千紫万恋
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幸子は薄暗い部屋で目を覚ました。
「ここは…!?」
上体を起こしてみると、自分が埃っぽい床の上に寝かされているのが分かった。
辺りを見渡してみる。壊れた家具や調度品があちこちに散らばっている荒れた部屋だ。元は談話室だったのだろう。
幸子の他に人の気配はない。
(確かデイモンさんと別れてカフェを出た所で…)
見知らぬ男達に囲まれ、布に含まれた…恐らくは即効性の睡眠剤を嗅がされ、それきり意識を失ったのだ。
「アラウディ…心配してるよね」
口では厳しい事を言いつつも なんだかんだで優しいアラウディは、きっと自分を探してるはずだ。
いつの間にかフロランタンの入った紙袋もなくなっていた。…さらわれた際に落としたのだろう。
「アラウディ…」
幸子は突然心細くなった。
自分が捕まったせいでアラウディに危険が及んだらどうしよう…。そんなの嫌だ!!
「ここから逃げ出さなくちゃ…」
零れそうになった涙を拭うと、幸子は立ち上がり スカートについた埃を払った。
その時、部屋の外でガタガタという音が聞こえ 幸子はびくりと肩を震わせた。誰かが扉を開けようとしている。
幸子はきょろきょろと室内を見渡し、壊れた椅子の脚を手に取った。
何もないよりはマシだ。身を守らなくては。
ギィィ…
軋んだ音がして扉が開く。
緊張の一瞬。
そこにいたのは――‥
「君 なにしてるの?」
「ア、アラウディ!?」
椅子の脚を持った幸子を、アラウディが驚いたような表情で見つめている。
途端にはしたない自分が恥ずかしくなり、幸子は慌てて椅子の脚を投げ捨てた。
「こ、これは…身を守らなくちゃと思って…その……武器を…っ」
あたふたと言い訳する幸子を余所に、アラウディはツカツカと彼女に近づき抱きしめた。
「っ、アラウディ…?」
「君が思ったより元気そうで安心した」
フ…と鼻に抜けたような笑みを溢し、彼女を強くその腕に抱く。その匂いと温もりに包まれると、幸子の緊張が一気に氷解した。
「っ、アラウディ…」
ポロポロと零れる涙が止まらない。アラウディは幸子の背中を優しく撫でて濡れた頬にキスを落とした。
「ごめんなさい…」
「ん?」
「あなたを危険に曝してしまって…」
「いいよ。もう片付いたから」
こんな時にまでアラウディを一番に考えている幸子が堪らなく愛しかった。
「幸子、君が武器を手にする必要はないよ」
「えっ…?」
「幸子は僕が守る。どんな時でもね。だから君は――」
安心して僕の隣で笑っていればいい。
「うん…っ」
重なり合う唇は、互いの愛を確かめあうように長く…優しかった。
あなたで良かったと、真に想う。
「ここは…!?」
上体を起こしてみると、自分が埃っぽい床の上に寝かされているのが分かった。
辺りを見渡してみる。壊れた家具や調度品があちこちに散らばっている荒れた部屋だ。元は談話室だったのだろう。
幸子の他に人の気配はない。
(確かデイモンさんと別れてカフェを出た所で…)
見知らぬ男達に囲まれ、布に含まれた…恐らくは即効性の睡眠剤を嗅がされ、それきり意識を失ったのだ。
「アラウディ…心配してるよね」
口では厳しい事を言いつつも なんだかんだで優しいアラウディは、きっと自分を探してるはずだ。
いつの間にかフロランタンの入った紙袋もなくなっていた。…さらわれた際に落としたのだろう。
「アラウディ…」
幸子は突然心細くなった。
自分が捕まったせいでアラウディに危険が及んだらどうしよう…。そんなの嫌だ!!
「ここから逃げ出さなくちゃ…」
零れそうになった涙を拭うと、幸子は立ち上がり スカートについた埃を払った。
その時、部屋の外でガタガタという音が聞こえ 幸子はびくりと肩を震わせた。誰かが扉を開けようとしている。
幸子はきょろきょろと室内を見渡し、壊れた椅子の脚を手に取った。
何もないよりはマシだ。身を守らなくては。
ギィィ…
軋んだ音がして扉が開く。
緊張の一瞬。
そこにいたのは――‥
「君 なにしてるの?」
「ア、アラウディ!?」
椅子の脚を持った幸子を、アラウディが驚いたような表情で見つめている。
途端にはしたない自分が恥ずかしくなり、幸子は慌てて椅子の脚を投げ捨てた。
「こ、これは…身を守らなくちゃと思って…その……武器を…っ」
あたふたと言い訳する幸子を余所に、アラウディはツカツカと彼女に近づき抱きしめた。
「っ、アラウディ…?」
「君が思ったより元気そうで安心した」
フ…と鼻に抜けたような笑みを溢し、彼女を強くその腕に抱く。その匂いと温もりに包まれると、幸子の緊張が一気に氷解した。
「っ、アラウディ…」
ポロポロと零れる涙が止まらない。アラウディは幸子の背中を優しく撫でて濡れた頬にキスを落とした。
「ごめんなさい…」
「ん?」
「あなたを危険に曝してしまって…」
「いいよ。もう片付いたから」
こんな時にまでアラウディを一番に考えている幸子が堪らなく愛しかった。
「幸子、君が武器を手にする必要はないよ」
「えっ…?」
「幸子は僕が守る。どんな時でもね。だから君は――」
安心して僕の隣で笑っていればいい。
「うん…っ」
重なり合う唇は、互いの愛を確かめあうように長く…優しかった。
あなたで良かったと、真に想う。