけた男――雲雀がゆっくりと立ち上がり、幸子の許へ歩いてきた。
「委員長の代理で来ました」
「ふうん。僕は代理を立てていいなんて言った覚えはないんだけど」
雲雀の眉がぴくりと動く。どうやら図書委員長が来なかった事がお気に召さなかったらしい。
もしかして雲雀は図書委員長と話をしたかったのに、自分がそれを邪魔してしまったのだろうか。
「ご、ごめんなさい。私が委員長に無理に頼んで変わってもらったんです」
「ん、なぜだい?」
雲雀は思わず聞き返した。
「えっ?逢ってみたかったから…かな」
「!」
風紀委員とかかわりたくない。或いは委員長である己に逢いたくないという生徒ならたくさんいるだろう。しかし自ら率先して逢いに来た生徒など初めてみた。
雲雀が何か考えるように黙り込んだので、今度は幸子が質問した。
「あなたが雲雀くん…?」
雲雀は一瞬目を丸くした。
並中生徒に君付けで呼ばれたなど初めてだ。しかしすぐに意地悪な笑みを浮かべて幸子に告げた。
「さあね。自分で考えれば」
「さ、さあねって……」
「ねぇ、それ渡してくれる?」
「あっ、そうだ!」
名簿を渡しに来た事を忘れていた。
慌てて名簿を手渡すと、雲雀はそれを特別見るでもなく応接机の上にバサリと置いた。
「これで君の用件は済んだ訳だ」
「う、うん…」
結局質問ははぐらかされたが、名簿を受け取ったと言う事は、彼が『ヒバリ』で間違いないのだろう。…なにか未消化な気もするが。
「なに変な顔してるの?」
「へ、変て……生まれつきですっ!」
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな」
思いきりからかわれているらしい。
「君、面白いね」
「なっ…」
「それに…誰かと群れずに一人でここに来た度胸も認めてあげる」
「あっ!!」
そうか。不安なら誰かを誘って一緒に来てもらえば良かったのだ。
「そんな事思い付きもしなかったって顔してるね」
「………う、うん」
図星を言い当てられ頬を真っ赤に染める幸子。
コロコロと変わるその表情が面白い。
なにより己を前にして物怖じしない生徒は初めて出逢う。
「それじゃ、私はこれで」
「またね」
幸子が退室すると、雲雀は先程無造作に机に置いた名簿を取り図書委員会の頁に目を通す。
「木梨幸子か」
覚えるように呟いた。
風紀委員はリーゼントで屈強そうな男子生徒ばかりのイメージがある。
雲雀もそのような感じなのだろうか。人を外見で判断する気はないが、不良の頂点に立っていると思うとやはり怖くて足がすくむ。
(どうしよう。ちょっと怖くなってきちゃったよ…)
しかしここで後込みしていても仕方ない。とにかく前進あるのみだ。腹を括ると幸子は応接室のドアをノックした。
「失礼します」
ガチャッとドアを開ける。緊張の一瞬――‥
「全委員会名簿を届けに来ました」
初めて足を踏み入れた応接室。
豪華な皮ばりのソファーの背もたれ部分に腰かけた男が、幸子に気づいて視線を向けた。
「君、誰?」
ストレートの黒髪に鋭い切れ長の瞳は青灰色だ。
半袖シャツの左腕には『風紀』の腕章をつけている。幸子がイメージしていた風紀委員とは全く違うが、彼が委員長の『ヒバリ』だろうか。
「図書委員の木梨幸子です。名簿を届けに来ました」
「おかしいな。僕の記憶では図書委員長は男子生徒だったはずだけど」
風紀腕章をつけた男――雲雀がゆっくりと立ち上がり、幸子の許へ歩いてきた。
「委員長の代理で来ました」
「ふうん。僕は代理を立てていいなんて言った覚えはないんだけど」
雲雀の眉がぴくりと動く。どうやら図書委員長が来なかった事がお気に召さなかったらしい。
もしかして雲雀は図書委員長と話をしたかったのに、自分がそれを邪魔してしまったのだろうか。
「ご、ごめんなさい。私が委員長に無理に頼んで変わってもらったんです」
「ん、なぜだい?」
雲雀は思わず聞き返した。
「えっ?逢ってみたかったから…かな」
「!」
風紀委員とかかわりたくない。或いは委員長である己に逢いたくないという生徒ならたくさんいるだろう。しかし自ら率先して逢いに来た生徒など初めてみた。
雲雀が何か考えるように黙り込んだので、今度は幸子が質問した。
「あなたが雲雀くん…?」
雲雀は一瞬目を丸くした。
並中生徒に君付けで呼ばれたなど初めてだ。しかしすぐに意地悪な笑みを浮かべて幸子に告げた。
「さあね。自分で考えれば」
「さ、さあねって……」
「ねぇ、それ渡してくれる?」
「あっ、そうだ!」
名簿を渡しに来た事を忘れていた。
慌てて名簿を手渡すと、雲雀はそれを特別見るでもなく応接机の上にバサリと置いた。
「これで君の用件は済んだ訳だ」
「う、うん…」
結局質問ははぐらかされたが、名簿を受け取ったと言う事は、彼が『ヒバリ』で間違いないのだろう。…なにか未消化な気もするが。
「なに変な顔してるの?」
「へ、変て……生まれつきですっ!」
「そういう意味で言ったんじゃないんだけどな」
思いきりからかわれているらしい。
「君、面白いね」
「なっ…」
「それに…誰かと群れずに一人でここに来た度胸も認めてあげる」
「あっ!!」
そうか。不安なら誰かを誘って一緒に来てもらえば良かったのだ。
「そんな事思い付きもしなかったって顔してるね」
「………う、うん」
図星を言い当てられ頬を真っ赤に染める幸子。
コロコロと変わるその表情が面白い。
なにより己を前にして物怖じしない生徒は初めて出逢う。
「それじゃ、私はこれで」
「またね」
幸子が退室すると、雲雀は先程無造作に机に置いた名簿を取り図書委員会の頁に目を通す。
「木梨幸子か」
覚えるように呟いた。